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「うちの親、施設で大切にされてる?」20年見てきた相談員が内側から答えます

「施設に入れたけど、本当に大切にされているのかな…

ご家族なら一度は感じる不安だと思います。直接スタッフに聞きづらいけれど、心の奥でずっと気になっている。私が相談員として関わる中でも「実は気になっていて…」という方は多くいらっしゃいます。

今回は、20年介護に携わってきた立場として、現場の内側から、ご家族が施設での親の様子を見抜くためのポイントをお伝えしていこうと思います。



なぜ「大切にされているか」は見えにくいのか

そもそも、ご家族が施設での親の生活の様子を見抜くのは簡単ではありません。理由はいくつかあります。

面会の時間は限られていて、その間しか見られません。ご本人が認知症や気遣いから「困っている」と言わないことも多いです。そして施設側は、面会の時にどうしても「見せたい場面」を見せがちになります。

だからこそ、何を見れば施設での本当の生活が見えてくるのか。ポイントを知っておくと、ご家族の安心につながります。


ご本人を見て分かるポイント

まず一番大事なのは、ご本人の様子です。

表情:笑顔があるか、緊張していないか。会話の時に目に光があるか。

身だしなみ:衣服、髪、爪、口の中の清潔さ。特に口腔ケアは見落とされがちですが、丁寧にケアされているかは重要なサインです。

皮膚の状態:乾燥、傷、内出血、褥瘡(床ずれ)の有無。

言葉の変化:以前より話さなくなっていないか、不自然に大人しくなっていないか。

食事の様子:楽しそうに食べているか、痩せていないか。

持ち物の状態:本人が大切にしていたものが、大切に扱われているか。

これらは「正しいか」を見るというより、「変化」を見るのが大事です。入所前と比べて表情が明るくなったり、身だしなみが整ったり——そうした変化があれば、その施設はご本人を大切にしてくれている可能性が高いです。

ここで、実際に私が関わったお話をご紹介します。
どれも、施設がご本人のことを考えて接していることがわかるエピソードだと思います。


カラオケでマイクを握ったお父様

病院に入院されていたお父様。転倒や点滴を抜くリスクから、安全のために身体拘束を受けていらっしゃいました。

長い入院生活の中ですっかり活気がなくなり、発語もなくなり、ボーっと過ごす時間が増えていきました。奥様と娘さんは、日に日に弱っていく様子を見て心を痛められ、退院後の特養入所を決断されました。

入所後も最初は変わりませんでした。ベッドの上で寝ている時間が多く、活気は戻らない。「変わらないか」と落ち込まれていたそうです。

ところが、入所から3週間後に面会に行った奥様は驚かれました。

なんと、動きのなかったお父様が、自分で車いすを漕いで奥様のところへやってきたんです。そして、こう声をかけられました。

「よう」

奥様は、その明るい表情と、自分から動いている様子に動揺されました。「どうしたらこうなるんですか?」と私のところへ尋ねに来られました。

私はこうお伝えしました。

「特養に入所された当初、確かに生活の意欲を失われていました。でも、こまめに職員はお声がけしていました。歌が好きとお聞きしていたので、カラオケのレクリエーションにお誘いしたところ、『少しだけ』と参加してくださって。その日、お父様は自分からマイクを握って歌を歌われたんです。それからはカラオケに必ず参加されるようになって、カラオケのない日は職員と中庭に散歩に行くようになりました。すると活動が増えたことで、食事も進み、みるみる活気が戻ってきました」

身体拘束もしていないので、自由に車いすを漕ぎ、日中も起きている時間が増えてきていました。

奥様は目を潤ませながら、こうおっしゃいました。

「一人のためにここまでやってくれるなんて、ここに入れてよかったです」

ご本人の「好きなこと」を知り、そこに丁寧に寄り添う。これは、職員一人ひとりの意識と、施設全体の姿勢がないとできないことです。


ご本人の希望を、形にする

もうひとつ、印象に残っているお話をさせてください。

入所されていたお父様が、看取り期に差し掛かり、食事が食べられなくなってきました。普段の食事も少しずつしか口にできない状態です。

ある日、ご家族に私からこんなご相談をしました。

「ご本人を含めたご家族食事会を開きたいので、できるだけご家族を連れてきていただけませんか?」

当日、お孫さんも含めて5人のご家族が施設に来てくださいました。ご本人のお部屋が飾りつけされ、職員が盛り上げてくれました。

そして、メインイベントはここからです。

ご本人の大好物の「鰻」を、食事として出したんです。

噛む力も飲み込む力も落ちていて、普通の鰻はとても食べられる状態ではありませんでした。でも、栄養士が鰻をソフト食のような形態に調理し、味だけはしっかり鰻を感じられるように工夫してくれました。看護師も、何かあった時に対応できる体制を整えてくれていました。

