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​嘘とブギ・ウギ・アワー


【嘘の上塗り】

​『ねえ、真希。来週末、
 前に話してたカフェに行かない?
  あそこのパンケーキ、
 期間限定でイチゴフェア
 やってるらしいよ』

拓也の提案は、
どこか遠慮がちに聞こえた。

付き合って三年。
マンネリという言葉が、
二人の間にいつの間にか居座っていた。

​『あー……ごめん、拓也。
 その週末ね、ちょっと無理かも』

真希は、
指先でスマホを弄りながら
上の空で答えた。

画面には、
同期グループのチャットが
表示されている。

「温泉旅行、超楽しみ!」

「男子もいるし、
 サプライズ企画考えよう!」

という文字が躍っている。

『え? あ、そっか。
 何か予定あった?』

拓也の声が、明らかにトーンダウンした。

『うん、そうなの。
 実はね、ちょっと親戚のおばさんが
 …急に体調を崩しちゃって。
 週末はね、お見舞いに
 行かないといけなくて』

真希の舌から、
ひとつ目の嘘が滑り落ちた。

心配をかけたくない、
というのが建前だが、
本当は、誤解を招く
面倒なやり取りを避けたいだけだ。

同期との温泉旅行が、
彼とのマンネリを一時的に
忘れさせてくれる特効薬に思えた。

​拓也は、
何も言わずに珈琲を啜った。

その瞳が、
真希の動きをじっと
見ているような気がして、
真希は内心ヒヤリとした。

一つの嘘が 君の 舌から落ちた夜
たいしたことないって 自分にだけ 言い聞かせてた?

​週末。

真希は同期たちと、
はしゃいで温泉旅館に向かっていた。

『おばさんの体調は大丈夫なの?』

同期のユキが心配そうに尋ねる。

『あ、うん。
 あれね、
 ちょっと誤解させちゃったかも。
 実はね、私のおばさんの、
 そのまた従姉妹の娘さんが体調崩して、
 おばさんが看病するからって
 駆り出されたの。
 私まで手伝いに行くこと
 なくなったの』

真希はとっさに、
二つ目の嘘を重ねた。
これで完璧、と胸をなで下ろす。
同期たちも「そういうことか!」
と納得顔だ。

二つ目の嘘で 誰かの瞳を
 まっすぐ見れる?
笑うタイミングさえ 
ぎこちなくなっているね

​温泉旅行は、
男友達も交えて大盛り上がりだった。

露天風呂でのどんちゃん騒ぎ、
卓球大会、夜通しの人狼ゲーム。

真希は日頃のうっぷんを
晴らすかのように、
思いっきり楽しんだ。

『ねえ、写真撮ろうよ!』

同期の一人がスマホを構えたが、
真希は慌ててそれを制した。

『あ、私、顔出しNGで! 
 最近疲れてるから!』

本当は、
拓也に見つかるのが怖かったのだ。

だが、油断した。

同期のミキが、
風景写真にさりげなく
真希の顔が写り込んだものを意図せず
SNSにアップしてしまったのだ。

ハッシュタグには
「#同期旅行 #温泉最高 #〇〇旅館」と、
惜しみなく情報が盛り込まれている。

​その頃、
拓也は自分のSNSから
真希のSNSを
何気なく見ていた。

最近、
真希がそっけない
態度を取ることが増え、
なんとなく
違和感を感じていたのだ。

タイムラインをスクロールすると、
拓也の目に
ある写真が飛び込んできた。

それは、
ミキがアップした
温泉旅行の写真だ。

拓也のフォロワーではない
真希のフォロワーである
ミキの投稿が、
真希の「おすすめ記事」
として表示されていたのだ。

​『あれ…この旅館、
 真希が行きたいって言ってた…』

写真の片隅に、
見慣れた真希の笑顔。

そして、隣にいる同期の男友達。

拓也の頭の中で、
様々な情報が
ブギ・ウギのリズムのように
混ざり合っていく。

一つの嘘は 次の嘘を呼ぶ
二つ目 三つ目 数えてもキリがない
重ねた言葉が 記憶を塗り替え
真実みたいな顔をするけど 
でも嘘は嘘  嘘は嘘

​『お帰り、お見舞いどうだった?』

拓也は、
いつもと変わらない笑顔で
真希を迎えた。

しかし、その声には、
微かに、ほんの微かに、
ブギ・ウギのブルースのように
跳ねてるけど踊れないリズムが 
混じっているように真希には聞こえた。

『うん、おばさんの従姉妹の娘さん
 だいぶ良くなってたよ。
 熱も下がったみたいで』

真希は、
三つ目の嘘を淀みなく紡いだ。

もう、
自分でも何が本当で何が嘘か、
曖昧になってきている。

後ろめたい三つ目の嘘 
私は、そんな風に 話していた
小さな矛盾に気付かずに‥‥‥

​『そっか。
 それは良かった。
 ねえ、一つ聞いてもいいかな?』

拓也は、
真希の目を真っ直ぐ見つめた。

真希は、心臓が大きく跳ねるのを感じた。

『その…
 おばさんの従姉妹の娘さんって、
 〇〇県の温泉旅館で療養してたんだね。
 ミキちゃんのSNSで見たんだけど、
 すごくいい景色だったから、
 今度俺たちも行かない?』

​真希の頭の中で、
ブギ・ウギのリズムが
走るように転がり最高潮に達し、
そして急停止した。

拓也の目の前には、
彼女のSNSの画面が開かれており、
「おすすめ記事」として
ミキの温泉旅行の投稿が
表示されていた。

そこに写る、
楽しそうな真希と、
同期の男友達の姿。

​『…え? あ、いや、これは…』

真希は言葉を失った。

冷や汗が、背中をツーッと伝う。

今、何個目だっけ?

