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山の恵み

〜食欲の秋〜

 山で栗拾いをしたのは3日程前。
 山栗は小さいので拾うのも大変なら後で食べるのも大変です。山へ行く交通費や手間、それから安全性を考えれば買った方が安いのは言うまでもありません。それにしても自然のものを食べるのに安全性を考えなくてはならないと言うのは何と忌々しいことか。

 以前、その場所で出会った方は隣県から登山に訪れた方でした。手にはワラビの入った袋を持っています。
「ウチの県では山菜が採れなくなっちゃったから…。」
 寂しそうに言っていたのを思い出します。
 記憶では昨年の春にワラビから放射線が検出されたと報道されていたと思います。たしか、ワラビを持った登山者と話をした翌日あたりだったと思います。確認しようとその記事を探しましたが見当たりませんでした。
 失ったものの大きさを知るためにまだ長い時間がかかるのかも知れません。

 そんな想いをしてまで山へ出かけるのは、自然の旬のものを愛で、戴くことで身体を自然とシンクロさせているのかも知れないとも思うのです。

 気休めにしかならないものの、参考までに栗拾いの現場近くの舗装道路上、地上1mくらいを簡易測定器で空間線量を測定すると0.09μSv/hでした。

 問題にならないレベルだとは思います。

 現在の県内の測定データをネットで確認すると注意を要すべきデータは見当たらないようでした。ただ、知りたい地域の知りたいデータがなかったりします。参考にしかならないとは言うものの実情を把握することは大切ではないでしょうか。

 さて、そんなことは意に介さぬかのように山では地元の人が秋の恵みを享受している様子です。現地で出会った方は50代くらいでしょうか。既にコンビニの小さいビニール袋に2/3ほどの山栗を拾っていました。
「先を越されましたねぇ」と笑って話しかけると、照れ隠ししつつ「じいさんたちが朝早く来るからよぉ。」といささか不満な様子です。思った程拾えなかったのかなと思ったら、その人の足下に栗が落ちています。
「ほら、そこにも落ちてるじゃないですか。」
「ん?ありゃ。ホントだ。目がいいなぁ。」
 山で写真を撮って歩くので慣れているのかも知れません。
「ボクは今から行ってくっから。んだらねぇ。」
 2つ程拾った栗をその人に渡して別れました。

 山の中は正に山栗シーズン真っ盛り。写真を撮っていると静かな山の中に栗が落ちて来る音が聞こえます。
「パシッ!」「パキバキッ!」「ココン!」
 いつも歩くコースがあるので眺めながら山道の道端に落ちた栗を拾ったりキノコの写真を撮ったりして歩きます。そうして、お馴染みの場所に行くとあちこちに栗が落ちていました。
 さっきの人も一回りして来たと言ってましたが、一体どこを見て歩いたんでしょう。朝早く来る人がいたにしても次々に落ちて来るのだから関係ないような気がします。しばらく栗拾いに熱中しましたが、持って来たコンビニの袋がいっぱいになってしまったのでそれ以上拾うのをやめました。たくさんありすぎてめんどくさくなったのです。どっちにしても処理するのも食べるのもボク一人ですから、適当にしないと後始末に苦労します。

 そうして山栗を持ち帰ってみたら何と大きなザルに一杯分ありました。栗ご飯も考えましたが、あいにく餅米を切らしています。翌日に持ち越すことも考えたものの、山のものはその日に処理することを信条としています。特に山栗は虫が入っていたりするので早くするに越したことはありません。

 そこで鍋一杯の栗を茹でることにしました。様子を見ながら加熱して程よい柔らかさになったら火を止めます。山栗が手に入るとこんな風に茹でてしまい、ひとつずつポリポリ食べています。ところが、今回は栗が多すぎるのです。食べきる前に傷んでしまうのではないかと心配になりました。そして何よりひとつずつ食べるのがまためんどくさいわけです。

 それで2日目に栗の皮むきすることにしました。包丁で皮をむいて中をスプーンで取り出します。全部むくのに2時間程かかったかと思います。美味しいものを食べるためにはめんどくさいことから逃げられるわけではないんですね。やっとのことでむき終わってその日は終了。冷蔵庫で保管です。

 栗の形はもう崩れてしまっているので栗ご飯とかには向かないでしょう。どうしたものかと調べたらスープにするとかホットケーキにするとか色んなアイディアがあるようですね。それでもやっぱり栗本来の美味しさを活かしたいなぁと思いました。そしてボクは栗100%の栗きんとんが大好きなのです。
 以前、会社に勤めていた頃、女子社員のひとりが手作り栗きんとんを持って来てくれたことがあって、それだけでうっかりそのコを好きになってしまいそうになったことがあります。栗きんとん好きになったのはそれ以来でしょうか。

 ここはやっぱり栗きんとんでしょう。
 材料は栗と砂糖と塩だけです。

 砂糖と塩をお湯に溶いた方が良いと言う記事を見つけたので、その手法にしました。以前、おからを作ったことがあり水分を飛ばしつつ焦げないように加熱するイメージしやすかったのです。毎度ながら分量は適当です。幸い栗がたくさんあるので砂糖と塩を少量のお湯に溶いて味を確認し、そこに少しずつ栗を投入します。栗のゴロゴロした感じが結構残っていたのでお玉で潰しながら加熱しました。栗は全量の半分程使いました。

 そしてラップで包んでやっと完成です。このまま冷凍すると長く保存出来るとか。包み方が大きすぎる気がしたので1つの包みを開けて中身を2つに分けて食べてみることにしました。誰か他に食べてくれる人がいるなら成形にも楽しみができそうです。ちょっぴり和菓子職人の方の気持ちが解るような気がしました。

 形はイマイチですが、我ながら味は文句のつけようがありません。
 栗の味と風味を殺さない程度の甘みとつぶつぶ感も程よく残る絶品です。

 ただし、三日がかりになったので二度とやらないかも知れません(笑)

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ご精読ありがとうございました。

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