[安全の仕事] 完全網羅版 実効性が高い「緊急連絡網」の作り方
災害や緊急事態は、いつ、どのような状況で発生するか予測できません。
特に大規模な災害が発生した際、停電や通信障害といった中で、実効性のある連絡体制が不可欠です。
今回は、「スマホやPCなどの端末」をベースにした連絡網設計に焦点を当て、有事の際に機能する安全管理メソッドを紹介します。
1. 管理体制
有事に慌てないための第一歩は、「体制づくり」です。
①連絡ルート
緊急連絡は2通りのルートを考えましょう。
A=事業場の責任者から連絡するルート
(自然災害など)※全員へ連絡
B=発生した場所にいる人から連絡するルート
(労働災害や火災など)※関連責任者へ連絡
② 役割分担
連絡網全体を機能させるために、役割分担を決めておきます。役割は毎年交代するようにしておくと、理解度が増しますし、バッファにもなります。人数の少ない事業場では重複することもありますが、できるだけ分担します。
発信担当: 連絡を発信する(Aルート)
集計担当: 回答を集約する
報告担当: 本社や親会社に報告する
ルール管理担当: マニュアルを管理する
連絡先管理担当: 最新版連絡先を管理する
③ バックアップ体制
「メインの担当者が不在、または被災して動けない」という事態は普通に起こります。
各役割において、「メイン ➔ サブ」とバックアップを定めておきます。バックアップメンバーは、同じ住居地域に固めないようにしましょう。
2. 運用ルール
ルールが曖昧では機能しませんので、以下の事項を明確にしておきましょう。
① トリガー条件
「どのレベルで連絡網を発動するか」を客観的に定めます。
地震: 震度5弱以上の地震が発生した場合
大雨・暴風・大雪など: 気象庁より、特別警報や避難指示が発令された場合
火災:炎が発生した場合
労働災害:病院に搬送した場合
その他:事業場の責任者が必要と判断した場合
② リアクションがない場合
繋がらない、またはリアクションがない場合は、ルールを決めてリトライします。
一次送信から「1時間後」「3時間後」と、未回答者に対して再送信します。可能であれば自動送信の設定を。通信ツールを「電話」にしている場合は、「スキップルール」も決めておきましょう。
③ 緊急連絡網マニュアル
全員が守るべき「緊急連絡網」マニュアルを定義します。発信や返信の方法、タイミング、深夜や休日の対応など、包括的に織り込みます。分かりやすく周知できるよう、1ページにまとめる工夫をしましょう。
④ 定期テスト
ルール化して定期的なテストを行ないましょう。詳細内容は別項で説明します。防災の日(9月1日)などに合わせると意識的に実施できます。
⑤ 人事イベント同期
連絡先の登録漏れや、更新漏れが無いよう管理します。人事異動などに紐づけて管理できるようにルール化しておきましょう。
⑥ 登録端末管理
各個人のスマホを使用しますので、機種変更やOSのバージョンにより使えなくなることがあります。機種変更した場合には報告することをルール化しておきましょう。抜け漏れがないように定期テストでも確認します。
⑦ 対象範囲
どの組織、どの部署までを対象範囲とするのかを決めます。また、派遣社員やアルバイトの雇用がある企業は、対象に含めておきます。
⑧ 時間外や出張時など
時間外や休日は業務時間ではありません。しかし、連絡網を機能させるために、協力をお願いしましょう。個人情報の同意書に記載して承諾を受けると良いでしょう。
また、出張や出先にいる従業員は、災害の状況が異なります。システムで分けるのは難しいので、一律で連絡するようルール化します。
3. ツール比較
自職場に合ったツールを選択してください。ただし、いくつも選択してしまうと、有事に混乱しますので1つ、または2つにしておきましょう。
① 専用安否確認システム
■ANPIC、安否コール、セコム安否確認サービスなど
防災・BCP対策に特化したクラウドサービスです。気象庁の災害データと連動し、有事の際に自動で稼働する仕組みを備えています。
〈メリット〉自動で発信して集計します。各自登録のため、個人情報の管理が不要です。
〈デメリット〉災害時にしか使用しないため、「アプリの通信を切っていた」などが発生しやすいです。
② ビジネスチャット
■Slack、Microsoft Teams、LINE WORKSなど
通常業務で使っているツールを、緊急連絡網として活用する方法です。あらかじめ緊急時専用チャンネルを作成しておきます。