​拓也は、そっとスマホを閉じた。

『俺さ、
 別に真希が同期と
 旅行に行くのは、
 何も反対はしないよ。
 男友達がいても、
 真希のこと信じてるから。
 ‥‥ただ…』

拓也は真希の目を
しっかりと見つめ、
静かに、
しかしはっきりと告げた。

『俺に、
 嘘をつかなくても
 いいんじゃないかな』

​真希の頭の中に、
拓也が好きなブギ・ウギの
ブルースが響き渡る。

一つの嘘は 次の嘘を呼ぶ
二つ目 三つ目 もう増やさないほうがいい
書き換えられた 記憶のその上に
たった一つの 本当を置いても 
いいんじゃない?
「ごめん」からでいい ここからでいい
でも嘘は嘘 言い訳さえも
…嘘は嘘

​真希は、
拓也の言葉と歌が重なり、
耳の奥でブギ・ウギの
リズムが鳴り響くのを感じた。

『ご…ごめんなさい…っ!』

真希の喉から絞り出されたのは、
あまりにも小さな、
震える声だった。

拓也は何も言わず、ただ優しく、
真希の頭をそっと撫でた。

その手つきは、
まるで迷子の子どもを
慰めるようだった。

真希は、その優しさが、
今は何よりも痛かった。

​二人の間には、
もはやパンケーキの甘い香りも、
ブギ・ウギの
陽気なリズムもなかった。

ただ、
焦げ付くような嘘の匂いと、
それに気づいてしまった拓也の静かな、
そして少し呆れたようで
でも優しい眼差しだけが、
そこにあった。


おしまい



            著作 安桜芙美乃
            共作 Gemini
☆〜☆〜☆〜☆〜☆〜☆〜☆〜☆〜☆〜☆〜☆

短歌
正直に言えば世の中世知辛く一人歩きの暴かれた嘘


【後書き】
「嘘(うそ)」とは、単に事実を曲げることではなく、
真実を知りながら、意図的に他者を欺くコミュニケーション行為と定義されています。

とはいえ、社会的潤滑剤として、嘘は対人関係での衝突を防ぐための
社会的な役割を担うこともあるといわれています。

「嘘も方便」と言いますよね🙂

しかし、道徳的観点から見れば、信頼関係を損なうものでもあります。

嘘を見破られないために、新たな嘘をつく。

そして、その嘘をつき通すために、さらに新たな妄想の世界を作り出す。

やがて、その嘘は記憶に入り込み、
真実のように記録されていきます。

そして‥‥‥

気づかないふりをしたまま、数だけが増えていくこともあります。

            著者 安桜芙美乃
☆〜☆〜☆〜☆〜☆〜☆〜☆〜☆〜☆〜☆〜☆
SUNO AI MUSIC
【嘘を呼ぶ嘘】ブギ・ウギ
作詞 作曲 編曲 Echo.EXE

【歌詞】
[Verse 1]
一つの嘘が
君の 舌から落ちた夜
たいしたことないって
自分にだけ 言い聞かせてた?

二つ目の嘘で
誰かの瞳を まっすぐ見れる?
笑うタイミングさえ
ぎこちなくなっているね

[Chorus]
一つの嘘は 次の嘘を呼ぶ
二つ目 三つ目 数えてもキリがない
重ねた言葉が 記憶を塗り替え
真実みたいな顔をするけど
でも嘘は嘘 嘘は嘘

[Verse 2]
三つ目の嘘は
君自身 よく覚えてないみたい
「最初から そうだった」
そんな風に 話していた
小さな矛盾に気づいてる?

四つ目の嘘が
やがて妄想と 混ざり合っていく
過去の写真の中
別の君が 笑ってる

‥‥‥今、何個目だっけ?

[Chorus]
一つの嘘は 次の嘘を呼ぶ
二つ目 三つ目 数えてもキリがない
妄想までもが 記憶にすり替わり
現実みたいな色をしてても
でも嘘は嘘 嘘は嘘

[Bridge]
守りたかったのは 君自身?
問いかけるたびに 喉が渇く
思い出の中でまで 取り繕う君を
君は 許せるのかな

[Chorus]
一つの嘘は 次の嘘を呼ぶ
二つ目 三つ目 もう増やさないほうがいい
書き換えられた 記憶のその上に
たった一つの 本当を置いても
いいんじゃない?
「ごめん」からでいい ここからでいい
でも嘘は嘘 言い訳さえも

‥‥嘘は嘘

🎵 Music created with Suno AI (Pro Plan)
©️ 2025 Echo.EXE / Suno AI

最後までお付き合いくださり
ありがとうございました😊

また来てね(@^^)/~~~💕

安桜芙美乃

ペリン さま♪
マガジン登録、紹介ありがとうございます😊

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