生命の源泉
〜関わり〜【1】
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子どもの頃は市営の団地住まいでした。
でも、近所に山や畑や田んぼだったので、虫捕りやメダカ捕りに不自由することはありません。子どもならではの縄張り意識があって、大して仲の良くない同級生が虫捕りに来たりすると面白くないのです。お気に入りの樹とその場所はもちろん極秘です。目立つ場所にある樹は極秘にならないので異常がないかパトロールするかのように巡回します。
ある時、クワガタやカブトムシのいる樹を見ていたら、ちょっとおかしなことに気がつきました。樹の幹にぽっかり穴が空いて中から音がするのです。穴と言っても椎茸栽培でほだ木に椎茸菌を打ち込むの穴のように小さな丸い穴です。そして中から聞こえる妙な音が聞こえます。
「ギイィーギィィー」
不思議に思って恐る恐る中を覗き込むと何か動いてます。
その樹には、カブトムシやクワガタムシの他に定番のカナブンやスズメバチ、時には大きなムカデが集まることがありました。下手に穴を覗き込むとスズメバチが飛び出して来ないとも限りません。
でも、どうやらそうではなさそうです。慎重に観察していると、それはどカミキリムシのようでした。しかも、大きなシロスジカミキリです。
シロスジカミキリはボクの知るカミキリムシの中では大型のタイプで力も強く、掴み方を間違って指先を噛み切られたことがありました。クワガタムシに挟まれても痛いですが、カミキリムシの歯(顎)はニッパーのように短くて鋭いので子どもの指なんてあっさり切れます。痛い目にあったにも関わらず、ボクはこのカミキリムシが好きでした。大きくてかっこ良く見えたのです。
そんなカミキリムシの王様が小さな穴の中でギィギィ唸っているのです。どうやら、幼虫時代を樹の中で過ごした王様は、これから広い世間にお出ましになる所の様です。こんな現場に遭遇したのは後にも先にもこの時だけです。
王様は、小さな壁の壁面を鋭い歯で削りながらにじり出るように穴の外を目指していました。狭い穴の中で長い足を折り畳んでいます。首(胸)の部分にトゲのような突起があるのでそれが壁面に引っかかって邪魔しているようにも見えます。手伝ってあげたい衝動に駆られましたが、ここは王様にとって越えなくてはならない試練です。ボクはじっと王様の様子を見ていました。
やがてシロスジカミキリは真っ暗な樹の穴の中から明るい世界に出て来たのでした。
たぶん、ボクはその様子を1時間くらい見ていたと思います。
後日、近所の子どもがシロスジカミキリムシが樹の穴から出て来る所に遭遇したと聞きました。待ちきれずに頭を引っぱってしまったとか。
「そこは待ってあげなくちゃ…。」
心の中でそう思いましたが、もう間に合いません。千載一遇のチャンスを活かすことも殺すこともほんの少しの違いなんです。
幸いにして自然環境が近くにあったボクは、知らずにそんなことを学んでいたのかもしれません。ただ、社会に出てから街の様子がさっぱり分からないので何かと苦労した気がします。人の多い所にいると1時間くらいで人酔いしますから、どちらがいいとは言えませんね。
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ご精読ありがとうございました。
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