居酒屋wagaya;気持ち悪いおじさんに出会った話
「いらっしゃい!」
「お久しぶりです!体調は大丈夫?」
「年末は急に閉めちゃってごめんなさいね。元気になったわよ!」
「良かった!心配してたのよ」
「ありがとうございます!ビールでいいかしら?」
「お願いします!」
「仕事もやめてワンちゃんやネコちゃんと楽しくやってる?」
「蓮の体重増やそうと思ってね。仕事辞めて時間が出来たらやろうと思っていたことがあって、夕ご飯に毎日肉や魚や野菜キノコを入れて煮込んで
フードにトッピングしてるの。そしたら1か月で2キロ増えたんだよ。
10/18日引き取った時は9.9㎏だったのに今は19.6㎏。順調に増えてるよ!」
「尻尾とお尻の毛が長くなってきたね。イイ感じ!」
「ありがとう!」
今日の夕散歩の時ね、嫌な事があったのよ。
「嫌なことって?」
夕方4時半過ぎに家を出て公園の駐車場に車を停め蓮の散歩をしたんだけど、たまたま通りかかったおじさんがいて、立ち止まってずっと蓮を見てるんだよね。知らない方だったので黙っていたんだけどずっと見ているんだよ。そして「その子は若いの?年取ってるの?」って聞かれたから「まだ8か月なんです」って答えたら「痩せてるなぁー」って言うんだよね。
面識ない方だしいろいろ話すのも面倒だし黙っていたんだけど、私たちが話しているのを見て人好きの蓮はその方に近寄り愛想を振りまき始めたわけよ。その方はショルダーバッグを二つ提げていてそのバッグに蓮が執着し始めたのね。「食べ物が入っているんだな。お弁当の残りかしら?」なんて思っていたんだけど、「食べ物あげようか?」とその方が言うので「人間が食べるものはあげられないのでごめんなさい」と言いました。
「カラスが結婚して子供が生まれたんでね、今日来てみたんだけどその子供のカラスに会えなかったんだよ。」とおじさんは言う。
(子どものカラス、しかも特定のカラス、どうやってわかるの?)と私は思った。なんか変な人。離れた方が良さそうだなと思い「ありがとうございます。蓮行くよ!」って離れようとしたけど蓮はショルダーバッグにご執心!
するとその方はおもむろにバッグを開け「俺、ごんたのフードってやつを持っているんだよ」と言い手のひら一杯のフードを蓮の前に転がした。
夢中になって食べ始める蓮!
何が入っているかわからないものを夢中で食べる蓮!
「多すぎます!」と言いながら私は急いで拾い集めビニール袋に入れた。
それでも蓮はまかれたフードの半分は食べたと思う。
おまけにそのおじさん「ご飯食べさせてるのか!?かわいそうに!」
と言った。
フードの回収で手いっぱいの私は返事どころではない。
犬を飼ったことのある方はご存じだろう。レトリバーを飼ったことのある方は良ーく知っているだろう。彼らの飽くなき食欲がどんなものなのか!
欲求のままに食べさせていたら嘔吐、下痢になる。そんなの常識だよね!
ましてや違うフードを大量に食べさせたらどうなるか、体に合わなかったら即刻体調崩す!
ショップから引き取った時の蓮は確かに痩せていた。だからといって一気にフードを増やすわけにはいかない。鶏肉、豚肉、鹿肉、馬肉、納豆、野菜、と少しずつあげながら、💩の状態を見ながら、皮膚の状態を見ながら、アレルギー反応見ながら、ようやく今ほぼ20㎏まで体重が増えてきた。
「私の4か月の努力を踏みにじるな!!!」
「無関係のおじさんには言われたくないね!」
そう思って蓮を連れてその場を離れようとしたときおじさんは言った。
「あんたら若いものにはわからないかもしれんが、俺たちの若い頃は食べることも大変だったんだ!」って。
「だから!?あんたら若いものというけど明らかに私ら同級生か、何なら私の方が年上だよ!」って思ったってわけよ。背丈もあり背筋もピンと伸びた人だった、どうみても85や90歳には見えないね。
あのおじさんが持っていたフードはここ1か月くらいの間に公園のあちこちで発見されていて、犬友さんの間では注意喚起が飛ばされていた。この人だったんだ!おじさんはその後車で走り去った。ナンバーまでは覚えていないが車の色と止まっていた場所はわかったので今日会った犬友さんたちにはすべてを伝えておいた。
「フードの中に毒とか入ってないといいね!」
「それよね!以前親しくしていたダルメシアンは朝の散歩の時拾い食いをしたものに毒が入っていて大変な思いをして亡くなったんだよね。肉の臭いがしたら犬は食べちゃうからね。」
「そのおじさんね、動物が好きなのかもしれないけどって思ったりもしてさ。でもやってることが全く違うなって思ってね。そんなに好きならカラスでも狸でもキツネでも犬でも馬でも猫でも一度自分で責任もって飼ってみたらいいのにね。そう思って腹立たしかったんだよね今日は。」
「命に向き合うって餌やりだけじゃないからね。人なら人生って言うけど動物は何ていうの?それぞれに愛情注がれて幸せな動物としての生を生きること、そんな世界であってほしいね。人間もみんながそう思っていたら戦争はおこらないと信じていたいね。」
「ありがとう女将さん!良かった今日ここにきて」
「また来てね!」
