魔女のハーブは、あんまり甘くない 7ー1 星空の魔女(1)
◯アカリのお店(昼と夕方の、あいだの時刻)
アカリ、セーラ、ユイが手紙を見ている。
ミントが、すやすやと、アカリの腕のなかで眠っている。
小さなからだのまわりに、光のもやが、のこっていた。
セーラ「でも、この手紙って、どういうことなんだろうね・・・・?」
セーラが、手紙を見ながら、大きく首をかしげる。
アカリ「星の旅人って・・・・?」
アカリが、窓の外の、空を見る。
ユイ「・・そうねえ、あたしも、こんなのはじめて見た。街の人なのかな?」
ユイが、うーんと、腕をくむ。
3人で、いっしょに考え込んでいると、お店のドアが開き、ソウタが入ってきた。
ソウタ「ただいまー」
ソウタ、ちょっと興奮ぎみの顔で、大きな声。
窓ぎわのココと、のら猫が、いっしょに小さな目をソウタにむける。
アカリ「あら、ソウタさん、おかえりさない」
アカリ、楽しげな声をだす。
ソウタ「ミントちゃんは、元気にしてたかい? あれ、からだが光って・・・・?」
ソウタ、ミントに目をとめる。
アカリ「ううん、なんでもないの。ところで、ソウタさん、どうかしたの? なんだか、そわそわしちゃって」
ソウタ「へへ、いいものあるんだ」
ソウタ、アカリを見ると、よいしょと大きな箱をだして、なかからビニールに包まれた筒をだす。
セーラ「え、これって、なに・・・・?」
セーラ、大きな箱に、おどろいた顔。
ソウタ「ボクが作った、望遠鏡さ」
ソウタがビニールをとると、きらりと光る大きなレンズが、でてきた。
おおーと、3人が、同時に声をあげる。
ソウタ、すこし得意げな顔で、三脚を手にする。
ソウタ「どう、立派なもんでしょ? でも、なんか、きゅうに空が暗くなったけど、なにかあったの? まえも、こんなのが、あったような・・・」
アカリとセーラ、顔を見合わせてわらう。
セーラ「でも、これが完成すれば、レオーナちゃんがいってた魔女座を見つけること、できるかもねー」
セーラ、じっと、望遠鏡を見ながらいう。
ユイ「・・でも、ほんとに、そんな星座があるの?」
ユイ、ちょっと困惑した顔。
アカリ「うん、まちがいないと思う。そのおかげで、わたしは、星空を歩けたから」
セーラ、うんうんと、うなずく。
ユイ「星空を歩くって・・、なんか、すごいこと言ってない?」
ユイ、ちょっとひきつった笑みで、アカリとセーラを見る。
セーラ「そういえば、あたしも、ソアラおばあちゃんから、そのことを聞いた記憶があるんだよねー」
セーラ、すこし遠くを見るようにいう。
アカリ「え、そうなの、セーラちゃん?」
セーラ「うん。でも、ずっとむかしに、もう魔女座は、空から消えちゃったって、いってた・・」
セーラ、すとんと、イスに腰をおろす。
ユイ「え、じゃ、今、空にあるのかな・・・?」
ユイが、ちょっと不安げな顔で、窓の外を見る。
ソウタ「・・だいじょうぶ。きっと、見つけられるさ。な、ココ?」
ソウタの言葉に、ココが「ニャ」となく。
つづいて、のら猫も「ニャオ」となく。
ソウタ、うんうんと、力づよくうなずく。
セーラ「あ、そうだ。ココたちも、ご飯の時間だねー」
セーラ、壁の時計を見ていうと、イスから立って奥の倉庫にむかう。
ユイ「・・なんか、その子も、ほとんどうちに、住みついちゃった感じね」
ユイ、ココと遊んでいるのら猫を見ながら、わらう。
アカリ「でも、ココちゃんも、前より楽しそうな顔になったと思わない?」
アカリがいうと、腕のなかのミントが、小さな指をうごかす。
指さきが、ほんのりと光った。
アカリ「・・・・?」
セーラ、倉庫の扉をあけて、サーディンの缶をだすと、はっとした顔。
セーラ「あー、もう、パンがないねー」
