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病院に救急搬送される -気まぐれな日誌(2026年4月2日,4月3日記)-

2026/4/3 記

 4月2日(木曜日),私は今,病院のベッドに寝ています。
 ベッドの左横では姉が椅子に座って,転寝(うたたね)をしています。
 姉の後ろには窓があり,外を見るともう夕方。小雨が降っているようです。

 今朝,私は自宅のマンションから救急車で,ここに搬送されてきました。


朝のできごと 

 早朝,ベッドの中で重苦しい感覚とともに目が覚めました。
 次第に意識がはっきりしてくると,心臓のあたりから背中にかけて,何かに圧迫されるような痛みがありました。
 動悸もします。
 これは心臓の持病の良くない兆候です。

 すぐに枕元においてある今日の分の心臓の薬を飲みました。いつも枕元に心臓の薬とペットボトルの水を置いてあるのです。

 薬を飲み,仰向けになって身体から力を抜いて,できるだけリラックスするようにしました。
 心臓のある辺りを左手でそっと押さえました。胸の柔らかい膨らみが感じられました。 

 『お願いだからおさまって。』

そう心の中で祈りました。
 窓のカーテンがうっすらと陽の光を透過し,明るくなり始めています。

 目をつぶって眠るように努力をしましたが,そうするとかえって意識がはっきりとしてしまいます。

 枕元にある携帯を手に取りました。何かあったときには姉に知らせてよいことになっています。このまま痛みがひどくなってきたら,姉にコールしようと手に持ったままにしました。

 少し眠れたようです。気がついたら,携帯は手の中から落ち,枕の横にありました。カーテンの隙間から陽が漏れています。携帯を引き寄せて見ると,7時2分。


心細さと恐怖

 そろそろ起きて,勤務先に行かなければ。
 本当なら休みたいところですが,先週,軽井沢に旅行するために有休を2日もとったばかりです。休むわけにもいきません。

 起きなければ。そう思うのですが,体がだるく,なかなかベッドから抜け出すことができません。

 何とかベッドから起き,ふらふらしながら洗面所に向かいます。少し歩いただけなのに「はあはあ」いっています。だるいのは心臓からの血流がよくないからのようです。

 洗面所からもう一度ベッドに戻り,倒れこみました。立っているのが辛くてしかたがなかったのです。

 枕の横に置きっぱなしになっていた携帯をまた手に持ちました。
 これが私と姉をつなぐ命の糸です。

 痛みと動悸が一向におさまりません。
 不安と恐怖が襲ってきました。
 こうなるともう私の心はだめになります。


姉に電話する

 姉には迷惑をかけたくない。でも,もう無理。
 もしも手遅れになったら取り返しがつかない。
 私はベッドの中で姉に電話をかけました。

 しばらく呼び出し音が続きました。

 『どうしたの冬。』

姉の声です。私の女神です。
 私は「はあはあ」と息をしながら

『ごめんなさい。胸が苦しいの。』

と伝えました。

『ええっ!だいじょうぶ?今,家でしょ。すぐ行くからね。救急車,呼ぶ?』

『うん。』

半泣きになりそうでしたが,心臓に負担をかけてはいけないので,できるだけ心を穏やかに保とうとしました。

『がんばるのよ。すぐ行くからね。あと管理人さんに見にいってもらうね。』

私は呼吸をしながら

『わかった。会社にも』

言いかけたとたん,姉が私をさえぎりました。

『しゃべっちゃだめ。会社にも連絡しておくから。もう少しの辛抱だからね。がんばって。すぐ行くよ。』

 そうは言っても,姉の家からここまでは小一時間はかかります。

 遂に,とうとう,姉に緊急の電話をかけてしまいました。初めてのことです。おまけに救急車まで。

 私はベッドに仰向けになり,荒い息をしていました。
 もう少ししたらお姉ちゃんが来てくれる。そう思うと不安が心持ち軽くなりました。

 

病院に搬送される

 それからほどなくして,玄関のチャイムがなり,ドアを開ける音がしました。管理人さんです。どこかを定年退職された60過ぎの男の方です。寝室のドアは開けっ放しだったので,寝室に入ってきました。落ち着かない様子でした。

 『お姉さまから電話があって来ました。大丈夫ですか?』

私はあいからわらず,はあはあと息をしていました。

『すみません。』

『今,救急車が来ますからね。ちょっと待っててくださいね。』

 管理人さんはそう言うと,また外にでていきました。

 やがて,管理人さんといっしょに救急隊員の方が数名担架をもって,私の寝室の中に入ってきました。
 女性の隊員の方もいて,いくつか病状について質問されました。それに答え,ベッドの横のナイトテーブルの引き出しから,お薬手帳とかかりつけ医や姉の連絡先を書いた紙を取り出して,お渡ししました。

 私は担架で救急車まで運ばれ,そのまま救急病院へと搬送されました。
 こういうときのために,小さめの旅行鞄に簡単な着替えなど身の回りの必要なものと予備のPCを入れてあり,それもいっしょに運んでもらいました。

 救急車に乗るのは生まれて初めてのことでした。


 

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 *)本作品の登場人物,団体等は実在のものと関係ありません。
挿絵は Adobe Firefly + Google Gemini 3.1 を使って作成したイメージ画像です。


© Copyright 冬魅 Aequus, April, 3, 2026.
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