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昭和の1億円は今の何億円?-昭和、平成令和の億り人を数字で比べてみた

「1億円貯めたら、もう安心」と思っていた。でも、なぜかモヤモヤが消えない。
その感覚、実は正しい。1億円の「実力」は、いつの時代も同じではないからだ。

昭和50年の「1億円」は、今いくら分か

まず、ざっくり計算してみよう。

物価の物差しとして、日本銀行や総務省が公表している消費者物価指数(CPI)を使うと、昭和40年(1965年)の物価は令和7年(2025年)時点の約4.8分の1だった、というデータが日本銀行から公表されている。

昭和50年(1975年)に話を絞ると、ある換算ツールが公的統計をもとに試算した数字では「昭和50年の1万円は物価ベースで現在の約2万1,200円に相当する」。比率は約2.1倍だ。つまり昭和50年に1億円を持っていた人は、物価ベースで今の約2億1,000万円分の購買力を持っていたことになる。

さらに「給料の何年分か」という感覚でもみてみよう。厚生労働省の賃金構造基本統計調査によると、昭和50年の平均月給は約8万円(年収換算で約96万円)だった。1億円はその「約104年分」に相当する。働いて稼ぐ感覚で換算すると、今の年収400万円の人が104年働いた分が昭和の「1億円」だ。

これを令和の現在に当てはめてみると、今の平均年収が約400万円前後なので、「100年分の年収」に匹敵する資産を令和で積み上げようとすれば、単純に4億円が必要になる計算になる。

昭和の億万長者は、今の感覚で言えば「4億人」だったわけだ。

バブル期「平成の1億円」はどう変わったか

では、もう少し記憶に近い平成バブル期はどうだったか。

日本の平均年収は、過去30年でほとんど変わっていないのが実情だ。国税庁の統計によると、1991年(平成3年)の平均年収は約446万円、2021年(令和3年)の平均年収は約443万円と、30年間でほぼ横ばいだった。給与の物差しで見れば、平成初期の1億円と令和の1億円は「年収の何年分か」という感覚がほぼ同じになる。

ところが、平成前半から令和にかけて大きく変わったことがある。「社会保険料と税負担」だ。30年前の社会保険料負担割合は年収の約11.5%だったが、近年では約18.7%まで上昇しているというデータがある。つまり、同じ1,000万円の年収でも、手元に残るお金は30年前より確実に少ない。

さらに、2022年以降に状況は一変した。2020年を100とした総務省の消費者物価指数は、2025年8月時点で112.1まで上昇。わずか5年で物価が1割以上上がり、食料品に限れば指数は126.1とさらに急上昇している。

「30年間、給料は変わらないのに、物価は上がり、税と社保の負担も重くなった」というのが令和の構造だ。

令和の「1億円」が一番しんどい理由

まとめると、令和の億り人がなぜしんどいのか、3点に整理できる。

  • 物価の急騰:2022年以降の物価上昇で、1億円の「実質的な使い道」が見えない速さで目減りしている

  • 賃金の停滞:平均年収が30年前と変わらず、1億円を積み上げるための「元手」が増えていない

  • 手取りの減少:社会保険料の増加で、同じ年収でも可処分所得が30年前より小さい

実際の生活シミュレーションを見ても、2人以上世帯が1億円だけで暮らすと、年金なしの場合は約20〜27年で資産が尽きる計算になる。65歳から95歳までの30年間で使い切ることを想定すれば、毎月取り崩せるのは約27.8万円にすぎない(2024年の総務省家計調査をもとにした試算)。

「人生100年時代」に65歳でリタイアして1億円を使い切ろうとすると、100歳を超えたときに資産が尽きる可能性がある。1億円は「ゴール」ではなく、「出発点の選択肢」になりつつある。

野村総合研究所の2023年調査では、富裕層(純金融資産1億円以上)+超富裕層の合計は165.3万世帯。日本の全世帯の約2.9%に過ぎない。到達すること自体は依然として難しい。だが同時に、「1億円あれば一生安泰」という昭和的な感覚は、もはや令和には通用しない。

これが、令和の億り人が「達成したのに安心できない」理由の正体だ。

今日の1%:「自分の1億円の実力」を5分で計算する

では、今日ひとつだけやってほしいことがある。

電卓(スマホの計算機アプリでOK)を開いて、次の計算をしてみよう。

「今の自分の目標資産額 ÷ 現在の世帯年収 = 何年分か」

たとえば目標が1億円で、世帯年収が600万円なら、約16.7年分。昭和50年に96万円の年収で1億円を目指すと約104年分だった。

この「年収何年分か」という数字こそが、時代を超えて比べられる「お金の実力」の物差しだ。自分の目標が昭和の億万長者と比べて「重い」のか「軽い」のか、感覚を持つだけで、資産形成の解像度がぐっと上がる。

