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なぜピアニストは一生ショパンを弾くのか

ピアノを始めたばかりの子どもが弾くショパン。

音楽大学を目指す学生が弾くショパン。

国際コンクールに挑む若手ピアニストが弾くショパン。

そして世界的な巨匠が晩年に選ぶのも、やはりショパン。

なぜなのだろう。

なぜピアニストは、一生ショパンを弾き続けるのだろうか。

子どもの頃に出会うショパン

多くのピアニストにとって、ショパンとの出会いは早い。

ワルツ。

前奏曲。

ノクターン。

比較的短い作品も多く、若い学習者でも挑戦できる曲がある。

初めてショパンを弾いた日のことを覚えている人も少なくない。

それまで練習曲ばかりだった世界に、

突然「歌うピアノ」が現れる。

ショパンの音楽には、人の声のような旋律がある。

だから多くの人が最初の一曲で心をつかまれてしまう。

成長するほど難しくなる

ところが不思議なことが起こる。

弾けたと思ったショパンが、

年齢を重ねるほど難しくなるのだ。

10代で弾いたノクターン。

20代で弾くノクターン。

50代で弾くノクターン。

同じ楽譜なのに、まるで違う曲に見える。

音は書かれている。

しかし、その音の間にある感情までは書かれていない。

だから人生経験を積むほど、

ショパンは新しい表情を見せる。

技巧だけでは届かない

ショパンは超絶技巧の作曲家としても知られている。

エチュード。

スケルツォ。

バラード。

どれも高度な技術を要求する。

しかしショパンの難しさは、指が速く動くことではない。

本当に難しいのは、

「歌わせること」

である。

大きな音を出すだけなら簡単だ。

速く弾くことも練習でできる。

しかし、聴く人の心に語りかけるように弾くことは難しい。

ショパンはそこを容赦なく求めてくる。

一生かけても終わらない作曲家

あるピアニストはこう言った。

「ショパンは10歳でも弾けるし、80歳になっても学ぶことがある。」

まさにその通りだろう。

ショパンの作品には終わりがない。

若い頃は技巧を学ぶ。

中年になると構成の美しさに気付く。

年を重ねると人生の悲しみや喜びが見えてくる。

同じ曲なのに、

自分が変わるたびに音楽も変わる。

だから何度でも戻ってきたくなる。

ショパンは人生の鏡

バッハは建築のようだと言われる。

ベートーヴェンは闘いだと言われる。

ではショパンは何だろう。

おそらく、

人生そのものだ。

恋をした時。

失恋した時。

夢を追いかけている時。

何かを失った時。

その時々で違う顔を見せてくれる。

だからショパンは飽きない。

いや、飽きるどころか年齢を重ねるほど深くなる。

なぜピアニストは一生ショパンを弾くのか。

それはショパンの作品が難しいからではない。

有名だからでもない。

そこに人生が映るからだ。

若い頃に弾いたショパンと、

年を重ねてから弾くショパンは違う。

変わったのは楽譜ではない。

弾く人自身である。

だからピアニストたちは何度もショパンへ戻ってくる。

そして人生の最後まで、新しいショパンを発見し続けるのである。

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ヒカル 最後まで読んでいただき、ありがとうございます。 音楽には人生を少し豊かにしてくれる力があると信じています。 もし記事を楽しんでいただけたら、お気持ちだけでも応援していただけると励みになります。 これからもクラシックからポップスまで、心に残る音楽や物語をお届けしていきます。