シリーズ②:確証バイアス ——“私は愛されない”を強めてしまう心の仕組み
こんにちは、公認心理師の石川美樹です。
前回のシリーズ①では、
“認知的不協和”という、
「心の中の矛盾を埋めようとする働き」
についてお話をしました。
本当は求めているのに、
「どうせ叶わない」「私には無理」と
自分で価値を下げてしまう——。
この、胸の奥で起きる“心のすり替え”は、
生きづらさを生み出す第一のカラクリでした。
そして今回は、
その“不一致”をさらに強固にしてしまう
2つ目のメカニズム:確証バイアス
についてお話しします。
これは、
“生きづらい人がハマりやすい心の代表格”
と言っても過言ではありません。
そして何より——
幼少期に心の傷を抱えた人ほど、
このバイアスが強く働くのです。
確証バイアスとは? ——「信じているストーリーの証拠集め」
確証バイアスをひとことで言うと、
**「自分の信念に合う情報だけを集め、その信念を強めてしまう心のクセ」
わたしたちの心は、
思っている以上に“物語で世界を見る”ようにできています。
たとえば、こんな瞬間はありませんか?
・挨拶を返されなかった →「嫌われた」
・友達から連絡が遅い →「迷惑だったのかな」
・上司の機嫌が悪い →「私のせいだ」
でも本当は、
相手が気づかなかっただけ
忙しかっただけ
たまたま機嫌が悪かっただけ
かもしれません。
ところが心は、
自分の中にある“信念”に合う解釈を選ぶのです。
それが、確証バイアス。
幼少期の心の傷が、バイアスを強くする理由
ここで、もうひとつ大切なことがあります。
確証バイアスは「信念」があるほど強く働く。
では、その信念はどこで作られるのか?
——ほとんどの場合、
幼少期の体験がベースになっています。
たとえば、
・褒められた記憶が少ない
・比較されて育つ
・親の顔色を見ていた
・存在を大切に扱われなかった
・理不尽に叱られた
・突然態度が変わる大人に囲まれていた
こういう環境で育つと、子どもはこう理解します。
「私は大切にされない」
「私は迷惑な存在」
「私は必要とされない」
これらの“信念の種”は、
大人になっても消えず、心の奥に残ります。
その状態で日常を過ごすと、
小さな出来事にも敏感に反応し、
“ほら、やっぱり私は大切にされていない”
と、無意識で証拠集めが始まるのです。
これが確証バイアスの正体。
事例①:一回の既読スルーで「やっぱり嫌われた」と思ってしまう理由
40代女性のAさん。
職場の同僚にLINEを送ったら、
たまたま返信がなかった日がありました。
その時彼女はこう感じました。
「あ、やっぱり私、嫌われてるんだ」
でも実際には、
相手が忙しかっただけでした。
ではなぜ、Aさんは“嫌われている証拠”として受け取ったのか?
Aさんは幼少期、
・親の機嫌をひどく気にしていた
・「いい子」にしていないと怒られた
・親に気持ちを否定されることが多かった
という経験から、
「私は人に迷惑をかける存在」
という信念を持ってしまっていたからです。
だから、
“返事がない”という小さな出来事でさえ、
「迷惑→嫌われる→私が悪い」
という過去の地図に当てはめてしまったのです。
事例②:「私は気持ち悪い存在」と信じ込んでいた女性
別の女性Bさんは、
幼少期に親から容姿をからかわれたり、
冷たく扱われることが多い家庭で育ちました。
彼女は大人になっても、
「私は汚い」
「私は気持ち悪い存在」
という言葉を心の中で繰り返していました。
人が優しくしてくれても受け取れず、
少しでも冷たい態度を感じると、
「ほら、やっぱりみんな私を嫌ってる」
そんな風に解釈してしまいます。
これも完全に、
確証バイアスによって
過去の痛みのストーリーを強めてしまっていたのです。
確証バイアスは“悪いもの”じゃない
ここで大切なことをお伝えします。
これはあなたの弱さでも間違いでもありません。
確証バイアスは、
幼い頃のあなたが “これ以上傷つかないように”
心の中で編み出した 防衛の知恵 なのです。
・理由のない拒絶は一番痛い
・愛されないと感じるのは一番苦しい
・自分の価値を否定されるのは耐えられない
だから心は、
「どうせ最初から大切にされない」
という物語の中にいようとします。
その物語にいたほうが、
“裏切られるより痛みが少ない”から。
どれほど切ない防衛でしょうか。
確証バイアスの世界から抜け出すために必要な3つの視点
①「これは私の物語かもしれない」と気づくこと
起きた出来事に対して、
“過去の地図”で反応しているだけかもしれない。
それに気づくだけで、
苦しさは少し軽くなります。
② “今の現実”を見る練習をする
返事が遅れた
視線が合わなかった
素っ気なかった
それが=「嫌われている」ではありません。
心の中で瞬間的に起こる
「解釈」 と
「事実」 を
ゆっくり分けていきます。
③「小さなあなたの痛み」を理解すること
確証バイアスは、
幼少期の痛みを“守るために”働いています。
だからこそ、
その頃の自分にそっと寄り添うことが
いちばんの回復につながります。
「怖かったよね」
「大切にされなかったのが悲しかったね」
この一言だけで、心はほどけ始めます。
次回はシリーズ③:セルフハンディキャッピング
確証バイアスが強くなると、
次に現れるのが セルフハンディキャッピング。
「どうせ失敗するから…」
「期待されたくないから…」
そんな理由で、
“自分にわざとハンデをつける”ような行動が始まります。
これは、
あなたの心が最後まで自分を守ろうとしていた証。
次回は、この仕組みをやさしくひも解いていきますね。
あなたの心が少しでも軽くなりますように。
記事の公開予定
記事がアップされしだい、この導入記事にもリンクを追加しますね。
⓪ プロローグ → 記事はこちら
① 認知的不協和→ 記事はこちら
② 確証バイアス→ 今回の記事
③ セルフハンディキャッピング→ 記事はこちら
④ 学習性無力感 前編 → 記事はこちら
⑤ 学習性無力感 後編 → 記事はこちら
