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速水御舟「あけぼの」:静寂に宿る意志


速水御舟「あけぼの」:静寂に宿る意志

速水御舟(1894-1935)の「あけぼの」(1933年頃、滋賀県立美術館蔵)は、晩年の彼が到達した清澄な境地と、その峻厳な歩みを象徴する名品である。本作を読み解くには、常に自己を否定し、変革を求めた御舟の「人文像」を欠かすことはできない。
東京の浅草に生まれた御舟は、日本画の伝統に安住することを激しく拒絶した画家であった。「梯子の頂上に登ることは、次の梯子に移ることである」という言葉通り、一つの画風を確立してはそれを壊し、新たな表現へ挑むことを生涯の信条とした。この不断の自己研鑽と、孤独を恐れぬ求道者的な姿勢が、本作に漂う類まれな緊張感の源泉となっている。

速水御舟

「あけぼの」に描かれた一羽の鳥は

速水御舟 - あけぼの 1934(昭和4年)

「あけぼの」に描かれた一羽の鳥は、単なる写生の対象を超え、夜明け前の静寂の中で独り光を待つ御舟自身の精神性の投影とも見て取れる。背景の銀灰色は、徹底した観察眼と計算し尽くされた空間構成により、光が差し込む直前の湿り気を帯びた空気を見事に表現している。ここには御舟の冷徹なまでの客観性と、対象に没入する深い内面性が同居しているのである。

御舟にとっての「写実」

御舟にとっての「写実」とは、表面を模写することではなく、対象の真髄を掴み取ること(真を写すこと)であった。本作における精緻な筆致と余白の美は、装飾性を削ぎ落とした先に現れる、彼の高潔な人格の現れに他ならない。
1935年、傷寒(チフス)により40歳という若さで急逝したが、その短い生涯の中で彼は「名作を一点描くごとに、それまでの自分を殺してきた」と言われるほど激しい変遷を遂げた。

「あけぼの」は

「あけぼの」は、日本画の近代化に命を懸け、美の真理を追い求めた天才・速水御舟の、静かながらも強靭な意志が結晶化した傑作といえるだろう。

-artoday

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