🍉段ボールのスイカと母の愛
私の夏のカラダは
スイカで、できていた。
昔からスイカが大好きだった。
体に良い栄養が詰まっていると
知ったのは、
ずっと大人になってからのこと。
あの頃の私にとっては、
ただただ
暑い夏を元気に生きるための
命の源だった。
スイカにまつわる思い出は、
どれも色濃い。
小さい頃から、
夏休みになると
五島列島のいとこの家に
遊びに行っていた。
従兄弟の家のお便所は
庭先の小屋。
大きな龜(かめ)に
板を二本渡しただけの
まるで、忍者の修行のような
一歩間違えれば…の場所だった。
小さいときの外便所は
本当に怖かったな…。
そこで肥やしとなったものが
スイカ畑へと運ばれ、
実を結ぶ。
畑で採れたスイカを
蒼い海で、庭先で、
スイカ割りをして食べた。
それは、暑い夏の美味しい思い出。

時が流れ、
私自身が親になった頃。
小さかった娘のオムツが
すっかり外れていた時期に、
夜、スイカを食べさせたことがあった。
その夜、
娘は生まれて最初で
最後のおねしょをした。
それから私も、
スイカを食べて
夜中トイレに起きた時は
ちと、反省する。
🍉 🍉 🍉
私が熊本に嫁いで来て間なもない頃、
佐世保の実家の母は、
いつも大きな段ボール箱いっぱいに
色んな荷物を詰めて
送ってくれていた。
ある日、届いた
ずっしりと重い箱を開けると、
母の手作りの
きゃらぶき、
らっきょう、
奈良漬、
そして梅干しの瓶が
大事そうに並んでいた。
その隙間にどんと
入っていた
「植木スイカ」
熊本で育った
名産品のスイカが、
一度長崎の佐世保へと運ばれ、
母の手で箱に詰められて、
また熊本の私の元へと帰ってきた。
「植木スイカやったら
こっちで買うとに…」
箱の奥を覗き込むと、
そこには一枚の茶封筒が入っていた。
箱中で、こぼれてしまった
梅干しの汁がじわじわと
赤く、にじんだその封筒。
中を開けると、
母がそっと忍ばせてくれた
お金が入っていた。
熊本で新しく生活を始めた娘を案じ、
赤く染まった茶封筒。
涙も一緒に、にじんだ。
遠く離れて暮らす私の顔を
思い浮かべ、
スイカが大好きな娘のために、
重い思いをして、スイカを買い、
思い想いに、手作りの漬物を詰め、
封筒を忍ばせてくれた母。
箱いっぱいに詰まっていたのは、
スイカだけではなく
どこまでも深い
母の愛だった。
熊本から佐世保へ
そしてまた熊本へ
長い旅をしてきたスイカ。
今でこそ、
スイカは身体に良い
食べ物だとわかるけれど、
あの時のスイカと
母の味は、
私を心から元気づけ、
温かく満たしてくれた。
赤く滲んだ思い出とともに
今でもスイカを食べるたび
母の温もりを思い出し
口いっぱいに頬張りながら
目からもしずくが
こぼれます。

