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尾形了斎覚え書

『尾形了斎覚え書』

初出は「新潮」[1917(大正6)年]。短編集「羅生門」[阿蘭陀書房、1917(大正6)年]に収録。「伊予国宇和郡」の医師「尾形了斎」の、「切支丹宗門の宗徒」に関する公儀への言上書、書簡体という形式で描かれている。

石牟礼道子『完本 春の城』があまりにも長いので箸休め的に芥川のキリシタン物。芥川では箸休めにもならんが。キリシタンの女が子供が危篤状態なので日本の医者に何とか救ってくれとそのためには「転び」ますからとキリストの十字架を踏み絵したが娘は助からなかった。それでせっかく転んだのになんということかとまたキリシタンに戻ってしまったという医者の告発なんだが、面白いエピソードだと思う。母の子供を思う気持ちはキリスト教も医学も関係なく、ただ戻ってしまったということはキリストに救われたいと思ったのか?今更という感じだが。

死んだ娘が生き返ったというのが謎だった。神はこの女の信仰を考えてのことではあるまい。この不信心者に神の力を示したかっただけなのか?医者に対する当てつけか?堂々巡りしてしまうが、芥川がこれを書いたのが一番の謎だった。

医者に対する信仰心のなさが問題なのか?信仰心というより愛のなさだな。医者ならば宗派を超えて娘を救うのが使命だろと思うのだ。医者として失格だろう。その幻視が子供の復活劇というストーリーなのではないか?医者はその後キリスト教徒たちに襲撃されるのである。そして、救いを幕府に求めた。

もしかしたら森鴎外批判なのかもしれない。それまで尊敬していた作家なのに権力に寝返ってとか?考えすぎか?

この逆のパターンが『おしの』だった。



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