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ヘレン・フランケンサーラー:色彩の呼吸


ヘレン・フランケンサーラー:色彩の呼吸

Helen Frankenthaler

ヘレン・フランケンサーラー(Helen Frankenthaler /1928–2011)は、20世紀後半のアメリカ合衆国を代表する抽象表現主義の画家であり、特に*「カラーフィールド・ペインティング」の先駆者として美術史にその名を刻んでいる。
ヘレン・フランケンサーラーの最大の功績は、1952年に発表された記念碑的作品「山と海」(Mountains and Sea)で見出した「ステイニング(染み込ませ)」という技法である。これは、薄めた油彩絵具を未下地のキャンバスに直接流し込み、繊維に色を染み込ませる手法だ。この技法により、絵画は「キャンバスの上に塗られた物質」であることを超え、色と支持体が一体化した、空気感のある独自の空間を生み出した。

‘Mountains and Sea’ - Helen Frankenthaler 1956–1959

ヘレン・フランケンサーラーの表現

Helen Frankenthaler - Painting Without Rules | Guggenheim Museum Bilbao
Flirt 1995 - Helen Frankenthaler 
riverhead 1963 - helen frankenthaler
The Bay 1963 - Helen Frankenthaler 

ヘレン・フランケンサーラーの表現は、ジャクソン・ポロックの「アクション・ペインティング」から強い影響を受けている。しかし、ジャクソン・ポロック(Jackson Pollock/1912- 1956 US)の攻撃的でダイナミックな筆致とは対照的に、彼女の作品は叙情的で、自然の風景を彷彿とさせる優雅な広がりを持つのが特徴である。彼女はキャンバスを床に置き、四方から働きかけることで、偶然性とコントロールの絶妙な均衡を保ちながら、純粋な色彩の視覚体験を追求した。

(註)*カラーフィールド・ペインティング(Color Field Painting):1950年代後半から60年代にかけてアメリカで展開された、巨大なキャンバス一面に鮮やかな色彩の面(フィールド)を描く抽象絵画のスタイル

キャンバスが呼吸しているかのような・・

by helen frankenthaler 1964
by Helen Frankenthaler

そのコンテンツは、キャンバスが呼吸しているかのような透明感が美しい。
この革新的なアプローチは、後にモーリス・ルイスやケネス・ノーランドといった画家たちに多大な影響を与え、抽象表現主義から、*カラーフィールド・ペインティング、さらには、*ミニマリズムへと至る架け橋となった。

(註)*ミニマリズム(Minimalism):余分な装飾や物を削ぎ落とし、本質的なものだけを残す考え方や手法

最後に

ヘレン・フランケンサーラーは生涯を通じて、版画、タペストリー、彫刻など多様な媒体で実験を続け、常に抽象芸術の可能性を押し広げた。その作品群は、戦後アメリカ美術における女性アーティストの地位を確立すると同時に、絵画の本質を「色彩と空間の純粋な対話」へと導いた。フランケンサーラーが築いた静謐かつ力強い色彩の世界は、今、なお色褪せることなく、現代の鑑賞者に深い感銘を与え続けている。

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