(今日の一枚)今村紫紅:護花鈴
今村紫紅:護花鈴

今村紫紅(いまむらしこう/1880-1916)の代表作「護花鈴(ごかりん)」は、1911年(明治44年)の第5回文展に出品され、紫紅が新時代の日本画旗手として注目される契機となった作品である。

本作の題材は
本作の題材は、唐の玄宗皇帝が楊貴妃と花見を楽しんだ際、鳥から花を守るために金色の鈴を付けた赤い紐を桜の枝に張り巡らせたという「天宝遺事(てんぽういじ)」の故事に基づいている。画面には、咲き誇る桜の木々の間に、斜めに交差する鮮やかな赤い紐と、そこに吊るされた鈴が描かれている。一見すると平面的な構成だが、この紐の配置が画面に独特の奥行きとリズム感を与えており、伝統的な歴史画の枠を超えた斬新な空間表現がなされている。

また、今村紫紅の天賦の才である色彩感覚が遺憾なく発揮されている点も大きな特徴である。古画の形式を借りつつも、柔らかく明るい色彩でまとめられたその作風は、当時の日本画壇に新鮮な驚きを与えた。実業家であり美術収集家の原三溪は、本作を見て紫紅の才能を確信し、短い生涯にわたる支援を決意したと言い伝えられている。(タイトルの画像は、絹本着色・六曲屏風一双・右隻)
最後に
伝統的な写実主義から離れ、象徴的かつ装飾的な美しさを追求した本作は、大正期の自由闊達な日本画の先駆けとなった記念碑的作品である。
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