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「ただの月曜日だったはずなのに」 創作大賞用まとめ

〜心臓が止まったパパと、家族の物語〜

「今日、レオと練習行けないかも……」

(レオ = 長男 小学5年生の野球少年)

それは、2024年2月12日。ただの月曜日だった。
みぞおちの痛みを訴えたて起きてきたパパの一言から、すべてが変わった。

急性心筋梗塞、心停止、ICU、植物状態。
“絶望”の中に落ちた家族が、それでも希望を手放さずに選び続けた“日々”。
笑って、泣いて、抱きしめて、叫んで、祈って、また笑って――
これは、止まりかけた命と、止まらなかった想いの記録。


私の仕事が始まって1時間ほど経った頃、職場の電話が鳴った。

「旦那さんが現場で倒れて、救急車で病院に運ばれました」

パパの会社の事務員さんからだった。
ただ事じゃない。病院に着くと、会社の社長と専務がいた。

「……やっと、心拍再開したみたいなんだけど」

"心拍…再開? それって……止まってたってこと?"

意味が理解できなかった。現実が音もなく崩れ落ちていく感じだった。
専務が続ける。

「倒れて泡を吹いてた。すぐ心臓マッサージをして、救急車呼びました」

その言葉に、感謝しかなかった。
もし専務がいなければ、今ここにパパはいなかったかもしれない。

長女のキリはハビリのり専門学校に通うため、親元を離れている。
キリにLINEをした。
"すぐに飛行機を手配する"
と返信があった。

処置室の扉は長く閉ざされたまま。
ようやく扉が開いて、看護師から伝えられた。

「心拍は再開しました。これからICUへ移ります」

ほんの少しの希望にすがった。

「レオを連れてくる?」

母の問いに、迷ってから

「うん、お願い」

と言った。
"何があるかわからない。全て正直に伝えよう…"
レオが病院に来た。

「パパ、現場で倒れたって。でも心臓動いたって。だから大丈夫。」

そう伝えたて、レオをギュッとと抱きしめた。

処置室から出てきたパパは、管だらけでまるで別人のようだった。
一瞬だけ、目を開けた。
その瞬間、レオが泣いた。

「パパ、死んじゃうんじゃないかと思った」

でも、レオの涙は、このときと、 もっと後に訪れる、もう2回だけ。
その話は、またいつか。

医師の説明があった。

「心臓は戻りました。でも……30分というのは、やっぱり長いです」

大丈夫、とは一言も言わなかった。
でもその優しく誠実な説明が、むしろ私たちの不安を深くした。
それでも願わずにはいられなかった。

"ゆっくりでいい、起きて。うちに帰ってきて"

それが、家族の心の叫びだった。
不安と混乱のなか、私は気がつけば、深夜まで「心肺停止」「脳障害」などの検索を繰り返していた。
夜が明けても、眠れなかった。
眠っている間にパパがいなくなってしまうんじゃないかと怖かった。

私は仕事をしばらく休んだ。
だけど、レオは野球を一度も休まなかった。

「パパが目を覚まして、“レオ、うまくなったな”って言われたいから」

力強くそう言った。私は泣くしかなかった。

2月14日、キリが飛行機で帰ってきた。
ICUでのパパは冷却装置だらけで、声をかけても反応がなかった。
でもキリは言った。

「顔を見て安心した。生きてるってわかった」

その言葉に救われた。

「ママも無理しないで。ちゃんと寝なさいよ」

笑った。 あの子は、こんなときでも母を気遣ってくれる。
キリは翌日また戻っていった。

そして2月16日、先生から言われた。

「植物状態の可能性があります」

その一言で、頭の中が真っ白になった。
でもまた調べてしまう。
「植物状態とは」「脳損傷」「意識が戻る確率」
読めば読むほど、希望が削られる。

だけど信じた。「パパは帰ってくる」
そう信じなきゃ、心が保てなかった。

2月18日、パパの誕生日。
レオとシュークリームを持って面会に行った。

「えっ、見間違いじゃないよね? 目、開いてるよね?」

うっすらと目が開いた。
レオがパパの足をくすぐると、ピクッと反応した。
その瞬間、家族の希望が確かなものへと変わった。

植物状態――そう言われても、私たちは信じたかった。
“ここにいるパパ”を、信じていた。
パパから最高の誕生日プレゼントだった。

でも、病院からは何の連絡もなかった。
病院の面会は週2回。時間制限もあり、会える時間はごくわずか。
だからこそ、看護師さんからの「小さな変化」を知りたかった。
「目は開きましたか?」「手は動きましたか?」
知りたいのは「今日、パパどうでしたか?」それだけなのに。
それだけで救われるのに。
けれど返ってくるのは
「担当医じゃないとお答えできません」
の一言だけ。

3日ぶりの面会。
この日もパパは、はっきりと目を開けていた。

だけど――
翌日の先生の説明は、またしても私たちを優しく崖から突き落とした。

「目を開けても、反射であって、意識があるとは限りません」
「状態としては、いまも植物状態に近いです」
「気管切開と胃ろうの処置を進めます」
「その後、状態が安定すれば転院を検討します」

やさしく、丁寧で、誠実な先生だった。
でも、その声があまりにも静かすぎて、
崖っぷちに立つ私たちには、ただただ冷たく感じた。

「もう治るから、我慢してね」なら我慢できる。
でも「このまま戻らないかも」なんて、受け止められなかった。

それでも、レオは先生の話を最後まで聞いてた。
脳、心臓、呼吸、すべての説明を、しっかり理解しようとしていた。

本当は泣きたかっただろう。
でも、泣かなかった。
強くて、優しくて、かっこいい子。
パパの誇りだね。

私たちは、ただ
「家族の時間を過ごしたい」
と願った。

翌日キリがまた帰ってくる。
どうにか先生の許可を得て、3人で病院に泊まれる事になった。

その日、私はパパにこう報告した。
「レオ、児童会長に当選したよ!」
「キリも、明日帰ってくるよ!」
「みんなで泊まりに来るからね!」

明日は特別な、4人の夜。

まだまだ大変なことは続くけれど、
あの日ただの月曜日だった朝から、たくさんの奇跡が重なって――
ここからまた、パパの新しい時間が動き始める。

🔗本編はこちら

#創作大賞2025 #エッセイ部門 #心筋梗塞
#植物状態  #家族の記録  #実話  #奇跡  #ICU


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ひまわりの栞/それでもパパと暮らして行きたい介護ママ 読んでいただきありがとうございます。応援していただけると嬉しいです。 あなたにも小さな幸せがおとずれますように。