質点&剛体の運動学について -1-
まえがき
微分積分をはじめとする高等数学を踏まえて、様々な物理学に対する見方をテーマを決めて、連載形式で発信します。
今回のテーマは「質点と剛体の運動学」です。
私たちが物体の動作を認識する現象の見え方は様々です。例えば、コップがテーブルから落ちる、車が坂を下る、人が歩くなど、個別で基本動作がありますが、力学ではこれらをシンプルなモデルとして扱います。
すなわち、高校物理でも習う「運動方程式」を用いて、物体運動を数学的に記述すること。今回は質点や剛体の運動に焦点を絞り、基本的な物体運動モデルを考えることにします。
質点&剛体と運動学の概要 →【今回】
質点の運動方程式
剛体の運動方程式
今回の内容は機械工学系の学問分野(四力)で言うところの「機械力学」に属します。高校物理の延長線の知識が多いものの、微分積分を踏まえて理解を試みるところが、高校物理との決定的に違いです。

質点と剛体によるモデル化の違い
力学的現象(主に物体運動)を観察するとき、状況に応じて物体をどのように見れば良いのか。これがひとつの問題になります。
物理学においては、物体のモデル化は「質点・剛体・連続体」の3通りがあります。ここでは「質点」と「剛体」を取り上げます。
質点:物体形状を無視したひとつの点として物体を定義します(質量は考慮します)。並進運動(全部で3自由度)を扱います。
剛体:物体形状と質量を考慮する形で物体を定義します。並進運動と回転運動(全て合せて6自由度)を扱います。
物体運動を考えるとき、どこまで運動を詳細化するかが、質点と剛体の使い分けを決める基準のひとつです。
例えば、空中を落下するボールは並進運動の範疇であることから「質点」と仮定すれば十分です。一方で、ドアが開く場合を考えると、動作は回転運動を含みますし、ドアの形状も重要であるため、ドアは「剛体」とします。

質点と剛体の双方に共通するのは「物体変形が生じないこと」です。物体変形は「材料力学」で扱う話題ですので、今回は特に触れません。
機械力学は先述した四力の中でも、特に高校物理に近い内容であることが多いです。ここから、物体運動を微分積分で記述することを理解すれば、学習も大きく進むと思います。

物体運動と微分積分の関係
ここでは「質点」に注目して、その運動を数学的にどう表現するのかを見ていきます。キーワードは「位置・速度・加速度」です。高校物理で聞いたことがある人も多いでしょう。
1次元(1自由度)における、質点の「変位・速度・速度度」の関係を微分積分を導入して考え直すと、次のイメージになります。

ここで、変数tは時間(時刻)を表します。3種類の変数の因果関係は、変化を捉えることが本質です。位置が時間経過でどう変化するかを調べるためには「微分」が必要です。逆に、変化の過程を「積分」することにより、時事刻々で位置が求められます。
上記の流れで求めた値は「瞬時値」として扱います。一方で、変化を単純に経過時間で除した場合は「平均値」という扱いになります。移動距離を経過時間で除算した場合は、平均値を指して「平均の速さ」と表記します。
この変化に対する時間的間隔は、最終的に微小範囲まで圧縮されます。数学では「極限」と言います。
微分(係数)について、数学では時刻歴(横軸を時間として物理量推移を示したグラフ)の任意点で引かれる接線(傾き)を指します。変位の時刻歴における微分係数は、その瞬間における速度(瞬時値)を意味するのです。
微分積分そのものは概念的理解が難しい話ではありますが、物体運動の本質は変化にあり、微分積分はあくまでその変化を数学的に表現するための道具に過ぎないのです。

ベクトル表記とスカラー表記
物理量には数値だけで意味を表現できる「スカラー量」と、数値と方向を合せることで意味を表現できる「ベクトル量」があります。
例えば、変位・速度・加速度はどの方向にどれ程の大きさなのかを規定することから、全てベクトル量です。なお、速度(ベクトル量)はベクトルとしての大きさ(スカラー量)を計算することもできます。
速度に対するスカラー量は「速さ」と区別して呼ぶこともあります。
物理量にはスカラー表記とベクトル表記で適切な使い分けがあり、数学的に記述する際に非常に重要な視点です。

いま、速度(ベクトル)を$${\bm{v}=(v_1,v_2,v_3)}$$として、速さ(スカラー)は次の通りになります。
$${|\bm{v}|=\sqrt{{v_1}^2+{v_2}^2+{v_3}^2}}$$
ここでは、ベクトル表記は太字で示します。詳細は次回にしますが、力$${\bm{F}}$$と加速度$${\bm{a}}$$を結びつける「運動方程式」は、両者をベクトルとして方程式に落とし込んだものです。
$${\bm{F}=m\bm{a}}$$
$${\bm{F}=(F_1,F_2,F_3)}$$ , $${\bm{a}=(a_1,a_2,a_3)}$$
方程式として物理量を扱うには、各項でスカラー表記かベクトル表記で統一します。この辺の表記説明も補足として紹介しました。

おわりに
今回のテーマは質点と剛体の運動学について。初回では質点と剛体の物理学的差異と、主に質点の並進運動に関する概要説明を行いました。
次回は質点の力学に絞りまして、運動方程式を数学的に記述することについて見ていきます。
質点&剛体と運動学の概要
質点の運動方程式 →【次回】
剛体の運動方程式
特に、高校物理では微分積分の背景知識を抜いたままに公式に転じたものも多いため、その辺を微分積分に話を交えて再整理します。
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最後まで読んで頂き、ありがとうございます。この記事が、何か皆さんの未来を変えるキッカケになれたら幸いです。
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