第21話 🇳🇱14年ぶりの来日!フェルメール《真珠の耳飾りの少女》|振り返った、その一瞬に
彼女は、こちらを見ている。
でも、
見つめているわけではない。
振り返った、その一瞬。
呼び止められたようで、
それでも言葉は交わされない。
《真珠の耳飾りの少女》
ヨハネス・フェルメール。
この絵の前に立つと、
時間がわずかに遅くなる。

マウリッツハイス美術館、ハーグ
背景は、深い闇。
場所も、物語も、
何ひとつ説明されていない。
少女の名前も、
年齢も、
身分も分からない。
それなのに、
目を離せなくなる。
光は、左から静かに差し込む。
頬。
唇。
そして、耳元の真珠。
真珠は宝石というより、
光そのもののようだ。
重さを感じさせず、
ただ、そこに在る。
フェルメールは、
輝きを描いたのではない。
「光が触れた瞬間」を
描いたのだと思う。
彼女が身につけているのは、
日常の服ではない。
青と黄色のターバン。
異国的で、どこか現実離れしている。
この絵は肖像画ではなく、
トローニー(表情習作)と呼ばれるもの。
特定の誰かではなく、
「ある一瞬の表情」を描いた絵。

唇は、わずかに開いている。
話しかけようとしたのか、
それとも、
何かを言いかけてやめたのか。
答えはない。
でも、この曖昧さこそが、
この絵の核心なのだと思う。
完成されていないから、
想像が入り込む余地がある。
17世紀のオランダ。
商業と市民文化が栄え、
絵画は教会のためのものから、
「個人が楽しむもの」へと変わっていった。
フェルメールが描いたのは、
静かな室内と、静かな人間。

アムステルダム国立美術館、アムステルダム

アムステルダム国立美術館、アムステルダム

アムステルダム国立美術館、アムステルダム
そしてこの少女もまた、
声を上げない。
ただ、
こちらを振り返るだけだ。
《真珠の耳飾りの少女》は、
答えを与えない。
だから、何度でも会いに行きたくなる。

--------
今年8/21〜9/27まで大阪中之島美術館で観られるそうです。今回は14年ぶりの来日とのこと。
