美しく咲くために、潔く切る
五月の庭では、満開のピークを過ぎたバラたちのお手入れが、毎朝の日課になっています。
雨上がりの朝、まだ少し湿った空気の中で庭に出て、少しずつ剪定を進めていると、植物が本来持っている合理的な法則に、改めて気づかされます。
バラの剪定には、基本となる目安があります。
外側を向いた5枚葉の上、5ミリから1センチほどのところで切ること。
残した葉の付け根にある芽の向きに、次の新しい枝が伸びていくため、どの葉を残すかで、バラの姿は少しずつ変わっていくのだそうです。
つまり、どの葉のすぐ上でハサミを入れるかは、次にどちらの空間へ枝を広げ、花を咲かせたいかという、未来の方向づけそのものです。
庭全体の光の当たり方。
隣り合う枝とのバランス。
これから伸びてほしい空間。
そんなことを考えながら、一本一本、丁寧にハサミを入れていく。
毎朝のこの時間は、とても静かで、マインドフルネスな作業です。
そしてそれは、私たちの人生や日々の選択とも、とてもよく似ているように思います。
今の決断が、次の自分が伸びていく方向を決める。
一度「切る」という行為で方向を定めなければ、新しい枝は望む場所へは伸びていきません。
どちらにも伸ばせると思って何もしないでいると、枝は交差し、光を遮り合い、花はだんだん小さくなってしまう。
それは、暮らしや人間関係、持ち物、時間の使い方にも通じることかもしれません。
そして、バラの剪定でもう一つ興味深いのが、適切に深く切り戻すことで、次に太く勢いのある枝が伸びやすくなるということです。
本当に美しく、大きな花を咲かせたいなら、時には思い切って深く切る勇気が必要になる。
私たちの暮らしも同じかもしれません。
住空間の見直し。
長年抱えていたものの整理。
何となく続けてきた習慣や関係性の見直し。
中途半端に執着を残すのではなく、ある程度思い切って手放すことで、初めて自分の人生に、太く力強い新しいエネルギーが流れ込んでくるのだと思います。
手放すことは、決して喪失ではありません。
それは、次に咲かせたい方向を見定めること。
そして、より美しい花を咲かせるための、静かで前向きな準備なのだと思います。
目の前のものに、潔くハサミを入れる。
その小さな決断の積み重ねが、自分らしい心地よい未来をつくっていく。
五月の庭のバラたちは、毎朝そんなことを私に教えてくれています。
