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月庭園の秘密_王様の過去

皆様、こんにちは。
アップルティーでございます。

まずは、先日の地震かなり揺れましたね。
私の住む秋田県もかなり揺れましたが、
幸いにも特に大きな被害も無く、
元気に過ごしております。

週末にも、また大きい地震が起こり
少し不安のある毎日ですが、なんとか
やってます。

そんなこんなで、先週はとても
大変な一週間でしたが、
今週もなんとかBL短編小説が
出来上がりました。

今回の舞台は、中世のヨーロッパ風な
王室風な感じにしてみました。
あくまで、雰囲気としてお楽しみください。
初めてのファンタジーに、挑戦いたしますよ。

夜にだけ花が開く不思議な庭園を舞台に
王様に即位する前の王子様ノエルと、
庭園を管理する庭師セラのお話を書いてみました。

それでは、どうぞ!!!


月庭園の秘密_王様の過去



 月庭園は、夜になると静かに目を覚ます。

 昼の庭は、王城の奥にある
   古い庭園にすぎない。

 白い石畳、刈り込まれた低木、
 季節ごとに植え替えられる花。

 王族の散策用に残された、過去の名残——
 誰もがそう認識している。


   だが月が昇ると、庭の空気は変わる。

 夜だけ咲く花が、花開くのだ。

 夜露を含んだ花弁は音もなく開き、
 月光を受けて淡く輪郭を浮かび上がらせる。

セラは、その庭を管理する庭師だった。

 夜に咲く花は気難しい。
 触れすぎれば弱り、放置すれば形を崩す。
 理由は分からない。
 ただ、昔からそうだと教えられてきた。
 月庭園を世話する者は、余計なことを考えない。
 それが暗黙の掟だった。


