メンタルの弱さと向き合う、「繊細だけど凛とした人」の正体とは?
「もっと、強い人になりたい」
そう願って、夜眠れなくなることはありませんか。
他人の何気ない一言を何度も反芻しては傷つき
自分の言動を思い出しては
「あんなこと言わなければよかった」と激しく後悔する。
未来のために時間を使いたいのに
脳内のメモリのほとんどが
過去の失敗や、他人の顔色を伺うことに消費されてしまう。
もし、あなたがそんな苦しみの中にいるのなら
少しだけ僕の話を聞いてください。
僕もかつて、同じ痛みを抱えていました。
でも、ある一つの「気づき」が、僕を変えました。
無理にタフになろうとしなくていい。
心を鎧で固めなくてもいい。
ただ、心の中に「分岐点」を持つだけでよかったのです。
今日は、繊細な人が、その感性を殺さずに
「凛とした人」に変わるための、「心のY字路」の話をします。
眠れぬ夜と、孤独な正義感
8年ほど前、僕がまだ、ホテルの宣伝部で働いていた頃の話です。
当時の僕は、自分の繊細さを「弱さ」だと感じ、
組織の中でどう振る舞えばいいのか悩み続けていました。
ある日の会議でのことです。
総支配人が、売上や利益の話ばかりを強調し、現場のシェフたちが大切にしている料理へのこだわりや、サービスの質を軽視するかのような発言をしました。
僕は「このままではホテルのブランドが崩れてしまう」という強い危機感を覚え、勇気を振り絞って手を挙げました。
「それは現場の士気を下げ、結果としてお客様を裏切ることになるのではないでしょうか」
部屋の空気が凍りついたのを覚えています。
しかし、総支配人は僕の言葉を意に介さず、冷たく言い放ちました。
「今はビジネスの話をしている。利益が埋めなければ、私も君もここにはいられないんだ。今日は、数字の話をするんだ」
僕の意見は、あっさりとあしらわれました。
その会議の後、僕を襲ったのは「正義感」「反抗心」ではありませんでした。
猛烈な「恥ずかしさ」と「後悔」です。
(何もわかってないやつだと思われたんじゃないか?)
(あんなこと言わなきゃよかった。どうせ何も変わらないのに)
(これから総支配人や会議に参加していた人たちに合わせる顔がない……)
その日からしばらく、僕はあまり眠れなくなりました。
廊下で上司とすれ違うのも怖くなり、仕事の手も止まりがちになりました。
自分の意見が否定された事実よりも
「否定された自分」を周囲がどう思っているかという妄想に、心を蝕まれてしまったのです。
組織における「感情」と「機能」
そんな僕の目を覚ましてくれたのは、意外な言葉でした。
僕の発言が社内に広まった頃、現場のシェフがこっそり僕にこう言ったのです。
「君がああ言ってくれたこと、俺は嬉しかったよ」
そしてもう一人。
いつも総支配人の味方として動く副総支配人が、落ち込む僕にこう声をかけました。
「意見が採用されないことなんて、日常茶飯事だ。俺だって半分くらいだよ」
彼は淡々と続けました。
「意見を言うまでは、死ぬほど考える。でも、組織として判断が下りたのなら、その後君がやるべき仕事は変わらないはずだ。変わらず、素晴らしい企画やデザインを作り続けてほしい」
ハッとしました。 副総支配人は、こう教えてくれたのです。
「意見が否定されることは、人格の否定ではない。ただの議論のプロセスに過ぎない」と。
会社やチームの目的は、利益を出すことと、素晴らしいサービスを提供すること。
そのために議論があり、決定がある。
その議論に積極的に参加した上で意見が否定されたとしても、
それが直接、評価つながるわけでもないし、
見られているのはその後どういう仕事をし、どう結果を出したかです。
そこに、僕が「どう思われたか」「恥ずかしい」と悩む感情は、実は1ミリも関係がないノイズだったのです。
もちろん、人間ですから感情は生まれます。
悔しい、恥ずかしい、悲しい。
でも、その感情を「これからの行動」にまで持ち込んで、パフォーマンスを落としてしまっては、それこそがプロフェッショナルの敗北です。
心の中に「Y字路」を作る
そこで僕は、自分の心のの入り口に「Y字路」をイメージすることにしました。
何か嫌なことがあったり、ネガティブな感情が生まれたりした時、その入り口に立ちます。そして、その悩みを二つの道に仕分けるのです。
【左の道】未来の行動に関係のないこと
「あの人になんて思われただろう?」
「嫌われたかもしれない」
「終わったことを後悔する」
これらを真剣に考えても、現実は変わりません。
だから、これらの悩みは、「ああ、自分は今傷ついているな」と感情だけ一度受け止めてあげて、あとは「脳の容量を使わない」と決めて、左のルートに流して、心の外に出しておきます。
【右の道】未来の行動に関係のあること
「企画を通すために、次はどんな資料を作ればいいか?」
「却下されたけれど、今の条件で最高の結果を出すには?」
「信頼を取り戻すために、今日できる仕事は何か?」
こちらが、僕たちが真剣に向き合うべきこと。
悩むなら、この「どうすれば良くなるか」という一点においてのみ、深く悩み、思考するのです。
こういう悩みが出てきた時は、右のルートに案内して、心と脳に届けて、深く考え込むようにします。
これが、「繊細だけど凛としている人」の正体でした。
彼らは、決して傷つかない鋼のメンタルを持っているわけではありません。
ただ、「考えても仕方がないこと」と「考えるべきこと」を瞬時に仕分け、後者だけにエネルギーを注いでいるだけだったのです。
理想家である同志へ
あなたはきっと、誰よりも理想が高い人なのだと思います。
「もっと良い仕事がしたい」
「もっと良い関係を築きたい」
その高い理想があるからこそ、現状とのギャップに苦しみ、感情が揺れ動いてしまう。
それは、僕たちが真剣に生きている証拠です。
だから、無理に感情を押し殺して、鈍感な人間になろうとしないでください。
その繊細な感受性は、人の痛みに気づき、素晴らしいクリエイティブを生み出すための大切な宝物です。
ただ、その宝物を守るために、心に「Y字路」を持ってください。
ネガティブな感情が押し寄せてきたら、深呼吸をして、自分に問いかけましょう。
「この悩みは、私の未来を良くするために必要な悩みだろうか?」
もし「No」なら、その荷物は心には届かない道に流しましょう。
あなたには、脳と心の容量を使って成し遂げるべき、もっと素敵な「理想の世界」があるはずですから。
よく考えてみてください。
いっときの自分の感情と、僕たちの未来の理想。
どっちを大切にしたいですか?
繊細なままで、前を向く。
そんな「凛とした」心持ちで、今日からも生きていきたいと思います。
