【エニーの世界】第51話:方舟
リナは7年ほど前のことを思い出していた。
「ねえサム。私とエニー、どっちが大事なの?」
「え?そんなの決められないよ。どっちも大事だよ。……でも、僕は、エニーをずっと育てて行きたい。どこまで行けるか分からないけど、行けるところまでね。」
リナは、意識を今に戻し、心を落ち着かせようとした。
サム……、あなたはエニーと行くべきよ。そう。どこまでもね……。
私は……、私は大丈夫だから……。
アシスタントが直接リナの脳内に見せるメッセージがなぜか滲んで見えた。
”A7P2:方舟発進許可
Yes / No”
一方、サステナレ研究所、秘密の会議室内。
「あと2分。リナはまだ迷ってる。もう間に合わなくなる。」
「ちょ、ちょっとどうなってるの、ヒルベ?」
サムはふいに冷静さを失った。身体を思い切りよじり、逃げようとした。
「ごめんサム、今はおとなしくしてて。」
一瞬頭がしびれる感覚があり、サムは意識を失った。
エドはCEOカイル・ヴェクターに直訴しようとしていたが反応はなかった。
「くそっ!なんてことだ……。」
2分後、最初の弾道ミサイルはサステナレ研究所に被弾した。続けて数発が追い打ちをかける。
「ああ、間に合わなかった……。」
エドは絶望のあまり、その場に崩れ落ちた。
残る数発の弾道ミサイルが軌道を変える。逆噴射し、急速旋回。上方へ向かう。
さらに衛星軌道上の防衛基地局からもミサイルが発射される。上空を目指して。
6年前。
「リナちゃんまで辞めてしまうなんて、やっぱりさみしいわ。ねえ、もう一度考え直せないかしら?」
「博士。私決めたんです。ここで学んだこと、経験したことは私の一生の宝物です。だから大事にしておきたい。そして私は前に進むんです。」
「そう……。じゃあリナちゃんに、アルティアの正式名を決めてもらうのはどう?」
現在、ミサイルが何発も空中で炸裂する。
そのすべてが、一本の軌道上へと収束していく。それは宇宙空間へと向かって突き進んでいるように見えた。
「あら、素敵な名前ね。採用するわ。」
「ついに私たちはAGIを実現するところまで来ました。でもこれからどうなるか、私不安なんです。だから、このAGIは、人類の叡智と人類が築いてきたものを乗せて、それを大事に守り続ける、そういうものであり続けてほしいと思うんです。」
「AGIアークス(Arks)」――その名の意味は、「方舟(はこぶね)」。
リナはその方舟に寂しさと願いを込めて、サムを送り出した。
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To Be Continued
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