「誠実さ」を仕組みに変える。アートフリークがマテリアリティを全面改定した理由
こんにちは、note編集部 多田です!
以前noteで「サステナビリティへの挑戦」を宣言してから約半年。社内外から多くの反響をいただきました。アートフリークが掲げた「マテリアリティ(重要課題)」、この半年でどんな動きがあり、どんな変化が必要だったのかを取材しました。
今回も、サステナビリティ委員会のリーダーを務める執行役員 小塩俊介クリエイティブ統括本部長に、アートフリークの「マテリアリティ(重要課題)」改定の想い、そして今後の展望について語っていただきました。
話を聞いた人:小塩 執行役員 クリエイティブ統括本部長

執行役員 クリエイティブ統括本部長 小塩さん
1. 外部の視点と国際会議で気づいた、マテリアリティの「本質」
多田: 今回、アートフリークの活動の土台となる「マテリアリティ(重要課題)」を大きく改定しました。まずはこのタイミングで刷新を決めた背景を教えてください。
小塩: 正直に言えば、前回は「自分たちのやりたいこと」を言葉にするので精一杯でした。結果として、どこか視野が狭く、限定的なものになっていたんです。外部のアドバイザーの方からも、「スタンスは伝わるが、マテリアリティとしては範囲が狭すぎるのではないか」という指摘をいただいていました。
多田: 外部からの客観的な視点で、自分たちの「死角」に気づかされたわけですね。
小塩: はい。その気づきが確信に変わったのが、今年2月の「サステナブル・ブランド国際会議(SB’26)」への参画でした。
多田: 世界中の企業が集まる場ですよね。そこで何を感じたのでしょうか?
小塩: イベント全体がまるで「ひとつの会社」のように映りました。多くの参加者がお互いの垣根を越え、持続可能性という共通課題に対して真摯に意見を交わしていた姿が印象的でした。数々の試行錯誤の事例に触れる中で痛感したのは、企業とは常に社会情勢やリスクに晒されており、明日をも知れぬ不安定な存在であるということです。だからこそ、持続可能な経営には、事業と社員が共に豊かに育つためのしっかりとした「土台」が欠かせません。その土台を言語化したものこそがマテリアリティなのだと、改めて深く実感しました。

セッションで「イベントにおける資源循環」について語りました
多田: 外部環境の不安定さに目を向けたことで、事業と社員を支える「土台」としてのマテリアリティの重要性に気づき、自社の果たすべき責任を捉え直すことができたということですね。
小塩: その通りです。この気づきを糧に、アートフリークの持続性を高めるための指針を、今一度描き直したいと思い立ちました。イベント後、すぐに再定義に取り掛かりました。より広い視野で、今の私たちが本当に向き合うべき責任を5つの項目に集約した形としました。
2. 再設定した新マテリアリティ(重要課題)

