第4話:最大の危機の先頭に立った時、僕を支えた行動の軸
最大の危機は、音もなくやってきた。
コロナ禍。
お客様が、お店に来てくれない。
予約が消え、客席が空き、厨房の音だけが残る。
自分たちの環境も不安定だった。
先が見えない。数字も読めない。
現場も心も、揺れ続ける。
その時の肩書きは、営業本部長。厨房の外側に立つ役割だった。
でも、不思議なことに、危機のど真ん中に立たされた時ほど、
僕の頭の中には料理のことが浮かんだ。
「俺たちは、何のために料理を作ってるんだろう」
その問いが、何度も胸の奥で鳴っていた。
危機の時、現場は“正しさ”より先に崩れる
危機が来ると、人は二つに割れやすい。
怒りで押し切る
黙って抱え込む
正しさで押すほど、空気は固くなる。抱え込むほど、現場は孤立する。
そして、失敗が起きる。
本当は、危機の時こそ“失敗”が起きやすい。
環境が変わり、オペレーションも変わり、心の余裕がなくなるから。
それなのに、現場はつい「誰のせいだ」と探してしまう。
でもコロナ禍で気づいた。犯人探しを始めた瞬間、現場は終わる。
僕を支えた行動の軸は、シンプルだった
危機の先頭に立つと決めた時、僕が握った軸は、難しいものじゃない。
むしろ“当たり前”の徹底だった。
軸①:目的に戻る「何のために料理を作っているのか」
売上、数字、対策、会議。
それらも大事だ。でも最初に戻る場所はひとつだった。
「料理は、人の心を満たすためにある」
「目の前の一人に、今日を届けるためにある」
客席が空いても、料理の意味まで空っぽにしてはいけない。
危機の時ほど、目的に戻る。
この一点が、僕の心と現場を支えた。
軸②:ミスした人を責めない。フォローした人を褒める
ここが、僕にとって一番大きい転換だった。
ミスを責めると、現場は黙る。
黙ると、報告が遅れる。
遅れると、傷が大きくなる。
だから、僕は決めた。
ミスをした人を責めるのではなく、フォローした人を褒める。
「助けに入ったの、見てたよ」
「声かけ、良かった」
「守ってくれてありがとう」
危機の時ほど、現場は“誰が正しいか”じゃなく、
“誰が仲間を守ったか”で強くなる。
僕が大切にしている基準が、ここで形になった。
「一緒に働く仲間を、何人幸せにできるかがプロフェッショナル」
危機の時に、それが試される。
技術じゃない。肩書きでもない。
“人”を守れるかどうか。
軸③:現場の不安を「言葉」にして、前に渡す
不安は、放っておくと増殖する。
だから僕は、現場でこう言うようにした。
「不安なのは当然。今は誰もが不安だ」
「でも、今日やることは決めよう」
「責めない。止める。整える。前に進む」
不安を“なかったこと”にしない。
でも、不安に飲まれない。
そのために、言葉で前に渡す。
営業本部長として、先頭に立つとは「現場の尊厳を守る」ことだった
営業本部長という肩書きは、数字に責任を持つ立場でもある。
でもコロナ禍で痛感した。
数字の前に、守るべきものがある。
現場の尊厳
働く人の気持ち
「料理を作る意味」
危機の中で、人は“自分の存在価値”を見失いやすい。
「自分がここにいていいのか」
「続ける意味があるのか」
そんな時に、トップがやるべきことは、
正論をぶつけることじゃない。
現場の尊厳を守り、意味を渡すことだった。
そして、その土台にあるのが、僕の基準。
仲間を何人幸せにできるか。
それが、結果として現場を強くし、店を支え、未来をつなぐ。
明日からできる「1アクション」
危機の時だけじゃない。現場はいつでも揺れる。
だから、明日からこれをやってほしい。
「ミス」ではなく「フォロー」を見つけて、声に出して褒める。
たった一言でいい。
「助けてくれてありがとう」
「声をかけたの、良かった」
「フォローが早かった」
それだけで、現場は少し強くなる。
人は、もう一度前を向ける。
コメントのお願い(つながる場所)
この連載は「技術」より先に、**考え方(基準)**を整える話です。
もしよければ、あなたが今いちばん悩んでいるのはどれですか?
① 自分の基準が定まらない(何を優先すべきか迷う)
② 伝え方が強くなる/うまく言語化できない
③ 任せたいのに任せられない(抱え込んでしまう)
④ 周りと価値観が合わず、苦しくなる
⑤ 「プロとは何か」を自分の中で定義できない
番号だけでもOKです。コメントを次回以降の内容に反映します。
