特別編 : 振動問題の運動方程式の解法
まえがき
今回のテーマ「質点&剛体系の振動問題」は、単体の質点系(バネマスモデル)を対象に、シンプルな単振動から減衰振動や強制振動などの発展的な振動現象を扱いました。最終回では、剛体系の振動問題として、振り子について扱いました。
物理で考えるところの「物体の運動」を解き明かすには、運動方程式と称される「微分方程式」を解く必要があります。
これは前回のテーマ「質点&剛体の運動学について」も同様でしたが、前回は微分方程式の解き方をあまり意識せず、高校数学の範囲内に説明をおさえていました。
今回は微分方程式に関する一般論から説明したことから、解法も相応に高度でした。今回は特別編として、今回取り上げた振動問題の微分方程式を再整理して、それぞれの解釈の仕方などを確認することにします。
今回は微分方程式でも「2階定数係数線形常微分方程式」に限定して、解法の手順を示します。単振動や減衰振動で登場した「斉次方程式」と強制振動で登場した「非斉次方程式」に大別されます。
最終回の剛体振り子の記事で登場した「非線形を含む常微分方程式」については、楕円積分と呼ばれる難解な解法を挟む必要があるため、今回の説明では割愛することにします。

運動方程式の数学的分類
今回(前回のテーマも含みます)の問題設定として、運動方程式で登場する未知数は、並進運動の変位または回転運動の角度でした。また、未知数は独立変数の時間tだけに関連する1変数関数でもありました。
例えば、質点の1次元の並進運動の運動方程式は、次の通りです。
$${m\frac{d^2x}{dt^2}=m\ddot{x}=F}$$
ここでは、微分方程式の中に、変位xの時間tに対する2階微分(2階の導関数)が登場することが分かります。このような形は「2階定数係数線形常微分方程式」に分類されます。
常微分方程式とは、独立変数が1つの未知数(未知関数)とその導関数(微分することで得られる関数)で構成される方程式です。特に、未知関数とその2階(または1階と2階)の導関数で構成され、各項の係数がいずれも定数であるとき、2階定数係数常微分方程式と呼ばれます。
加えて、今回は未知関数やその導関数の1次結合で表されるため、最終的に微分方程式の形は「2階定数係数線形常微分方程式」となります。
例えば、質点系(バネマスモデル)の減衰振動の問題では、運動方程式は次の通りでした。
$${m\ddot{x}+c\dot{x}+kx=0}$$
質量mと粘性係数cとバネ定数kはいずれも物理定数ですので、2階定数係数線形常微分方程式であり、前述の「斉次方程式」に該当します。
微分方程式にて、未知関数とその導関数の項を左辺に移したとき、右辺がゼロになる場合を「斉次方程式」と言い、非ゼロにある場合を「非斉次方程式」と言います。
振動問題で斉次方程式で構成される場合は、外力が存在しない自由振動を表します。つまり、運動初期のエネルギーだけで振動が発生します。
一方で、強制振動では外力$${F(t)}$$が加わり、運動方程式は次の通りに表現できました。
$${m\ddot{x}+c\dot{x}+kx=F(t)}$$
外力の存在を通して、微分方程式は右辺が非ゼロである「非斉次方程式」に変わりました。このとき、斉次方程式で示した「自由振動」と外力に対する応答を表した「定常振動」を規定して、両者を足し合わせた形を非斉次方程式の解として求められました。
これは、微分方程式の線形性を前提とした「重ね合わせの原理」を利用しています。
2個以上の入力を同時に与えた際の応答が「それぞれの入力を単独に与えた場合の応答」の総和となること。線形方程式では「成立する解を足し合わせた形もまた線形方程式の解になる」ことを意味します。
以上が「2階定数係数線形常微分方程式」に分類される、振動問題に関する運動方程式の全体観です。定常振動は外力の定式化に依りますが、自由振動は大筋が規定されています。

