心と体はなにか見えない紐のようなもので繋がれていて、たまに音をたててぷつりと切れるときがある。これが繋がれていないとまるで抜け殻のようになって、しずかに体が倒れていくような感覚がある。
ぷつん。
聴こえないけれど聴こえるその「心と体の離れる音」はいわゆる精神状態の限界なのだろう。何もできず体が動かなくなる、息はしていて確かに生きているはずなのに。
天井を眺め、心を探すその空っぽの体は、真っ白な壁紙をただ見つめ、まあるいお月様のような形の照明も見つめ、その瞳さえどこに焦点を当てているのかすら理解できない。
まるで人形のような、屍のような。
先日この状態になりどうにもできなくなり、食べ物を食べにいく、買いにいくことすらできず、コンビニからはじめて配達をおねがいした。滞りなく徒歩5分のコンビニから届いた食材を何とか口に押し込み、また倒れ込むように同じ体制に戻った。
ああ、私は「人間」なのだろうか。本当にこれは、人間と言えるのだろうか、わからない。わからないが、人間でいう雌の体を持っていて息をしていて、歩いていれば人混みの中で私は人間だ。間違いない、それは間違いないのだ。だけどよくわからなくなって、うずくまって、目を閉じる。
寝るのは、好きではない。夢が鮮明過ぎるからだ。夢の世界に行くのがこわくて、寝なくていいなら寝たくない。だけど眠らないといけないから眠る。そんな日が続く。眠るのが怖いと泣いたことがつい最近あった気がする、まるで生まれたての眠気への恐怖を抱く新生児のようだ。
ぷつりと切れた心を手繰り寄せ、また体となんとかくっつけて、だけどぎゅっとぎゅーっと結んでおけないものだから、簡単にぷつんと切れてしまう。手のひらの上で、ほろほろと。
いつになったら、心と体はしっかりとくっついてくれるのだろうか。
方法がよくわからないまま、もうこんな歳だ。子供の頃想像してたみたいのとは違って、大人って完璧じゃちょっと無いみたい。
心と体をくっつけるまで、深呼吸だ。
山口葵

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