《魔女のハーブは、あんまり甘くない》 ノアと星の誕生日 Episode1−1
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"A cozy fantasy story of a witch, her bitter herbs, and the gentle secrets they hold."
<1>
「ノアお嬢さま、レッスンの、お時間です」
クワトロさんが、うしろから、声をかけてきた。
「え、もう、そんな時間?」
わたしは、テーブルのうえの、まんが…いや、テキストを、すばやくとじて返事をした。
「はい。発表会が近いので、ちゃんと、練習をしておきませんと」
クワトロさんは、手帳を見ながら、ほほえむ。
「はーい、わかったわ。すぐいくから」
クワトロさんが会釈をして部屋からでると、わたしは、楽譜を手にして、となりの寝室にはいった。
<ノア、コンニチハ、ゲンキ?>
「わっ」
わたしは、思わず声をだした。
カゴのなかの、オウムのムックが、わたしに、大きな声で話しかけてきた。
きれいな羽を、ぱたぱたと、ひろげている。
愛嬌のある、心地のよい声。
「ああ、ムックは、今日も、元気だね」
わたしは、ムックにほほえむと、鏡のまえで、ブラシを手に、髪をとかした。
でも、お姉ちゃんがいなくなってからは、ムックが、すこし、おとなしくなったように見えた。
<アカリ、アカリ…>
ムックが、つぶやいている。
いまは、海のむこうにいると、聞いたけど…。
わたしは、手をとめて、窓のそとを見た。
ずっと、美しい海がひろがり、その先に、街が見える。
あそこに、いるのだろうか…。
「あれ?」
すこしはなれた白い砂浜から、人があるいてくるのが見えた。
波のほうを見ると、小舟が、とめてあった。
ーあれにのって、きたのだろうか…?
「あら?」
わたしは、視線をもどすと、あの人の姿が見えなかった。
「…?」
やがて、砂浜の岩のうえに、1羽の白い鳥がいるのに、わたしは気づいた。
白く美しい衣をまとっている、大きな鳥。
どこから、きたんだろう…。
すると、一瞬、鳥と目があった気がした。
「え…?」
やがて、白い鳥は翼をひろげ、青い空へと、とんでいった。
☆
「お嬢さま、とっても、お上手です」
大きな声が、部屋に、ひびいた。
わたしは、ピアノを弾き終わると、鍵盤に指さきをおいた。
ぱちぱちと、ピアノの先生が拍手をした。
となりにいる、クワトロさんも、にっこり。
「この短期間で、よく、マスターされました」
先生が、わたしのそばに来て、感心した表情をむけてくる。
「これは、この街で生まれた曲で、かなり高度なスキルを必要とするのですが、さすが、ノアさまです」
クワトロさんが、うなずく。
「ええ、わたしも、むずかしいと思ったけど、すてきな曲で、大好きになりました」
わたしは、楽譜をみながら答える。
メロディーが、ほんとに、やさしげだ。
「でも、この曲には、ちょっとした、エピソードがありまして」
「エピソード?」
先生の言葉に、わたしは、目をひらいた。
「むかし、この街は、夜になると星があふれて、星たちは、空に、とどまったままでした」
先生は、窓のそとを見る。
「それだと、朝が、おとずれない…」
わたしが、つぶやく。
「はい。それで、その星たちを、おやすみさせるために作った曲で、ずっと、街のみんなから愛されています」
クワトロさんが、ほほえむ。
「すてきな、お話。なんだか、本当のような気がします」
わたしは、そういって、楽譜をとじた。
「ええ、これで、レッスンは終了です。おつかれさまでした」
先生は、わたしとクワトロさんに会釈すると、部屋の外に歩いていった。
わたしは、最後に「カノン」を弾いて、よしっとつぶやくと、ピアノからはなれた。
「さ、ちょっと、休もうかな…」
わたしは、となりの部屋にはいると、テーブルに、ティーポットをのせたトレイがおいてあった。
そして、2つのティーカップも、そばにあった。
「あれ、だれのだろう?」
クワトロさんは、部屋に入ってくると、わたしを見る。
「ノアさま」
「?」
「そのハーブティーを、持っていってくれますか?」
クワトロさんが、ティーポットをゆびさす。
わたしは、まばたきをした。
「え、わたしが? だれに?」
「新しい、お手伝いのかたにです」
「新しい…人?」
クワトロさんが、だまって、うなずく。
「ええ。とても、若く真面目なかたで、あそこで、星の記録をしてもらっているのです」
クワトロさんは、屋上の小さなドーム状の建物を見ていった。
「星の記録…?」
わたしは、つぶやいた。
<ハーブ、オイシイ、オイシイ>
ムックが、楽しそうになく。
「わかりました。じゃ、すぐに」
「ありがとうございます。たすかります」
わたしは、トレイを手にすると、ドアをあけた。
「それに、あとで、ちょっとした、サプライズが、あるかもしれませんよ」
「…?」
クワトロさんは、そういうと、ほほえんで、キッチンに入っていく。
わたしは、ムックにウインクしたあと、部屋をでて、屋上につづく階段をのぼった。
「サプライズって、なんだろう…」
海からの、やわらかな風が、ふきこんできた。
ティーカップが、小さくゆれる。
「こぼさないよう、慎重にね…」
わたしは、自分に、つぶやきながら、小さなドームにむかって階段をのぼりきった。
「あれ…」
気がつくと、空には、すでに夜が、おとずれていた。
