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払拭

小さな欠片を拾い集めるように
いろんな話を書いてきた。
この一年、
毎日、毎日飽きもせず。
誰に褒めてもらわなくても書き続けられるのはなぜだろう。

妄想が止まらないから?
ネタが尽きないから?
現実社会からの逃避?
暇潰し?

どれも当てはまるけれど
どれも当てはまらない。

こうして、駄文を書くときだって
とてつもなく、楽しい。
薄ら笑いを浮かべ、読んでもらえる人もほんの数人なのになぜだか楽しい。
昔言われた
心ない言葉を、今払拭しているから。

ちょうど、リウマチで仕事を辞めて家で療養中だった頃
家から歩いて5分ほどのところに住む
中学の同級生が、(今でも同じ場所に住んでいる)私に言った。
彼女はイラストを描いている。
ときどき雑誌やなんかに投稿して少々おこづかい稼ぎもしている。パソコンもなんだかとてつもなく難しい説明をされたが、私にはちんぷんかんぷんで
一緒にいると少し疲れる。
彼女がある日
パソコンの自分のブログに
なにやらを書くだか描くだかするので

「あおちゃん(←私)
なんか文章書いてよ。」

と、言ってきた。

「何を書けばいいの?」

なんでもいいよ。彼女がそう言ったので
私は詩を書いた。
内容はもう忘れてしまったが
たぶん大きな木が出てきたと思う。
チラシの裏紙に書いて渡した。
原稿用紙とか
きちんとした紙でなくても、どうせパソコンで入力するだけだから。

彼女はそれをブログに載せたのか載せてないのか言わなかったけれど、
その詩が気に入らなかったのだと思う。

「あおちゃんの文章は
ひとりよがりだよね。」

「は?」

「あんまりさ、こむづかしいことばっかり書くのやめなよ。めんどくさいじゃん?」

たいしたことは書いていない。
昔から考えていることは今とそう変わらないので、これから投稿する「終末夜話」みたいな世界感で書いた詩だったと思う。

「ひとりよがりだよね。」

痛く傷ついた。
この人は、自分で書けばいいものを
人に頼んでおいて
こんなことを言うのか。
なんだ、このオンナは。

彼女に会うのをやめた。

それでも近所なものだから、買い物先や会社の帰りに会いたくもないのに会ってしまう。なんとなく付き合いはつづいた。
私の父が死んだ時、彼女が「お線香代」と言ってお金を包んできた。
私も彼女のお父さんが亡くなった時「お線香代」と言って収めてもらったのもあったのでありがとうと受け取り
「お線香あげてってよ。お茶くらい出すよ。」
と、言ったら
「いいよ。いいよ。」と車で帰って行った。
知らない中ではない。
父も彼女を知っているし
彼女も父と会っている。
私は彼女のお父さんが亡くなった時、お線香代を持っていったが
その前に
お線香をあげさせてもらった。
知らない中ではない。なにしろ中学の同級生なのだから。

父の葬式は家族葬で、列席したのは私と母、それに兄夫婦の四人だけ。あっという間に終わってしまった。もちろん会葬者に配るものも何一つなかったので
急遽、彼女の家にお茶を買って届けた。
彼女のお母さんが

「ありがとねえ。あおちゃん。
大変だったでしょう。」

と、気遣ってくれて
少しで悪いけと。家なにも用意してなかったから。
とお茶っ葉の入った紙包みを渡すと
「いいのよ。家もあおちゃんにお父さん線香あげてもらったんだから」
といって、それでも
「ありがとね」
と受け取ってくれた。

その晩、
彼女から電話がきた。

なんであんなことするん?

なんでってお返し。

要らないよっ!

要らないって言ったって、この前お線香代いただいたし。

書いてあったでしょ?
お返しは要らないって。

だから、それはそれ。これはこれでしょ。最低限のお茶だよ。
だってお茶、飲むでしょ?

いろいろ言い合いしたあとに
彼女は言った。
「文章と同じでひとりよがりだよね!」


最初に彼女に言われた
「あなたの言葉はひとりよがり。」
この言葉で私は文章を書くのをやめた。

何年も、
何年も、
何年も、
ノートを開かなかった。
インスタを始めた時、
「おもしろい文章を書くのね。
どんどん書いたほうがいいわよ。」
と、励ましてくれる人が何人か居て、
少しずつ復活してきた。

note を始めて
彼女に言われた呪縛の言葉から
解き放たれた。
あれから、彼女とは会っていない。
うしろ姿を見ても素通りし、
あいさつもしない。

もし、誰かが
心ないことを言われて
へこんでいたら
後足で砂をかけるようなことはしない。
私は。
あんなオンナじゃ、ない。


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