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眼科症例報告:肉芽病変を伴うSCEEDsの症例

はじめに

 角膜疾患に対する治療でやりがちな失敗として、点眼回数と種類が増えすぎてしまうということがあります。点眼液自体が角膜障害を引き起こすこともありますし、油層を中心に涙液層を破壊することにもつながります。今回の症例は点眼回数を少なくすることにより状態が改善したSCEEDsの症例を紹介します。

角膜の構造:角膜の健全性維持には涙液層が重要である

初診時稟告

ゴールデンレトリバー、12歳9ヵ月、オス
来院3週間前、左目の目ヤニが多く、流涙が多かった。
1週間前、近位受診。左眼に対してレボフロキサシン点眼液1日3回、アセチルシステイン点眼液1日3回、ヒアルロン酸点眼液1日3回の処方を受けた。
4日前、近位受診。改善がみられない。左眼に対してアセチルシステイン点眼液1日3回、ヒアルロン酸点眼液1日3回、自己血清点眼液(ゲンタマイシン点眼液含有)1日3回の処方を受けた。
当院来院時には悪化し、赤いものが盛り上がってきているとのこと。

初診時検査所見

左眼の角膜外側では肉芽様の隆起がみられ、周囲の角膜は混濁浮腫がみられた。また、肉芽周囲の角膜上皮はフラップ状を形成し、綿棒による掻爬で容易に剥がれた。塗抹鏡検ではバクテリアは検出されなかった。

左眼角膜外側には肉芽を伴う角膜浮腫混濁がみられた
角膜の赤色部は盛り上がり肉芽様を呈していた
左眼フルオレセイン染色試験では肉芽部周囲で陽性となった

初診時診断

>診断
疑い
左眼 SCEEDs、角膜炎

>視機能
光覚 障害なし/障害なし
形態覚 障害なし/軽度の障害あり

>加療計画
左眼 SCEEDs、角膜炎:左眼の肉芽を伴う上皮の接着不全からSCEEDsが強く疑われる。塗抹鏡検ではバクテリアが検出されないことから抗菌治療は減薬が可能である。新生血管が豊富であり治癒が進んでいると考えられる。角膜への負担を軽減するために防腐剤フリーの点眼液への変更とバンデージコンタクトレンズの装用を開始した。また、綿棒による掻爬を実施した。掻爬により赤色肉芽は脱落した。リスクの少ないSCEEDsの治療を実施するが、強い新生血管は免疫介在性角膜炎の所見とも疑われる。次回診察時に治療の方向性を見定める。

>治療
左眼 綿棒掻爬
左眼 メニわん コーニアルバンデージわん Lサイズ
左眼 ガチフロ1日1回
左眼 ソフトサンティア1日4回

綿棒の掻爬によりフルオレセイン陽性部位は拡大した
バンデージコンタクトレンズの装用を開始した

再診 2週間後

>検査所見
コンタクトレンズは脱落していなかった。角膜の浮腫混濁は改善し、フルオレセイン陽性部は縮小していた。
加療計画
SCEEDsは治癒起点に入ったと判断された。コンタクトレンズを入れ替え、点眼を継続する。
>治療
左眼 メニわん コーニアルバンデージわん Lサイズ
左眼 ガチフロ1日1回
左眼 ソフトサンティア1日4回

コンタクトレンズを確認し、角膜の混濁は改善していた
フルオレセイン染色試験では染色部位が縮小していた

再診 4週間後

>検査所見
コンタクトレンズは脱落していた。角膜の混濁はさらに改善し、新生血管は退縮していた。フルオレセイン染色試験では染色がみられず、綿棒による掻爬でも角膜ははがれなかった。
>加療計画
角膜の混濁は残るものの、SCEEDsは治癒したと判断した。

混濁はさらに改善していた
フルオレセイン染色は陰性となった

まとめ

 SCEEDsは角膜潰瘍と異なり、綿棒デブライドメントやダイヤモンドバーによる掻爬が必要となります。それ以上に、角膜疾患に対してはできるだけ角膜の表面環境を悪化させないという意識が必要であり、本症例でもアセチルシステインやヒアルロン酸の点眼液を中止しても問題なく治癒がみられた。使用する点眼液の防腐剤なども含め使用する点眼液と回数について注意を払う必要があると再認識できた症例でした。

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