 最初にノエルが庭を訪れた夜のことを、セラは忘れない。
 ノエルは、もうすぐ王位に即位する王子様だった。


 「……ここに来ると、少し眠れる気がして」


 王子はそう言って、ためらいがちに門をくぐった。
 月はまだ細く、夜は深かった。

「夜露で足元が滑ります。お気をつけください」

 そう告げると、ノエルは小さく笑った。


「君が、夜の庭師か」

「はい。花の様子を見ています」

 それだけの会話だった。
 けれど、その夜、ノエルは長く庭に留まった。
 特に、話をするわけでもない。


「すこし、横に座っててくれるか?」


 ノエルとセラは横に並んで座って、花を眺めていた。

 とても静かな夜だった。




 それから王子は、何度も月庭園を訪れるようになった。


 月が欠ける夜。
 満ちていく夜。
 眠れぬ夜。



 理由は語られなかったが、セラには分かった。
 ノエルは、ここでだけ呼吸ができるのだ

「不思議だ。」

 ある夜、ノエルが庭を見渡して言った。

「ここにいると、何も考えなくていい」


 花が、かすかに揺れた。
 セラは答えなかった。

 何度か夜を重ねるうちに、
 二人は少し話をするようになった。
 石縁に腰を下ろし、言葉少なに。

「昼の僕は、ちゃんと王子でいられているかな」

 ぽつりと、ノエルが言う。

「皆、そう言います」

「……君は?」

 その問いに、セラは少しだけ迷った。


「夜のほうが……話しやすいです」

 ノエルは、小さく息を吐いた。

「よかった」


 それだけで、満たされたような声だった。

 その夜、月は高く、澄んでいた。


今日も、王子は月庭園にやって来た。
風の強い夜だった。
 花弁が散りやすく、セラはいつもより注意深く庭を見ていた。


「今日は、あまり花に近づかないでください」

「分かった」


 ノエルは頷いたが、足元の石畳が夜露で滑った。


「あ——」


 よろめいた瞬間、
 セラは反射的に手を伸ばした。

 指先が、触れる。
 手のひらが、重なる。


——その瞬間、月の光が、強まった。


 雲が流れたわけでもない。
 月が動いたわけでもない。

 ただ、庭全体を包む光が、ひときわ澄み、濃くなる。


「……っ」


 ノエルが息を呑んだ。

 花も、石畳も、二人の影も、
 月光の中でくっきりと浮かび上がる。

 まるで夜そのものが、
 何かを見届けたかのように。

 やがて光は、元の静けさへ戻った。

 二人は、まだ手を離していなかった。


「今の……」


 ノエルが言いかけて、言葉を探す。


「……月の光は、あなたの感情で、よく変わります」


 セラはそう答えた。

 嘘ではなかった。
 けれど、胸の奥がひどく痛んだ。

 ノエルは、ゆっくりと手を離した。


「綺麗だった」


 それだけ言って、微笑んだ。

 セラは、その笑顔を見て思う。
 ——この夜は、いつか必ず、失われる。


 それから間もなく、ノエルは王となり、
 政略によって選ばれた令嬢と結婚した。
 穏やかで、聡明な王妃だった。
 国は安定し、人々は新しい王を歓迎した。

 王となったノエルは、月庭園を訪れなくなった。

 忙しさのせいでも、禁じられたからでもない。
 ただ、必要を感じなくなったのだ。

 結婚式の夜。
 城は祝福の灯りに満ち、月は高く空にあった。

 王は寝所へ向かう途中、ふと立ち止まった。

 理由は分からない。
 胸の奥が、わずかに疼いた。

 何かを、思い出しかけた気がした。
 だが、その形は掴めなかった。

窓から、月の光が溢れていた。

「……気のせいだな」
 そう呟き、王は歩き出した。



 一方、月庭園では。

 セラが一人、夜の花の世話をしていた。
今夜の月は、静かに冴えている。

 かつて一度だけ、
 ひどく強くなった夜の光を思い出しながら。

月は何も語らない。
 それでも、確かにそこにある。

 失われた感情を、
 照らし続けるように。


月庭園の秘密_王様の過去

物語の解説_

いかがでしたでしょうか。
初めてのファンタジー作品に
挑戦してみたのですが、我ながら静かで
美しい物語に仕上がったように感じています。

このお話のアイデアは、
Gちゃんに考えていただいたネタでした。
その瞬間、思わず「美しすぎる……」
声に出してしまったほど、この世界観に
強く惹かれたのを覚えています。

そして今回は、あえてバッドエンドを選びました。
とはいえ、誰かが不幸になる結末ではありません。
ただ、二人は結ばれなかった——それだけのお話です。

ここからは、物語の設定について
少しだけ解説させてください。

セラが管理していた月庭園は、
代々、王に即位する前の王子たち
無意識のうちに訪れる場所でした。
月の光には、王であるには重すぎる感情や迷い、
そして私的な記憶を静かに吸収し、
裁断する力
があるとされています。

それはノエルに限ったことではありません。
この国の歴代の王たちもまた、
皆この月の裁断を受けてきました。
だからこそ彼らは、迷わず、揺らがず、
優れた王
であり続けることができたのです。

あの夜、セラが見た強い月の光は、
祝福でも警告でもありませんでした。
月はただ、庭園で生まれた感情と記憶を含め、
ノエルの中に芽生えかけていた
“王であるには不要なもの”をすべて吸い取ったのです。

セラが悟ったのは、禁じられた恋を
してしまったからではありません。
この人もまた、過去の王たちと同じ道を
辿るのだという、静かな理解でした。

月は、何も奪いません。
ただ、王という存在を完成させるだけなのです。


月を見て”何か”を思い出すノエル

最後に_

物語に出てきた国には、王になる者は皆、
月に裁断されるという伝説があります。

けれど、これは決して遠い世界だけの
話ではないのかもしれません。

私たちもまた、知らず知らずのうちに、
「大人になるために」
「社会で生きていくために」
「正しくあるために」

いくつもの感情を置き去りにしてきました。

誰か一人だけを強く想う気持ち。
理由のない不安。
名前をつけられないときめき。

それらは、王になるには
不要なものだったのかもしれません。
けれど、人として生きるには、
確かに確かに、存在していたものです。

ノエルが月の裁断を受けたように、
私たちもまた、人生のどこかで
月の光を浴びているのだと思います。
その光は、祝福でも罰でもなく、
ただ静かに作用
します。

失ったことに気づかないまま、
前に進めてしまうこともあるでしょう。

それでも、月を見上げたとき、
理由もなく胸が少しだけ痛む夜があるなら。
それは、かつて確かに存在した感情が、
まだどこかで光を受けている証なのかもしれません。

月は、何も語りません。
けれど、忘れられたものを、
否定することもありません。

この物語が、あなたの中にある
“月に預けてきた感情”
そっと思い出すきっかけになれたなら、
それ以上に嬉しいことはありません。

少し長くなってしまいましたが、
最後まで読んでいただき
ありがとうございました。

また来週最後の月シリーズ
投稿しますね~~~♪
まったね~~~♪


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