セーラ、サーディンを小皿にもって、ココたちにだすと
「アカリちゃん。あたし、ちょっとパン買ってくるねー」
と、アカリに声をかける。
ココとのら猫が、小皿のサーディンをいっしょに食べはじめる。
セーラ「ほら、山を超えた街に、有名なパン屋さんがあるでしょ。あそこ、行ってみたかったんだー」
セーラ、ホウキを手にしながらいう。
ユイ「あ、ウチキノパン? そこ知ってる。有名だよね」
ユイが、楽しそうに反応する。
セーラが、「そうそれ」と相づち。
アカリ「あ・・、それじゃ、わたしも」
アカリが、イスから、ゆっくりと腰をあげる。
セーラ「え、アカリちゃん、いいの?」
セーラが、ちょっと、おどろきの表情。
アカリ「うん、ひさびさに、からだを動かしたいし。ソウタさんもいるし・・・・」
アカリ、腕のなかのミントを、そっとソウタにあずける。
ソウタ、笑みをうかべながら、ミントを両腕でつつむ。
ユイ「・・そうか。ソウタさん、かなりイクメンだもんね」
ユイも、ちょっといたずらな視線を、ソウタになげかける。
ソウタ「そう、そのとおり。行ってきなよ」
ソウタ、腕のなかのミントを見ていう。
アカリ「・・よかった。じゃ、ミントちゃん、いい子にしててね」
アカリ、ミントのほおに、キスをする。
ココが、小皿から顔をあげる。
セーラとアカリが、ホウキにまたがる。
ココが走ってきて、ぴょんと、アカリの肩にとびのる。
アカリ「あれ、ココちゃんも・・・・?」
2人をのせたホウキが、すーっと、うすぐらくなった空へと、舞い上がっていく。
ソウタ「・・おお。空へあがっていくのを見るのは、いつ見ても、気持ちがいいな・・・・」
ソウタ、ミントを抱きながら楽しげな声をだすが、やがて、「あれ?」と不思議な顔になる。
ソウタ「な、なんか、2人の姿が・・・・」
となりにいるユイも、目を、ぱちぱちさせる。
ユイ「光ってる・・・・?」
夜のカーテンが、かかりはじめた空に、2人の姿が、光のたまのようにうかんでいた。
ソウタ、はっとして、ミントを見る。
ソウタ「ミ、ミントちゃん・・・・?」
ミントの小さなゆびさきが、ほんのりと光りだした。
ユイ「・・・・?」
ユイがおどろいてミントを見ていると、空の7つの星が、かがやいた。
◯貴族エリア(お昼ごろ)
ユンカー家の、正門の前。
アルカスと、たくさんの馬車が、むかいあっていた。
やがて、馬車から、ひとりの男性がおりて、アルカスに歩み寄る。
アルカス「おお、クワトロ。よくきてくれた」
アルカス、両腕をひろげ、喜びの声をだす。
クワトロ「おまたせしました。では」
クワトロが手をあげると、おおぜいの制服姿の男性が馬車にのりこみ、笑みをうかべる。
アルカス「うむ。では、よろしくたのむよ」
アルカスが、いちばん先頭の馬車にのりこむと、クワトロが満足げにうなずく。
クワトロ「よーし、出発だ」
クワトロが大きな声をあげると、たくさんの馬車が音をたてて、貴族エリアの街なかにむかって走り出した。
セウス、館の2階のまどから、すこし心配そうな顔で馬車の列を見ている。
セウス「アルカス。あまり、むちゃは、しないで・・・・」
セウス、祈るようにつぶやくと、やがて空のむこうの景色に目をとめる。
セウス「あら、あれは・・・・」
遠くの4つの星が、小さな光を、はなっていた。
セウス「あれって、南十字星・・。え、でも、この季節は・・・・?」
やがて、南十字星の左の星が、大きくひかった。
セウス「え、どうして・・・・?」
セウス、はっとした表情。
セウス「まさか、あの言葉・・・・?」
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<7−2に、つづく>
