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ジムとランチ

 ジムとはレッスンの前に買い物に付き合ったり、付き合ってもらったり、ついでに一緒にランチしたり、雇い主と従業員というより友達付き合いのような関係だった。
 子供たちのクラスでは一緒に教えていたし、大人のコースのテキスト作りも私がアイデアを出して会話にしてもらったり、息の合う仕事仲間でもあった。

 ジムがスクールで教えるようになった2年目、連休に入る前に、お昼に恵比寿でジムと待ち合わせ、Good Day Booksへ行った。
 ここは洋書専門の古本屋で、前年に私の日本語クラスの生徒から教えられて以来のお付き合いだった。
 2度ばかり日本語クラスの案内のチラシを置いてもらったりした。
 大井町線の緑ガ丘にあったのが、その春、恵比寿に引っ越して、駅の近くのきれいなビルの3階に入り、前の店よりぐーんと広くなっていた。

 新しい本も扱っていて、取り寄せもしてくれるが、私は古本が目当てで、ミステリーの棚で、マーサ・グライムズやリリアン・J・ブラウンのココ・シリーズをたくさんみつけた。
 グライムズの日本では未訳の ”The Dirty Duck” と、シャーロット・マクラウドの ”An Owl Too Many”(フクロウが多すぎる)を買った。
 それから子供の本の棚で、これもペーパーバックのアーサー・ランサムを4冊も発見した。
 感激して4冊とも買ってしまったが、ペーパーバックは字が細かいから読むのが大変で、今も本箱に並べている。
 歳と共に目が悪くなって、細かい字のものを読みたくないので、文字の細かい洋書は積読になってしまう。

 その日は渋谷でお昼を食べようということになっていたので、ジムがみつけたレストランへ連れて行ってもらった。
 1,000円でランチにお代わり自由のサラダバー、コーヒーが付き、店の雰囲気もいいし、すいているというのだった。
 たしかにすいていたが、いつも朝が遅いから昼食は生徒が来る前の午後3時前後にとっていたので、1時半ではまだおなかがすかない。
 肉が苦手なので、ハンバーグとエビフライのランチが私向きなのだが、それではチト重すぎる。
 ジムに「タマネギが多いけど、本当に大丈夫?」と何度も念を押されて、ビーフと野菜の炒め焼きランチにした。
 これが一番軽そうだったから。
 ところが、出てきた皿の、半分以上がタマネギ(!)の炒めものを見たとたん、「あ、こりゃダメだ」と思った。

 結局、メインディッシュはジムにあげてしまい、サラダをお代わりして、ジムのクリームコロッケ(付け合わせ?)をもらって、おしまい。
 今度はもっとお腹のすいているときに来て、ハンバーグとエビフライのランチを食べようと思った。

 なんとなく欲求不満気味の昼食を終えて、ダンキンドーナッツの前を通りかかると、「10個で700円おトク!」キャンペーンを実施中だった。
 でも、1人で10個は多過ぎる。
 夕食にドーナッツを食べようとジムに持ちかけ、半分ずつにしたらどうかと思って言ってみた。
「夕食にドーナッツなんて聞いたことない」「5個もいらない」と抵抗するのを説き伏せて、「6個でも390円おトク!」の6個パックを買うことに成功。
 その日の夕食はドーナッツ3個とコーヒーになった。

 ドーナッツの入っていた箱はMatano Atsukoさんの渋い色合いのイラストで、とても捨ててしまえないので丁寧に中を拭き、手とフタの部分を内側に折って両面テープで貼り、ピクチャーカードを入れるカードケースとして使うことにした。
 このケースは今も郵便物を入れるのに使っている。
 これも去年、「きれいな箱」に載せた。

 ジムとは授業の始まる前に、2度ばかり二子玉川の東急ハンズに行ったこともあるし、つばめグリルでランチしたこともある。
 つばめグリルは玉川高島屋に隣接していたので、叔父のお寺に行くときは脇の通路を通って行ったものだ。
 通るたびに中に入って食事したいと思っていたので、ジムを誘って行った。
 そのときに食べたものは覚えていないが、ここのハンバーグとトマトサラダが好きで、いつもこれを注文するので、ジムにも同じものを勧めたのだろうと思う。

 去年、「銀座でデート」にも書いたが、つばめグリルは私の好きなレストランで、銀座のつばめグリルには何度も行った。

 猛暑が訪れる前、夕方のクラスがキャンセルになった日に、ジムを誘って世田谷公園まで散歩に行った。
 世田谷公園の林の中で、鳥が集まるか鳴らしてみようと思い、多摩川高島屋ショッピングセンターの「ザ・ネイチャー・カンパニー」で見つけたバードコールを持っていった。
 林といっても背の高い木がひと塊り生えているだけだが、木の上の方で鳥が鳴いているのが聞こえた。
 私のバードコールは色も形もナツメのようで、ひねるとキュッキュッと鳥の鳴き声に似た音が出た。
 早速鳴らしてみたが、鳥が集まって来たようには思えなかった。

 公園の真ん中には噴水があり、ベンチに座っている高齢者やベビーカーに子供を乗せた母親がいた。
 鳩がたくさんいて、ベンチに座ると集まってきた。
 何もエサを持ってきていなかったので、公園をぐるっと一周してスクールに戻った。
 次に行ったときは食パンの耳を持っていって、千切ってまいてやった。

 もう1つ覚えていることがある。
 ジムはバスケットボールが得意で、日本に来てもバスケットをするところがないかと探していたが、地域のバスケットボール愛好会のようなものを見つけて入会したいと言った。
 スクールが休みの日に、入会の手続きに私が付き添って行った。
 ジムは横浜線のどこかの駅のそばにマンションを借りていて、駅で待ち合わせ、手続きの前に私を自分の部屋に連れていった。
 何か忘れ物をしたのを取りに行ったのだったか、それとも私が心配しないように、どんなところに住んでいるか見せるためだったのかもしれない。

 部屋は1階で玄関を入ると右側に寝室があり、左には洗面所とバス・トイレがあったようだが、そちら側は見なかった。
 寝室には庭に面してガラス戸があり、そこから外に出られるようになっていた。
 窓にカーテンが掛かっていないので、外から丸見えで落ち着かない。
 カーテンを付ければいいのにと言えば良かったのだが、つい言いそびれてしまった。




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