見出し画像

【こはるフォト絵本5】いとおしい日々


ママの睫毛は

しっとりとながく



笑うとさがる目尻に

ふわり、かぶさり

仄かな音をたてる



やわくとろけるその音は

きっと

あたしにしか聞こえていない



濡れたひかりがたゆたう

窓の大きな部屋




ママがあたしを抱きしめて

くーん、と

おでこに鼻を押しつけてくる



くすぐったくて

窮屈で

あたしがとっさに逃げだすと



こんどは

寝そべったあたしの足の裏を

むにむにと、

たぶんいっそう目尻をさげて

さわりはじめた




みあげた窓

はりつく雨粒が

ぱた、ぱたと滑りながら落ちてくる




おもわず手を伸ばし

右、左と追いかける




すると

「隙あり!」

と、脇をくすぐられ

あたしはきゃあ、とのけぞった




それにしてもよく降る雨、と

ママのため息が

抱きかかえられたあたしの耳にふれる




そりゃあ

あたしだって

ひだまりで日向ぼっこが

いいに決まってるけど




雨がふると

ママが家にいてくれるから




こんな日も

悪くない、と

じつは思っている



もちろん

ママには内緒のこと



だって




あたしの好きより

ママの好きが大きい方が

いっとう、いいでしょ?




するり、

腕から脱け出して



ごろん、と

お腹を見せると



ママから

やわくとろける音がした






text by haru photo by sakura



こんにちは
haruです


紫陽花の季節の
フォト絵本
『いとおしい日々』
いかがでしたでしょうか


サクラさんが撮影して下さった
紫陽花とビヨウヤナギ
の、写真をモチーフにして
「あたし」と「ママ」の
お話を考えました


じつは
このフォト絵本には
設定が2つあって


ひとつはそのまま
「娘」と「そのお母さん」


そしてもうひとつが
「猫」と「その飼い主さん」
というもの


とはいえ
意図した二重設定以上に
読んで下さった方の分だけの
「ふたり」が
あるのではないかなと思います


そのふたりにしか通じない
音や匂いや仕草があるんだろうな、と


ころんと丸いフォルムの
紫陽花と
ふさふさの長い睫毛を持つ
ビヨウヤナギ


あなたなら
誰と重ねますか


桜の季節は
雨もさやさやと降りますね

雨音を聴きながら
すきな音楽を聴きながら
愉しんで頂けたら幸いです

フォト絵本は
今回が最終話となります

読んで下さり
ありがとうございました

来週日曜日は
いつものエッセイです
また
お会いできますように

haru




《御礼》


前記事『微睡むカーテン』を
だんけひつじさんの
〝ひだまりマガジン〟に
加えて下さりました

だんけひつじさん
いつも応援ありがとうございます

とてもうれしいです♡


いいなと思ったら応援しよう!