わたしの目の前には、大きなドアがあった。
「おっきい…」
わたしは、つぶやくと、ここにくるのは、はじめてなのに気づいた。
ずっと使わないまま、カギが、かかってたから…。
わたしは、ゆっくりと2回、ドアをノックした。
「どうぞ」
やがて、なかから、小さな声が、きこえた。
わたしは、ドアをあけて、なかにはいった。
「ハーブティーを、お持ちしました」
小さな部屋のおくの、大きな窓があいていた。
若い男の人が、夜空にむけた望遠鏡を、のぞいていた。
ノートをひろげ、メモをつけている。
ーまちがいない。
さっきの人だ。
「あ、お嬢さまですか?」
男の人は、ふり向いて、わたしに声をだした。
わたしは、ほほえんで、うなずく。
「わざわざ、ありがとうございます。ちょうど、飲みたかったんです」
男の人が、ほほえむ。
わたしは、丸テーブルのうえにトレイをおくと、ハーブティーを、ティーカップにそそいだ。
「あなたは、新しく、お手伝いになったかたですね」
「はい、キースといいます」
わたしは、キースさんに、ティーカップをさしだした。
やわらかな、感じの人だ。
「星の記録を、してもらっていると」
「ええ、ぼくの担当です」
キースさんは、こたえながら、ティーカップをうけとる。
「大きな、望遠鏡…」
わたしは、感心しながら、望遠鏡を見つめた。
「よかったら、ご覧になっては?」
キースさんがいうと、わたしは、ほほえみながら、望遠鏡のファインダーをのぞいた。
「わあ」
わたしは、おどろきの声をだした。
いっぱいの星たちが、夜空のなかで、楽しそうに、きらめいている。
「すごい。こんなに、たくさんの星が…。知らなかった」
わたしがいうと、キースさんが、にこりとする。
「あれ?」
わたしは、ひとつの星座に、目をとめた。
不思議な形をした星座が、星たちのまんなかに、見えた。
「あの星座は…、なんだか、魔女みたい?」
わたしは、キースさんを見る。
「ちょっと、いいですか?」
わたしが横にうごき、キースさんが、ファインダーをのぞく。
「おや」
キースさんが、声をあげる。
「目が、いいんですね。あの星座が、見えるだなんて」
キースさんは、感心した表情で、わたしを見る。
「うん、よく見えますけど。あれは…」
「そう。あの魔女みたいな形をした星座から、夜空の星たちが、生まれたんです」
「え…」
わたしは、信じられなかった。
そんな話は、聞いたことがない。
わたしは、はっとした。
そういえば、さっきの、星の物語に、にてるような…。
「星が、恋人なんですか?」
わたしは、キースさんを見る。
「はは、そうかもしれませんね。ぼくは、ほかのことには、あまり関心がないので」
キースさんは、ゆっくりと、望遠鏡から顔をあげる。
「ほら、見てください。あれは、おとめ座ですね。大きくて、とても、わかりやすいです」
わたしは、ファインダーをのぞく。
どうどうとした女性の形をした星座で、つよい美しさが、つたわってくる。
「純潔な女性です。とても、情熱的な愛を求める」
キースさんは、わたしに、つぶやく。
「わたし、恋なんて、したことないな…」
「はい?」
キースさんが、わたしを見る。
わたしは、あまり、恋の思い出がない。
学校の女の子たちは、よく、その話で、もりあがっているが…。
恋をすれば、大人になるとか、いってたな…。
なるほど…。
「ええ、おとめ座が、見えなくなると、むこうからは、あの星座が、のぼってきます」
わたしは、キースさんが指さす方向に、望遠鏡をむける。
すると、大きな鳥の形をした星座が、見えた。
「白鳥の星座?」
わたしは、はっときづいた。
さっき、見たのは…?
「見たことがあります。たしか、あの星座の一等星って…」
わたしは、ファインダーから目をはなして、キースさんに、たずねる。
「はい、デネブですね。くわしいんですね」
キースさんが、嬉しそうに、こたえる。
わたしは、ほほえむと、キースさんが、小さな石を手にしているのが見えた。
「あれ、その石は…?」
わたしは、石を見ながらたずねた。
「ああ。ぼくの故郷にあった、不思議な石です」
キースさんが、こたえると、わたしは、星空を見た。
夜空の白鳥の星が、つよく光っていた。
「…?」
わたしたちに、なにか伝えようとしている…。
わたしは、なぜか、そんな気がして、からだをおこした。
「…え?」
キースさんが、不思議な表情で、わたしを見た。
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[Pitch / For Producers & Publishers]Title: The Witch's Herbs Aren't So Sweet (魔女のハーブは、あんまり甘くない)Genre: Cozy Fantasy / Slice of Life / WitchcraftLogline: A heartwarming, dialogue-driven fantasy drama about "Noa" a clumsy human girl, and "Akari," a mysterious herbalist witch. Together, they heal the weary hearts of visitors through bittersweet herbal teas and daily magic.
<1ー2に、つづく>
