連載「TUNAGO」第9回【インタビュー】いわき市議会議員・遠藤崇広さん~全世代が安心・安全に暮らせる地域へ~
連載「TUNAGO」第9回では福島県いわき市議会議員・遠藤崇広さんへのインタビューをお送りします。東日本大震災後のいわき市は、産業復興や復興まちづくり、震災伝承などさまざまな分野で課題を抱えていると話す遠藤さん。震災伝承に関しては自らが任意団体を率い、「自分ごと化」につながる新手法の創出に取り組む実務者でもあります。遠藤さんは市が2022年に創設した「いわき市登録防災士」の制度を高く評価。「こうした、地域の皆さんに参画を促すアプローチに、面的な防災力向上へのポイントがあるのではないか」と見ています。

――どのような思いで市議会議員を志したのでしょうか?
「この復興で終わってしまってはまずい」という危機感が背中を押しました。震災後のいわき市はまちづくりや産業、地域社会など、さまざまな領域で課題を抱えています。
――課題について具体的に教えてください。
まず産業復興がスムーズに進んでいないと感じています。地域の復興をけん引するのは産業の復興です。
製造業を見ると、福島第一原子力発電所事故の影響で、市内産の製品を流通させられない地域があります。サプライチェーン(供給網)の縮小は、技術革新の遅れにつながりかねません。
水産業や水産加工業も同様です。豊間、薄磯、沼ノ内各地区では震災前、かまぼこの生産が主要産業でした。市内には関連企業が数十社あり、工場も多く立っていましたが、震災後にだいぶ減少してしまいました。働く場所がなければ、いわき市に住もうというモチベーションが起きません。

観光産業を見ると、原発事故やコロナ禍の影響で、客足が伸び悩んでいる状況がうかがえます。震災から地道に復興している最中にコロナ禍が訪れ、「立ち上がりたい」という気持ちをそいでしまったケースもあります。
――原発事故の影響で、相双地域からいわき市に避難している人が大勢います。
元からの市民と、避難してきた人との間でミスマッチが起きていることが気になります。私は日本ハムファイターズ球団(現北海道日本ハムファイターズ)で勤務していた際、球団の北海道移転に伴う地域社会との共生に携わりました。その知見を生かし、東日本大震災の被災者支援に取り組む「NPO法人みんぷく」に所属して、災害公営住宅・復興公営住宅でコミュニティーづくりに取り組んだ経験があります。

経験を踏まえると、こうした住宅に住む人は、出身も世代もさまざまです。生活習慣が異なるほか、補償の違いによる生活格差もあります。お互いのコミュニケーションが円滑に図れているとは言えません。これはいわき市だけでなく、福島県全体が抱える課題です。
――防災緑地の整備をはじめとする、震災後の水害対策はどう見ますか?
十分とは言い切れません。いわき市は東日本大震災の後も、19年の台風19号(東日本台風)や23年の台風13号で、複数回の水害に見舞われました。津波を見据えた施設整備は進展しましたが、内水氾濫など、津波以外の水害に対するハード整備は途上にあると感じています。
このことは先ほど申し上げた、産業復興の問題にも関連してきます。東日本大震災の後、債務を負って施設を再建した事業者が、返済期に再び水害で被災したケースがありました。多重被災の問題です。

多重被災によって、2重ローンを抱えた事業者もいます。事業者の経営が悪化すれば、従業員の収入減につながり、社会福祉や医療といった分野にも影響が及びます。元々高齢化に伴い、社会福祉や医療の問題はありましたが、多重被災で一層深刻化した印象を受けています。
――防災教育をはじめ、防災に関するソフト対策の進展状況はどうでしょうか?
震災を経験していない世代が育ってきています。しかし学校教育に携わる先生方の業務量は多く、防災教育にまで手が回らない学校があるのも事実です。経験していない世代にとっては、東日本大震災はもう昔話になりつつあるのではないでしょうか。
こうした世代に被災を「自分ごと化」してもらうには、実体験により近い形で被災を受け止めてもらえる手法が必要です。若年層への震災伝承にどういう手法が効果的なのかは、私も今まさに模索しているところです。私は任意団体を運営し、活動の一環として過去の津波被害を伝える「防災紙芝居」の制作・普及に取り組んでいます。

こうした若年層への防災教育の役割は、個人的にはいわき震災伝承みらい館に、一層多く担ってほしいと考えています。
――防災力を面的に高めるには、どのような取り組みが求められるでしょうか?
いわき市は22年、「いわき市登録防災士」の制度を設けました。市が防災士の資格を持つ人を登録し、合同訓練や合同研修を開催しています。市が防災士をとりまとめる制度を持っているのは、全国的にも珍しいと思います。

この枠組みで、防災の取り組みに地域の皆さんが参画してくれます。こうしたアプローチに、面的な防災力向上に向けたポイントがあるのではないかと思います。
ただ市でこのような危機管理施策を所管する部署と、いわき震災伝承みらい館を所管する部署が異なるため、双方の相乗効果がうまく生み出せていないとも感じています。横串を通し、一体的に防災力を強めてもらえるようにするのが、議員としての仕事だと考えています。
――今後の活動の目標を聞かせてください。
いわき市では近年、若い人の流出が顕著です。震災直後は「この地域をよくしたい」と踏ん張り、市内にとどまる人も多かったのですが、それがどんどん減ってきている状況です。
地域の魅力を復活させ、若い人をはじめとする全世代が安心・安全に暮らしていける地域になるよう、地道に活動を続けたいと思います。(文・舞台公演「ある光」製作委員会事務局)
遠藤崇広氏(えんどう・たかひろ)1974.11~ 福島県いわき市出身
いわき市議会議員
福島県ソフトバレーボール連盟副会長
いわきソフトバレーボール連盟会長
いわきバレーボール協会副会長
御厩小学校、平第一中学校、日本放送協会学園高等学校、帝京平成大学情報学部卒。放送大学大学院文化科学研究科修了(修士)。
日本ハムファイターズ球団(現北海道日本ハムファイターズ)、NPO法人みんぷくコミュニティープロジェクトマネジャーなどを経て20年よりいわき市議会議員。
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