持続可能な経営戦略の「土台」としてあるべき
デザインとものづくりを通じた新たな価値創造
(体験価値の最大化と可視化、安全とアクセシビリティの向上)
私たちの役割は、単なるデザイン提供ではなく「想像と予想を超える体験」をカタチにすることです。長年積み上げた感性と、データに基づく客観的な分析を掛け合わせ、また何より安全を前提とした確かな品質を追求します。常にチームとして連携し、生産性を向上させながらアウトプットの質にこだわり続ける。それがプロとしての責任です。地球環境への配慮
(気候変動への対応、資源循環率の向上、協働共創)
イベントや展示会における環境負荷の問題に、真正面から向き合います。“関係ない”と見過ごすことなく、素材の選定や施工方法を再定義し、資源循環に寄与するデザインを実践する。地球環境に対して誠実であることは、これからのものづくりにおける不可欠な条件だと捉えています。人権・労働環境の尊重
(心理的安全性の担保、安全な現場づくり、柔軟な勤務制度の確立)
誠実な組織運営の土台として、まずは働く環境の安全を徹底します。現場の安全確保を最優先し、ハラスメントのない心理的な安全性を守ること。無理な働き方に頼らず、柔軟な制度を運用することで、誰もが心身ともに健康な状態で、長く実力を発揮できる場を維持します。従業員の幸せ
(プロフェッショナルなスキル向上、正当な評価と還元、DE&Iの推進)
社員がプロとして自立し、成長し続けられる会社を目指します。個々の専門性を高め、その成果を正当に評価して還元する。また、多様な視点(DE&I:ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)をデザインの源泉として尊重します。個人の生活向上と仕事での成長がリンクし、「この会社で働いて良かった」と納得感を持てる状態を追求します。誠実な経営
(実効性のあるコーポレート・ガバナンス体制の構築)
私たちが長きにわたり信頼を得てきた根源は「誠実さ」にあります。隠し事をせず、真っ当な商売を続けること。この姿勢を単なる精神論に留めず、実効性のあるガバナンス体制(経営が正しく行われるための仕組みやルール)として明文化し、運用します。社会に対しても自分たちに対しても、常に嘘のない経営を貫き、信頼を積み上げていきます。
3. 「体験」を可視化し、プロとしての責任を果たすー新マテリアリティの深掘り
多田: 新マテリアリティの1つ目には、「デザインとものづくりを通じた新たな価値創造」を掲げました。ここでは「体験価値の最大化と可視化」に加え、「安全とアクセシビリティ」が強調されていますね。
小塩: はい。私たちの本業は、単に格好いいデザインを作ることではありません。「想像と予想を超える体験」をカタチにすることです。 ただ、感覚的な「良さ」だけで終わらせてはいけない。データを基にした客観的な分析で、その価値をしっかり可視化していく。そしてその大前提には、展示会やイベントという特殊な現場における「安全」と、あらゆる人が楽しめる「アクセシビリティ」が不可欠です。これらを追求し続けることこそが、プロとしての責任だと再定義しました。
4. 「見過ごさない」ことから始まる地球環境への配慮ー新マテリアリティの深掘り
多田: 2つ目は「地球環境への配慮」についてです。以前のマテリアリティでは「ライフサイクルアセスメント」といった専門的な用語が並んでいましたが、今回はぐっと「姿勢」に寄った言葉になりましたね。
小塩: はい。もちろんライフサイクルアセスメントや資源循環の視点は重要で、アクションとして実行すべき重要事項でもあります。ただ、マテリアリティにおいては、まずは私たちのスタンスを明確にしたかったんです。イベントや展示会の現場って、どうしても短期間で大量の廃棄物が出てしまう構造にありますよね。
多田: 業界全体が抱えている、根深い課題です。これまでは「そういうものだ」という、ある種の諦めのような空気もあったように感じます。
小塩: そうなんです。でも、それを「業界の常識だから」と見過ごすのはもう終わりにしたい。真正面から向き合って、素材の選定や施工の方法をゼロから再定義しなきゃいけない。資源が回るデザインを、当たり前に実践していく段階に来ています。
多田: 「できればやる」というレベルの話ではなくなっている、ということですね。
小塩:人権や労働環境については、すでに世の中にリードする先行事例がたくさんあります。でも、この「地球環境」の項目に関しては、私たちの業界で誰も正解を出せていないし、リードもできていない。だからこそ、会社として本気で向き合わない限り、単なるスローガンで終わってしまい、社内のカルチャーにはならないんです。
多田: 誰もリードできていないからこそ、自分たちが開拓者になるんだと。
小塩:他の会社が手を出したがらないポイントだからこそ、そこを追求することで「アートフリークはここまでやるんだ!」という驚きを与えられる。それは結果として、強力なブランディングにもつながるはずです。小手先の対策ではなく、根本から変える。そのわかりやすさが、今の私たちには必要なんです。

