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wt0712
名前を言わなかったあの子のこと
私の名前を、最後まで言わなかった人がいます。
高校の頃
一度だけ単車の後ろに乗ったことがあります。
家の近くまで送ってもらった、ほんの短い時間。今思えば、校則違反でした。
当時は、どの高校でも、高校生の
単車の免許取得は禁止されていました。
もちろん、二人乗りなど見つかれば
大きな問題になります。
フルフェイスのヘルメットで顔は見えないのに「あの高校の女の子だ」と
すぐに噂が広がりました。
進学校に通う生徒が
単車の後ろに乗って走る。
そんな姿が、信じられなかったのでしょう。
でも私はあの頃
人の外見や、進学校に通っていることだけで
その人の価値が決まるような空気に
どこか息苦しさを感じていました。
もしかしたら、あれは、バレてもかまわないと
思っていた、私の小さな反抗だったのかも
しれません。
噂は広がり、
相手の子は学校で厳しく問い詰められたそうです。
制服だったから。
私の高校なら無期停学になるような
出来事でした。
その子は厳重注意と、三日間の停学。
かなりきつく問い詰められたと
あとで聞きました。
それでも、その子は
最後まで私の名前を出さなかった。
そのことを知ったとき
胸の奥に、静かなものが残りました。
自分の小さな反抗に、
あの子を巻き込んでしまったような気持ちと
それでも守ってくれたことへの
言葉にできない思い。
ずいぶん時間が過ぎた今でも、
ときどき思い出します。
問い詰められても
誰の名前も口にしなかった沈黙。
あの子のことを。
また書きますね♡
#創作大賞2026 #エッセイ部門