ご本人は、「おいしい」と、大好きだった鰻の味をしっかり味わうことができました。

ご家族はその様子を見て、深く感動されていました。

ご本人の「好きなもの」「食べたいもの」を、なんとか形にして食べていただく——これは、ご本人を一人の人間として尊重し、大切にしているからこそできることだと思っています。


スタッフを見て分かるポイント

ご本人の様子と同じくらい大事なのが、スタッフの様子です。

スタッフ同士の挨拶や雰囲気:ご家族へも挨拶があるか。お互いに声をかけ合っているか。笑顔が見られるかも重要です。

入居者様への声かけ:命令口調になっていないか。「〇〇さん」と名前で呼んでいるか。

スタッフの動き:バタバタしすぎていないか。慌てずに対応できているか。

施設の匂い:清掃や排泄ケアが適切に行われていれば、不快な匂いは抑えられています。

トイレ介助やオムツ交換のタイミング:長時間放置されている様子がないかで個別ケアが行われているかがわかります。

記録や連絡帳:書きっぱなしになっていないか。何かあったときにご家族にちゃんと伝わっているかも大切です。

これらは一度の面会では分かりにくいかもしれませんが、何度か通ったり、職員と話をしているうちに見えてきます。


一言の声かけを徹底している話

最後にひとつ、私の施設で大切にしていることをお伝えします。

それは、面会にいらっしゃったご家族に、必ず一言はお声がけすることです。

「今日はこんな様子ですよ」「昨日のレクリエーションでこんなことがありました」——本当に短い一言ですが、これを徹底しています。

ご家族によっては「必要ない」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。でも、面会に来ても誰からも一言も声をかけられずに帰っていく。もし自分の立場だったら、寂しいだろうなと思うんです。

この一言があることで、ご家族から話しかけられる機会も増えます。「あの、今日母が…」「最近ちょっと気になることが…」と、お互いに話しやすい環境ができていきます。

施設の姿勢は、こうした「ちょっとしたこと」に表れます。面会の時にスタッフから声をかけてくれるか。これはご家族が施設を見極めるひとつのポイントになるかもしれません。


不安を感じたら、まずは相談を

ここまでお伝えしてきたポイントを踏まえて、もし不安を感じることがあれば、まずはスタッフに具体的に聞いてみてください。

「最近、母の表情が暗い気がするのですが、何かありましたか?」「父の食事の様子はどうですか?」など、遠慮せずに聞くことが大切です。

きちんとした施設であれば、具体的に答えてくれます。改善点があれば正直に伝えてくれます。逆に、曖昧な答えしか返ってこなかったり、質問を避けるような対応であれば、それも一つのサインかもしれません。

どうしても気になるところがあって、改善が見られない場合は、まずは相談員に相談してみて下さい。それでも変わらなければ、施設長や行政の窓口に相談するという選択肢もあるにはあります。

ただし、過剰に疑いすぎないバランスも大切です。多くの施設で、現場の職員は本当に真剣に働いています。どうしても忙しいこともありますので、一回の出来事で判断しないで何回か見てみて下さい。「信頼する」と「確かめる」の両方を、ご家族のペースで持っていただければと思います。


最後に

施設に親を預けるというのは、ご家族にとって本当に大きな決断です。

「申し訳ない」という気持ちと、「ちゃんと見てくれているかな」という不安。その両方を抱えながら、面会に通われているご家族の姿を、私は何度も見てきました。

施設で働く側にも、一人ひとりの入居者を大切に思い、誠意を持って働くスタッフがたくさんいます。ただ、すべての施設、すべてのスタッフがそうだとは言い切れないからこそ、ご家族の「見抜く目」が、ご本人を守る力になることもあります。

ご家族が安心して任せられる施設に出会えた時、その関係は何年も続く大切な絆になります。ご本人とご家族と施設の三者が、寄り添い、お互いを尊重し合える関係であってほしい。私はそう思っています。


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