計算してみて、もし「うわ、まだまだだ」と感じたとしても落ち込まないでほしい。「1億円で十分だった時代」は確かに存在したし、同時に「正しい目標設定さえできれば、今からでも間に合う」という事実も変わらない。

令和の自分に合った「本当のゴール額」の計算式

昭和・平成・令和の比較でわかったことは、「1億円」という数字は時代と生活設計によって意味が全然違う、ということだ。ここからは、令和の今の自分に合ったゴール額を算出するための具体的な手順と、そこへ向けての実行プランを紹介する。

ステップ1:「自分の月の実需」を正確に出す(所要時間:約10分)

まず、毎月の実際の支出を3項目に分けてメモする。

  1. 固定費(家賃または住宅ローン・保険・通信費など)

  2. 変動費(食費・光熱費・交際費など)

  3. 将来の一時費用の積み立て(車の買い替え・医療費・旅行など、年間で割ったもの)

この3つを合算したものが「月の実需」。ここに「2%のインフレ率」を年間で加算したものが、10年後・20年後の月の実需の目安になる。

よくある失敗1「月25万あれば暮らせると思っていた」
実態として、60代以降は医療費と介護費用が加算されやすい。厚労省の調査をもとにした試算では、生涯の医療・介護費用は1人あたり数百万〜1,000万円超に上ることもある。老後の生活費に「健康関連コスト枠」を別立てで持っておくことが重要だ。

よくある失敗2「年金があるから補える」
令和7年度の標準的な夫婦2人分の厚生年金月額は約23.2万円(日本年金機構公表値)。これは「モデル世帯」の数字であり、実際の受取額は個人の年金加入歴によって大きく異なる。「ねんきん定期便」で実額を確認する前に年金を計算式に組み込むのは危険だ。

ステップ2:「実質ゴール額」の計算式

自分の月の実需額が算出できたら、次の式でゴール額を計算する。

「月の実需額 × 12ヶ月 × (100歳 − リタイア希望年齢)× インフレ補正係数」

インフレ補正係数は、現在の物価上昇トレンドが年2%で続くと仮定した場合の簡易係数として「1.2〜1.4」を使う。リタイア年齢が60歳なら40年間の運用期間に相当し、係数は1.35前後を目安にするとよい。

例:月の実需が28万円、60歳リタイア希望の場合
28万円 × 12 × 40年 × 1.35 = 約1億8,000万円

この試算だと、年金を受け取ることを考慮しても「1.5億〜2億円」がひとつの現実的なゴールラインになる。1億円が「十分な安心」だった昭和の感覚との差が、ここで数字として現れる。

よくある失敗3「目標額が出たので逆算して月の積立額を計算したが、無理すぎて続かなかった」
目標額から逆算した月積立額が収入の20%を超えるようなら、リタイア年齢を65〜67歳に後ろ倒しするか、運用利回りの仮定(3〜5%)を加えて再計算するのが現実的だ。「いつまでに1億円」ではなく「何歳までに生活が成り立つ設計か」を軸にすると、計画が長続きしやすい。

ステップ3:「今やるならこの順番」実行プラン

以下の順番で、今週中に動くことをすすめる。

  1. ねんきん定期便アプリ(またはねんきんネット)で、自分の年金受取見込み額を確認する(5分)

  2. 家計簿アプリ(マネーフォワードMEなど)の直近3ヶ月の平均支出を見て「月の実需」を出す(10分)

  3. 上のステップ2の式に自分の数字を当てはめて「実質ゴール額」を計算する(5分)

  4. 現在の資産とゴール額の差を「残り投資年数」で割って、月の積立目標額を出す(3分)

  5. NISAの年間非課税枠(2026年時点で年360万円が上限)をフル活用できているか確認する(5分)

この5ステップは計30分以内で完結できる。難しい投資の知識は不要だ。

チェックリスト:自分の「令和ゴール設計」は正しいか

  • 月の実需を「現在の支出」ではなく「老後の想定支出」で計算しているか

  • 年金額を「モデル世帯の数字」ではなく「自分の実額」で使っているか

  • インフレ・医療費リスクを計算式に組み込んでいるか

  • NISA・iDeCoの非課税メリットを最大化できているか

  • ゴール額を「1億円」に固定せず、自分の生活設計から逆算しているか

今日から動けるひとことまとめ

昭和の人は「1億円」という数字が時代の安心線だった。令和の私たちには、自分の生活設計から逆算した「自分専用のゴール額」が必要だ。それは1億円かもしれないし、1.5億円や2億円かもしれない。でも、数字が大きいことは「怖いこと」じゃない。正確な地図を持つことは、むしろいちばんの安心だ。

まだ積み上げの途中でも、正しい目標地点さえわかれば、今日の1%の行動が確実に意味を持ち始める。

昭和の億万長者より、令和の1億円を「知って積み上げている人」のほうが、ずっと賢い時代を生きている。

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