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大英博物館展出品作①《猿草子絵巻》1560-70年代、大英博物館

この記事では、現在、東京都美術館で開催中の特別展「大英博物館 日本美術コレクション」の出品作について解説します(この展示に関してはYoutubeで解説動画を公開中です)。

今回取り上げる作品は、室町時代の終わり頃に制作された《猿の草子絵巻》です👇

《猿草子絵巻》永禄3-天正7年(1560-70年代)
紙本着色、30.90 × 1329.40cm、ロンドン・大英博物館

永禄3年から天正7年(1560年代~1570年代)の時期に制作されたこの作品は、絵巻物の形式で制作されています👇

「絵巻物」とは、つまり、作中においては説明の文章である「詞書ことばがき」と絵の部分が、横に長い紙面に交互に登場し、右から左へと流れるように物語を表しています👇

「詞書(ことばがき)」部分の例
絵巻物の「絵」の部分の例

この作品では、比叡山の山王権現に仕える神職の家の娘の嫁入りのお話が語られています👇

猿の嫁入りの輿(こし)が、お猿の行列と共に道を行きます

具体的には、行列・娘の結婚後、婿を招いて催された連歌とお茶の会のシーン・酒宴の開催される様子などが表されています👇

宴会の様子を描くシーンでは、料理の準備で猿たちは大忙しです

さてこの物語を描写するにあたって本作では、人物がいずれも赤い顔と茶色い毛皮を備えた猿の姿で表現されています👇

猿の顔の皺(しわ)や毛並みが、墨の細い線を引くことにより細かく描かれています

その表現の例を確認するために、ここではまず神職の娘の嫁入りの行列が進む屋外のシーンに注目します👇

この場面には、人間では馬に乗るところを鹿にまたがる猿が、青い装束を着けて烏帽子えぼしを被って、身の装いもしっかりと表されています👇

これに対し徒歩で行列に参加する猿の中には、衣装を着けておらず、赤い色のお尻を現すものもいます👇

お尻の赤いサルたち

そして徒歩で行く猿たちは、それぞれの手に武器を持っています👇
よく見ると、長い弓を両手に支えて歩む者や、槍を肩に担ぐ猿もいます。
槍の穂先も、片鎌槍に十文字槍とヴァリエーション豊かです。

多様な持ち物の細かな描写は、絵を見る者の目を飽きさせません

続いて場面は変わって、屋敷の中で連歌とお茶の会が催されるシーンに注目します👇

座敷では、奥に座る連歌師の指導のもとに「連歌れんが」の会が催されています👇

連歌れんが」とは、五字+七字+五字からなる長い「発句」と、七字+七字からなる短い「脇句」を、交互に複数の人たちで読み連ねる歌です。
連歌れんが」の会に参加する猿たちを見ると、赤い衣装の猿は口の端を大きく上げて楽しそうな表情を浮かべています👇

一方で、うつむいて眼を閉じている猿は、居眠りしているのかもしれません👇

さて座敷の左では、お茶を点てるサルたちがいます👇

黒い色の風炉に灰色の釜が据えられて、お湯が用意されています👇
その手前では、釜に沸かしたお湯を使ってお茶が点てられています。
お茶の係の猿は、橙色のお茶碗を天目台の上において、右手の茶筅で茶碗の中の抹茶を混ぜています。

用意のできたお茶は連歌の会の参加者のもとへと運ばれています👇

届いたお茶碗を台から手に取る猿の姿も見えます👇

本図は、茶器の描写も詳しく、連歌やお茶の会の様子を伝える文化史の資料としても高く評価されています。

《猿草子絵巻》永禄3-天正7年(1560-70年代)
紙本着色、30.90 × 1329.40cm、ロンドン・大英博物館

特別展「大英博物館 日本美術コレクション」については、解説動画をYoutubeで公開中です。
ご視聴いただけましたら幸いです👇

展覧会開催日程
東京都美術館:2026年7月25日~10月18日
大阪中之島美術館:2026年10月31日~2027年1月31日

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