短編小説|全力で推したい貯金箱|#爪毛の挑戦状
目の前の貯金箱を見ると、思わずにやけてしまう。いつか推しに会おうと、数年前から準備していた、黄色い貯金箱。目標の金額があるわけではない。とにかく目いっぱい貯めて、大量に入れてあることが重要だった。だから、1円玉と5円玉をたくさん入れた。
数か月前、今年は推しに会えると知った。それからは落ち着かない日々だった。彼は、国民的アイドルグループの一人なのだ。会えるチャンスは毎年あるわけではない。
当日。夏の猛暑日。
会場の周りで、じっと待機していた。スマホからは目をはなさずに。
――彼が受付をしているシーンが流れたよ!
友人からの連絡。すぐさま武道館に入場した。
のろのろと列を進んだ後、ようやく彼のもとにたどり着いた。
黄色のTシャツを着た彼に貯金箱を渡す。
「募金ありがとうございます! たくさん貯めましたね」
「メインパーソナリティーお疲れさまです」
何とか言葉を発し、彼が差し出した手をつかんだ。
愛は地球を救う。
