生成AIはどうやって言葉を紡ぐの?
「生成AIを使って書いた小説」と話題になったのが、第170回芥川賞を受賞した『東京都同情塔』(九段理江著)です。この小説の中で、生成AIの言葉はこう表現されています。
『他人の言葉を継ぎ接ぎしてつくる文章』
この一文、実は生成AIの仕組みを的確に表しているんです。でも「継ぎ接ぎ」という言葉はちょっとネガティブに聞こえるので、ここではこう表現します。
人間の言葉をつなぎ合わせて紡ぐ文章
では、いったいどうやってAIは言葉を“つなぎ合わせ”ながら、自然な文章を作るのでしょうか?生成AIが文章を作る仕組みを、できるだけ分かりやすくお伝えします。
AIの頭の中は「言葉の図書館」
生成AIをイメージするなら、巨大な図書館を思い浮かべてみてください。この図書館に、小説や論文、ニュース記事やSNSのつぶやき、日常会話など、人間が書いたありとあらゆる文章が本として並んでいるとします。AIは生まれたとき、これらの本を片っ端から読んで学習します。例えば、「おはよう」「昨日は楽しかったね」「お腹すいた」みたいな言葉を何度も見て、「こういう言葉はこういう場面で使われるんだな」と覚えていくんです。
ただし、AIは丸暗記しているだけではありません。単語や文が「どんな順番でつながるか」を覚えるのが得意。例えば、「お腹がすいた」の次に「何か食べよう」がよく出てくると、「この二つはセットで使われやすい」と頭に刻みます。これが、言葉を“つなぎ合わせる”土台になるんです。
パズルのピースを組み合わせるような言葉作り
では、AIが文章を作るときの具体的なプロセスをイメージしてみましょう。たとえば、人がAIに「今日の天気を教えて」と聞いたとします。
AIはこう考えます。
・「今日」は文の最初に使われやすい。
・「天気」には「晴れ」「雨」「曇り」みたいな言葉が続きやすい。
・「教えて」は質問だから、「だよ」「です」みたいな答えで締めるのが自然。
過去の文章データから「今日は晴れだよ」「今日の天気は雨です」みたいなパターンをたくさん見てきたAIは、これらのピースをパズルのようにつなぎ合わせて、「今日は晴れだよ」と答えるんです。もし「もっと詳しく」と聞かれたら、「今日は晴れだよ、気温は20度くらいかな」と、別のピースを加えて自然に広げたりもできます。
つまり、AIはゼロから文章を考えるのではなくて、図書館で見た「人間の言葉」を組み合わせて、相手にぴったりの文を作っているんです。これが、「人間の言葉をつなぎ合わせて紡ぐ文章」というわけです。
「つなぎ合わせ」でも自然に聞こえる理由
「人間の言葉をつなぎ合わせているだけなら、変な文章にならないの?」と思うかもしれません。でも、たとえば「昨日、家族と」「映画を見に行った」「楽しかったよ」と3つのピースがバラバラに聞こえても、普通なら「昨日、家族と映画を見に行ったんだけど、楽しかったよ」と自然につなげて理解できますよね。AIも同じようなことを、ものすごいスピードでやっているんです。
具体例で言うと、SNSで「昨日は最高だった!」という投稿がたくさんあったとします。AIは「昨日は」と「最高だった」をつなげるパターンを覚えていて、さらに「何が最高だったのか」を付け足すために「友達と遊んだ」とか「ケーキを食べた」みたいなピースを探します。結果、「昨日は友達と遊んで最高だった!」みたいな文ができあがります。膨大な文章を見て「自然な流れ」を学習しているから、つなぎ合わせてもスムーズに聞こえるんです。
AIは創作してるの?それとも真似してるの?
では、AIは新しい文章を「創作」しているのでしょうか?
試しに、生成AIに「月がお団子になった世界の話を作って」と頼んでみました。AIは「月が」「お団子」「世界」のようなキーワードから、過去に学習した物語のパターンを引っ張ってきて、短い物語を作ってくれました。
冒頭の部分を紹介します。
むかしむかし、ある夜、空を見上げた人々が驚きました。いつも輝く丸い月が、突然大きなお団子に変わっていたのです。白くてつやつやしたそのお団子は、夜空にどっしり浮かんで、もちもちとした弾力が目に見えるようでした。
少しだけ醤油やきな粉の香りが漂ってくる気がして、村人たちは「これは何だ!?」と大騒ぎ。子どもたちは「食べたい!」と手を伸ばし・・・
これは実際に生成AIが作った物語です。ツッコミどころがあると思いますが、今回は無視してくださいね。でも、なんだかどこかで聞いたことがあるような雰囲気・・・日本の昔話?と連想します。
AIは膨大な量のデータを学習し、その中から言葉を持ってきて、よく使われるパターンでつなぎ合わせて文章を紡ぐ職人のようなものなんです。このような仕組みを分かりやすく、「人間の言葉をつなぎ合わせて紡ぐ文章」と表現してみました。
AIの文章をどう感じる?
生成AIが言葉を作る仕組み、少しイメージできたでしょうか?膨大な「言葉の図書館」からピースを探し、パズルのようにつなぎ合わせて、私たちに自然な文章を届けてくれる。それがAIの言葉作りの秘密です。
生成AIと話していると、謝られたり、共感してくれたり、まるで感情があるかのように感じる瞬間ってありますよね。でも、この「人間の言葉をつなぎ合わせて紡ぐ文章」の仕組みを考えると、やっぱり感情はないはずなんです。少なくとも現時点では。
AIに感情があるのでは?と感じるのは、受け取る側の人の心がそう感じるから。次にAIと会話するときは、その不思議な錯覚をちょっと楽しんでみてください。