斉次方程式の解法(前編)
2階定数係数線形常微分方程式(斉次方程式)を解く流れを示します。出発点として、まずは「解が指数関数の形になる」と仮定します。
$${x(t)=e^{qt}}$$
ここで、$${e}$$は「ネイピア数」と言う定数です。ここでのポイントは、この関数形は微分しても関数形自体は変わらず、未知定数$${q}$$が係数として現れることです。
$${\dot{x}=qe^{qt}}$$ , $${\ddot{x}=q^2e^{qt}}$$
上記を代入して、$${e^{qt}\ne{0}}$$を踏まえると、2階定数係数線形常微分方程式は簡単な2次方程式の形に整理できます。
$${(mq^2+cq+k){e^{qt}}=0}$$ → $${mq^2+cq+k=0}$$
上記の2次方程式は「特性方程式」と呼ばれています。未知定数qは2次方程式の解の公式から求まります。
$${q=\frac{-c\pm\sqrt{c^2-4mk}}{2m}}$$
前述した「重ね合わせの原理」を踏まえて、仮定した$${x(t)=e^{qt}}$$に未知定数qを代入した解を足し合わせて、微分方程式の一般解とします。
判別式$${\Delta=c^2-4mk}$$を規定します。$${\Delta>0}$$である場合、未知定数$${q}$$は2個の実数であることから、一般解は次の通りです。
$${x(t)=Ae^{q_1{t}}+Be^{q_1{t}}}$$
ここで、AとBは積分定数です。$${\Delta=0}$$である場合、未知定数$${q}$$は1個の実数であり、一般解は次の通りです。
$${x(t)=(A+Bx)e^{q{t}}}$$
現実のところ、これらの一般解は振動の振る舞いは示しません。$${\Delta<0}$$である場合に限り「減衰振動」としての振る舞いを示します。

斉次方程式の解法(後編)
$${\Delta<0}$$である場合、未知定数$${q}$$は2個の複素数になります。虚数単位$${i}$$を用いて未知定数$${q}$$を表記します。
$${q=-\zeta\omega_0\pm{i}\omega_d}$$ , $${\zeta=\frac{c}{2\sqrt{mk}}}$$
$${\zeta}$$は減衰比であり、$${\Delta<0}$$の場合は$${\zeta<1}$$が成立します。
未知定数$${q}$$を$${x(t)=e^{qt}}$$に代入します。
$${x(t)=e^{qt}=e^{-\zeta\omega_0{t}\pm{i}\omega_d{t}}=e^{-\zeta\omega_0{t}}e^{\pm{i}\omega_d{t}}}$$
複素指数関数と三角関数の間には「オイラーの公式」と呼ばれる次の関係が成立します。
$${e^{i\theta}=\textrm{cos}\theta+i\textrm{sin}\theta}$$
これより、先述の複素指数関数を次の通りに書き直します。なお、第1項の余弦関数は偶関数であるため、符号$${\pm}$$は消えます。
$${e^{\pm{i}{\omega_d}t}=\textrm{cos}(\omega_d{t})\pm{i}\textrm{sin}(\omega_d{t})}$$
前述に倣い、積分定数(A&B)を踏まえて同様に一般解を導きます。
$${x(t)=e^{-\zeta\omega_0{t}}\Big\lbrace{A\big(\textrm{cos}(\omega_d{t})+i\textrm{sin}(\omega_d{t})\big)+B\big(\textrm{cos}(\omega_d{t})-i\textrm{sin}(\omega_d{t})\big)}\Big\rbrace}$$
一般解においては、積分定数(A&B)は任意に取ります。追加で設けた積分定数(C&D)を用いて、一般解を書き換えます。
$${x(t)=e^{-\zeta\omega_0{t}}\big\lbrace{(A+B)\textrm{cos}(\omega_d{t})+i(A-B)\textrm{sin}(\omega_d{t})}\big\rbrace=e^{-\zeta\omega_0{t}}\big\lbrace{C\textrm{cos}(\omega_d{t})+D\textrm{sin}(\omega_d{t})}\big\rbrace}$$
以上が減衰振動の運動方程式(微分方程式)の一般解を求める流れです。単振動も場合も同様に$${x(t)=e^{qt}}$$から特性方程式を導きます。
$${\ddot{x}+{\omega_0}^2{x}=0}$$ → $${q=\pm{i}\omega_0}$$
重ね合わせの原理と積分定数の再規定から、減衰を無視した自由振動の解が求まります。
$${x(t)=A\textrm{cos}(\omega_d{t})+B\textrm{sin}(\omega_d{t})}$$

最後に、質点系(バネマスモデル)の運動方程式と微分方程式の対応関係をまとめまして、今回の解説を終えたいと思います。

おわりに
微分方程式という視点で振動問題(物理)を捉えてみると、物理現象の背後にある構造が明確に見えてきます。
振動問題の運動方程式には「線形・非線形」または「斉次・非斉次」の違いこそありますが、それは「単純な動きか、複雑な動き」または「自然な揺れか、外部からの揺れ」の違いです。
今回は微分方程式の解き方に着目して解説を挟みました。今後も必要に応じて解説を挿入したいと思います。
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最後まで読んで頂き、ありがとうございます。この記事が、何か皆さんの未来を変えるキッカケになれたら幸いです。
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