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京都・今宮神社 あぶり餅と義母の思い出


大徳寺を出て、北へ少し歩くと今宮神社がある。

前の日、「明日は大徳寺に行ってくる」と、夫に告げると、「それなら今宮神社に寄って、あぶり餅を買って来てほしい」と頼まれた。

元からそのつもりだったけれど、夫が食べたいというとは思っていなかった。
夫は普段、あまりそういうものを食べないのでちょっと驚いた。
“あぶり餅”は、子供のころから母親が買って来て、よく食べたので懐かしい、と言う。

私も義母が買って来て、初めて今宮神社の名物、“あぶり餅”を知った。
もう30年以上前のことだ。

竹串に刺した小さいお餅が炭で炙られ、そこに白味噌たれがかかっているのが、あぶり餅だ。

神社の東門の参道には、向かい合う二軒のあぶり餅店がある。
平安時代からある「一和」と江戸時代創業の「かざりや」。
どちらも歴史のある老舗だ。
それぞれ店の特徴があって好みが分かれる。
義母に両方連れてもらったが、どちらも美味しい。

とりあえず、神社のお参りをしてからと、店の前を通ると、「お参りの帰りに寄ってください」と、店から声がかかる。

義母が「両方の店が客引きの声掛けをして、ドラマの水戸黄門の茶店のシーンみたいえ」と、楽しそうに話していたのを思い出した。

お参りを済ませて向かうのは、義母が贔屓の「かざりや」だ。
近頃は、週末はどちらの店も行列だと聞くが、平日は並んではいなかった。

あぶり餅 かざりや

お昼を食べて満腹だったので、持ち帰り3人前を頼んで座って待っていると、お味見だといって、焼き立て5本とお茶を持ってきてくれた。

焼き立てを食べられる、嬉しい、とパクリ。
香ばしいお餅と、白味噌の甘たれが絶妙。
懐かしい、美味しい、とペロリ。
一人前をその場で頼んでも食べられたな、と思った。


家に持ち帰って、さっそく紙の包みを開けると、ビニールに入ったあぶり餅が、竹皮に包まれていた。
底には、白味噌たれがたっぷり。

お皿に10本ほど入れて夫に出すと、「うまい、うまい、懐かしい」とペロリ。
まだあるというと、まだ食べるという。
今度はレンジで少し温めてみた。
お餅が柔らかくなって、それも美味しい。

「一生分のあぶり餅を食べた」と、満足していた。

撮ってきた店の写真を見せると、変わらないと懐かしがった。
中高生の頃は、ひとりでもあぶり餅を食べに訪れていたという。

神社の境内や本社殿の写真も見せた。

今宮神社 本社殿

「これはどこ?」と夫。
「えっ、今宮さんやけど」
「へぇ、ぜんぜん覚えてない」と、あっさり。

「これは覚えてる?」と、東門の橋の写真をみせた。

今宮神社 神橋

小さい頃、その欄干で電車のおもちゃを「でんでんシュッシュッ、でんでんシュッシュッ」と、走らせて遊んでいたと義母に聞いていた橋だ。
けれど、それも覚えていなかった。

そういう私も同じで、神社の境内は初めて来た場所のように、まったく見覚えがなかった。
橋は、石橋だったと思っていたが、朱塗りだった。
参道の店だけは記憶に残っていて、懐かしかった。

義母は、美味しいものをよく知っていた。
子ども達を喜ばせようと、あちこちへ買いに走っていたそうだ。
あれが好きだったなとか、これはこだわりがあったとか、そんな話をしながら義母を偲んで夜は更けていった。

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