〈メリット〉仕事で使い慣れており、使い方に関する混乱が起きず、新たなコストもかかりません。
〈デメリット〉デフォルトでは発信者がメッセージを送り、集計する必要があります。
③ SNS・メッセージアプリ
■LINE、各種メッセンジャーなど
普及しているSNSを活用し、緊急時の連絡網とする方法です。日頃からグループを作って運用している場合、そのまま使えます。
〈メリット〉日常的に使用しているため、通知へ気づきやすいです。パケット通信を使うSNSは繋がりやすい傾向があります。
〈デメリット〉「個人LINEで繋がりたくない」という人が一定数います。人によってはアカウントが頻発に変わったり、退職者が居座るケースもあります。
④ アナログ・通信インフラ
■電話、SMS、キャリアメール
昔ながらの電話連絡網や、端末に標準装備されている通信機能を使う方法です。電話連絡網を元に順に電話をかける、または一斉送信メールやSMS(ショートメッセージ)を送信します。
〈メリット〉全世代に対応でき、スマホを持たない人にも使える手段です。SMSは、回線が混雑しにくい特性を持っています。
〈デメリット〉電話は通話の混雑により、災害時は繋がりにくくなります。発信者の対応や集計が必要になります。

4. 個人情報管理
従業員の連絡先を扱う場合、個人情報保護法への配慮が不可欠です。
① 個人番号の取得と管理
個人スマホの番号やアドレスを取得する場合、「利用目的の特定」が法律上義務付けられています。「連絡先は、安否確認および緊急連絡にのみ使用する」ことを明文化し、第三者に漏れないよう管理します。
② 同意書
個人連絡先の提供は強制できません。必ず「任意での提供」を前提とし同意書をとりましょう。同意書は緊急連絡網が存在する限り保管します。
③ 個人端末の使用承諾
個人のスマホなど端末を使用する場合、前項に合わせて承諾をとります。データ通信料も原則自己負担とすることを明文化します。
5. 周知と備え
従業員が「いつでも使える」ようにします。
① マニュアル周知
マニュアルは定期的に周知または教育します。使わないと忘れますので、繰り返し周知することが大切です。
② 防災カードの配布
スマホが使用できない時のために、名刺サイズのカードを全員に配布します。緊急連絡先、災害用伝言ダイヤルの番号や使い方、緊急連絡網の基本フローを記載します。別の端末を使うことも想定して、ログイン用QRコードを記載することも有効です。
③ データ管理
事業場の責任者は、スマホやPCがアクセスできない場合に備え、ローカルPCや紙に連絡先を残します。パスワードや施錠により、個人情報を保護しましょう。
6. 共有する内容
会社側から従業員へ送信するメッセージは、以下の情報を簡潔に伝えます。
①会社の被害情報
②今後の対応(指示事項や注意事項)
③出退勤の要否
7. 確認する内容
従業員へ確認する情報は、「選択肢から1タップ」で回答できるようテンプレート化しておきましょう。
①安否情報
②インフラ状態(自宅や避難場所の情報)
③出退勤の可否

8. テスト
定期的なテストにより、問題なく使えることを担保します。
① 端末の確認
「テスト配信が全員に届いたか」を確認し、不達だった従業員の端末状態(通知OFFになっていないか、OSが古すぎないか等)を確認します。
② マニュアル理解の確認
マニュアル通りにできたか、分かりにくくなかったかを、事後アンケートやヒアリングで確認します。
③ 問題点の抽出と改善
マニュアル通りにできたか?できなかった場合は、その理由を深掘りして対策を練りましょう。また、マニュアル側に問題があれば修正を検討します。
④ イレギュラー対応
訓練に「イレギュラー」を混ぜておき、対応力を見極めます。例えばバッテリー切れや、スマホの故障など。モバイルバッテリーを活用したり、PCから回答するなど代替対応もできるようにしておきましょう。
9. スマホ以外の通信手段
災害でキャリア基地局が故障すれば、スマホやPCのネット回線は遮断されます。
その場合のアナログな通信手段もマニュアルに明記しておきましょう。
災害用伝言ダイヤル(171/web171):「171」に電話をかけ、電話番号をキーにしてメッセージを残し合う仕組みです。通信規制の影響を受けにくいものです。
公衆電話: 災害時、公衆電話は優先的に回線が繋がるよう設計されています。また、停電時でも使用可能です。
10. まとめ
自社の緊急連絡網と照らし合わせ、当メソッドを参考に、ぜひ一度見直してみてください。
