超短編|嘘
「何やってるの?」
浴室に行ったはずの夫の声に、心臓が飛び跳ねた
それ、俺が貰ってきたクッキーだよね?
今まさにゴミ箱に捨てようとしたそれを睨み、夫は言う
咄嗟に言葉が出た
「髪の毛。髪の毛が、入ってたの」
「えっ? そうなの? なら、しょうがないか」
気づかなかったー、と夫は新しい石鹸を持って浴室に戻る
ふっと肩の力が抜けた私は最初から食べる気もない
よく知らない誰かが作ったクッキーをゴミ箱に沈めた。
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こちらも併せてどうぞ
こちらにゆるっと参加しています
ありがとうございます!
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以前、ある作家さんが「人の作ったおにぎりが食べれない」と
自分の家族や近い友人、もしくはプロ(料理人)のものは食べれる
でも、どこかのおばさんの作ったおにぎり、とかは無理、という
話をされていて
後日、その作家さんが対談をされた際、その相手の方も
友達のお母さんの作ったご飯が食べれない、
衛生的なことでなく、愛が重くて食べれないというような
話をされて
そんな話たちに触れて、最初は
「人が作ったもの食べれないって潔癖すぎでは?」
と短絡的に考えていたんですけど
ちょっとこう、なるほど感がありました
そういう感じ方もあるんだなと
手作りの、圧、みたいな
『透明な袋には』のお話は
妻の冷酷さが目につくと思うのですが
私的には、無邪気に手作りクッキーを配る
パートさんもちょっと怖いかも…と思いつつ書きました
そして、よくよく読むと、これまだ捨ててないんです
自分で読み返してみて
「捨てようとしてるとこ、見られたら怖いなー」
と思いついてしまい、こちらの『嘘』に至りました
どこに反応するかは、読み手さん次第かと思うのですが
物語は、書くとその後に私の手を離れて
読み手さんのものになるのが、いいですよねぇ
渡鳥さんの企画から
たくさんのインスピレーションをいただき
楽しませてもらっています
10行で書く、シリーズになったら面白そう
ここまでおつき合いいただき、ありがとうございます
