【自選】詩集10編
「インタビュー」
すべての声に
耳を塞ぎ
誰も知らない
森の奥処へ
降り立つ
深き静寂の中
微かに響く
フクロウの鳴き声
それが
本当の自分の声だ
ようやく
インタビューできる
自分自身に
「ワイン蔵」
女と過ごしたひととき
その記憶の醸造
それは時の流れの後で
静かに横たえられ
幽かに波打つものだが
それこそはまさに
極上のワインなのだ。
「スタンディングミラー」
男はいつでも
愛する女の傍らに立つ
古ぼけた姿見となり
移ろう面影に
寄り添っている。
「昏倒」
シーツに包まりながら
お前は昏倒する。
瞳孔が開き
目が宙を泳ぐ
微笑む口元
お前は逢っている。
俺の知らない場所で
俺の知らない誰かと
夜毎、男は
豪雨に紛れこみながら
影を尾行する。
「待ち人レストラン」
待ち人レストランは
いつも予約でいっぱい
懐かしい面影との
叶わない約束があれば
あなただけの
指定席に案内される
渡しそびれた手紙を
懐にしのばせ
隅のテーブルに座り
静かに待つ
——そっと
目の前の
椅子が引かれるのを
「夜鷹」
宇宙とは
比喩の王宮である
かつての帝国は
滅び去り
沈黙だけが薫る
詩人とは
宝石を盗む
夜鷹である
「リビドー(性欲)」
お前を
裸にして
毟った花びらを
掌いっぱいに
投げつける
木の陰で
子熊が
啜り泣く
そっと
肩を抱き寄せ
耳元で囁く
子熊が
泣き止むまで
一晩中
「シーラカンス」
深海魚の瞳は
幽かな光を集め
4億年もの間
待ち続けている
あなたの面影を
その瞳の中で
「螺旋」
音楽家の魂が
鎮魂歌に安らぐように
花に埋もれた
棺ではなく
執筆の中でこそ
我が魂は憩う
終わりなき螺旋の中で
亡霊は
吼え続けるだろう
「しぃ。」
ねぇ、しぃーだよ
女の子は
ママの言いつけと
パパにはないしょと
おませなポーズと
ちいさなウソで
できている。
おまけに
好きな男の子には
「ふん」って言う
それでも
ぜんぶバレてる。
——しぃ。
他にも、機会があれば、
「ビート詩10選」や「エロ詩10選」もチョイスしたい。
詩の投稿をやめて、またボーダー心理学の記事を再開したい。
