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【医薬品経腸栄養剤の適正使用指針とは?】イノラス・エネーボ・エンシュアの保険適用ルール変更まとめ

2026年(令和8年)の診療報酬改定により、医薬品経腸栄養剤(イノラス、エネーボ、エンシュアなど)の経口的栄養補助(ONS)に関する保険給付ルールが厳格化されました。

特に、入院外患者へ投薬する場合、「手術後の患者」や「経管栄養患者」以外については、

「必要な栄養を食事により摂取することが困難な患者(その他これに準ずる場合)」
「医師が特に医療上必要があると判断した患者」

として、医師が具体的理由を処方箋および診療報酬明細書へ記載することが必須となりました。

これを受け、日本栄養治療学会をはじめとする4学会は合同で「医薬品経腸栄養剤適正使用指針」を公表しています。

本記事では、現場で判断に迷いやすい

  • 「必要な栄養を食事により摂取することが困難な患者」の具体例

  • 処方後に求められるモニタリングと再評価

について、実務目線でわかりやすく整理します。


「必要な栄養を食事により摂取することが困難な患者」とは?

今回の改定では、単に「食欲が低下している」という理由だけでは、保険診療上の処方根拠として不十分になりました。

指針では、医学的・社会的背景を踏まえ、以下のようなケースで医薬品経腸栄養剤の使用が考慮されるとしています。


1.低栄養と診断され、食事摂取が不十分な患者

GLIM基準などの妥当な診断基準を用いて、医学的に「低栄養」と診断された患者が対象です。

標準的な栄養スクリーニングを行ったうえで、食事指導のみでは必要栄養量の確保が困難と判断された場合、その経緯の詳記が推奨されています。

「低栄養であること」と「通常の食事では補えないこと」の両方が重要なポイントになります。


2.がん患者

がん患者では、栄養障害が治療効果やQOL、生存期間にも影響することが知られています。

病状によっては、患者自身による食品選択や栄養管理が難しいケースもあり、病態を詳記したうえで栄養介入が必要と判断された場合に処方されます。

特に、食欲低下や悪液質を伴う症例では、実臨床で判断に悩む場面も多くなると考えられます。


3.摂食嚥下機能障害患者

「食べる」「飲み込む」機能に障害があり、通常の食事のみでは十分な栄養摂取が困難な患者です。

通常食で必要栄養量を満たせないと判断した経緯を記載することが推奨されています。

嚥下機能評価や食形態調整とあわせて、栄養管理全体の中で位置づける視点が重要になります。


4.栄養組成の厳密な管理が必要な患者

医薬品経腸栄養剤は、市販食品と比較して栄養成分量が厳格に管理されています。

そのため、以下のように、詳細な栄養管理が必要な患者に使用されます。

  • サルコペニア・フレイルを伴う慢性呼吸器疾患患者

  • 悪液質や慢性炎症があり、食事改善のみでは対応困難な患者

  • 炎症性腸疾患や膵疾患など、消化吸収障害を伴う患者

  • 摂食障害や多臓器不全患者

医薬品経腸栄養剤の処方時には、疾患・病態に加え、食事指導のみでは栄養管理が不十分である理由などを詳記することが推奨されています。

この場合も、「なぜ一般食品や食事指導のみでは不十分なのか」を記録する必要があります。


5.添付文書上、慎重な管理が必要な患者

医薬品経腸栄養剤には、用法・用量や病態管理に注意が必要な患者群があります。

例えば、

  • 重症心不全患者:しばしば脂肪吸収障害 がみられる。

  • 糖代謝異常患者:高血糖になるおそれがある。

  • 水分管理に注意が必要な患者:脱水状態が悪化するおそれがある。

  • 小児:肝機能・腎機能が未発達

  • 高齢者:一般に生理機能が低下

  • 妊婦、授乳婦:治療上の有益性

などです。

対象となる疾患や病態に加え、食事指導だけでは注意事項の遵守やリスク管理が不十分であると判断した理由を詳しく記載することが推奨されています。

これらの患者では、食品によって病態悪化リスクが高まる可能性もあり、医薬品としての管理が求められます。

医師・薬剤師による継続的な評価と指導が重要になります。


6.社会的・経済的背景により食品確保が困難な患者

今回の指針では、医学的理由だけでなく、患者を取り巻く社会的背景にも言及されています。

例えば、

  • 経済的困窮

  • 老々介護

  • 独居高齢者

  • 認知症患者

  • 過疎地・離島居住

などにより、適切な食品や栄養補助食品を継続的に選択・購入することが困難なケースです。

患者本人や家族だけでは対応困難と医師が判断した場合、処方対象となる可能性があります。

ここは実臨床でも見落とされやすく、今回の指針で特に注目されたポイントの一つです。


処方して終わりではない|モニタリングと再評価の重要性

今回の指針で強調されているのが、**「処方後の継続的な評価」**です。

医薬品経腸栄養剤は、単に処方するだけではなく、継続的なモニタリングを前提として使用する必要があります。


栄養ケアプロセスの4段階

栄養療法は、以下の4段階で構成されます。

1.栄養状態の評価
2.栄養診断
3.栄養介入
4.栄養モニタリング・再評価

今回の改定では、特に「介入後の再評価」の重要性がより明確になった印象があります。


服薬アドヒアランスの確認

ONSでは、「処方したが実際には飲めていない」というケースも少なくありません。

特に、

  • 味が合わない

  • 飲み切れない

  • 飽きてしまう

といった理由でアドヒアランスが低下することがあります。

そのため、患者の希望や嗜好を確認しながら、必要に応じて種類やフレーバー変更を検討することが推奨されています。

在庫管理の面では、多種類のフレーバー対応はなかなか悩ましい問題ですね。


残薬対応では多職種連携が重要

在宅では、未開封の経腸栄養剤が大量に残っているケースもあります。

残薬が確認された場合には、

  • 処方内容の見直し

  • 飲むタイミングの再指導

  • 患者背景の再評価

などを、医師・薬剤師を中心に連携して行うことが求められます。

「処方したか」ではなく、「実際に患者の栄養改善につながっているか」が重要になります。


まとめ|2026年改定で求められる“適正使用”とは

2026年診療報酬改定により、医薬品経腸栄養剤は「なんとなく処方するもの」ではなくなりました。

今後は、

  • 明確な医学的根拠

  • 社会的背景の評価

  • 処方理由の記録

  • 継続的モニタリング

まで含めた「適正使用」が求められます。

特に薬局・在宅医療の現場では、

  • 処方理由の確認

  • アドヒアランス評価

  • 残薬確認

  • 多職種連携

の重要性がこれまで以上に高まる可能性があります。

今回の指針を正しく理解しておくことは、
今後のレセプト請求や栄養管理実務において非常に重要になりそうです。


出典:医薬品経腸栄養剤適正使用指針
栄養保持を目的とした医薬品の保険給付の適正化
半消化態栄養剤(摂食嚥下機能障害)の算定について


最後までお読みいただきありがとうございます。

エンシュアやイノラスの処方では、6月から処方理由の記載が必要となるため、今回の指針はぜひ原文にも目を通していただきたいところです。
要約記事よりも、より詳細な内容を確認できます。

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