5. 「心理的安全性」と「現場の安全」はセットであるー新マテリアリティの深掘り
多田: 3つ目と4つ目は、特に小塩さんが今回こだわった「人」に関する項目ですね。「人権・労働環境の尊重」と「従業員の幸せ」。社長も大事にしているポイントだと思います。
小塩: ここが一番の大きな変更点かもしれません。まずは「安全」の定義を広げました。現場での物理的な事故を防ぐのは当然として、社内における「心理的な安全性」も同じくらい重要です。 ハラスメントのない環境、無理な働き方に頼らない柔軟な制度。これらが整って初めて、クリエイティビティは持続します。会社が社員を大切に扱い、社員が心身ともに健康でいられる場を維持すること。これが経営の最優先事項です。
多田: 4つ目の「従業員の幸せ」では、プロとしての成長と評価についても触れています。
小塩: 「仲良く楽しく」だけでは幸せにはなれません。個々が専門性を高め、その成果が正当に評価され、給与や待遇として還元される。その「納得感」があってこそ、この会社で働く価値が生まれます。また、多様な視点(DE&I)を単なるスローガンではなく、デザインの「源泉」として尊重していく。個人の成長と会社の成長がリンクする状態を、本気で追求していきます。
6.「誠実さ」を精神論に留めない、ガバナンスの構築ー新マテリアリティの深掘り
多田: そして最後、5つ目に「誠実な経営」を持ってきました。「正しい」ではなく「誠実な」という言葉の選択にアートフリークらしさも感じますね。
小塩: アートフリークが長年信頼をいただいてきた根源は、結局のところ「誠実さ」なんです。隠し事をしない、真っ当な商売をする。 でも、それを社員の良心だけに頼るのではなく、実効性のある「ガバナンス体制」として明文化し、運用することに決めました。社会に対しても、自分たちに対しても、嘘のない経営を貫く。これが私たちのブランドの根幹です。
7. この記事を読んでいるお客様やパートナー企業の皆さんに伝えたいこと
多田: 最後に伺いたいのですが、この新マテリアリティの実装によって、アートフリークが生み出す「アウトプット」はどう変わっていくと確信していますか?
小塩:例えば、 デザイナーの思考プロセスが根本から変わるはずです。「どうすれば資源に戻せるか」という視点が設計のスタンダードになれば、選ぶ素材も、作り方も、コミュニケーションの在り方も、自ずと変わってくる。たとえ見た目のゴールが同じだとしても、その中身(質)の解像度は以前とは比べものにならないほど高まっているはずです。
多田: この記事を読んでいるお客様やパートナー企業の皆さんに、今一番伝えたい決意を教えてください。
小塩: これからも社会を豊かにし続けるひとつの会社として、これからも実証実験を繰り返していきたいです。正直、今の時代に無知でいることや、社会課題を無視することは「かっこ悪い」と思うんです。私は、マジで社会を変えようとしている姿勢こそが「かっこいい」と信じています。 ただ、これは1社だけで成し遂げられることではありません。社内外を問わず、この挑戦にワクワクしてくれる皆さんとコラボレーションしながら、新しいスタンダードを積み上げていきたい。それが今の僕の一番の決意です。

編集後記:変わり続ける勇気こそ、誠実さの証
今回のマテリアリティ改定を通じて感じたのは、アートフリークがより「内側」を見つめ直し、うわべだけではない、地に足のついた強靭な組織へと進化しようとしていることです。
マテリアリティは、一度決めたら変えてはいけない「石碑」のようなものではありません。組織が成長し、社会の変化に直面する中で、今の自分たちが一番「腹落ち」するものへと磨き続けなければ、ただの飾りになってしまいます。
新しい5つのマテリアリティは、私たちが社会に対して、そして自分たち自身に対して約束する「生き方」そのものです。この基準をコンパスにして、これからも「面白いがずっと続く世界」を、誠実にデザインしていきたいと思います。
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