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arusakka
『迷探偵 沖田』第29話:観測者の素顔
新宿の上空を、巨大な光の渦が覆い尽くしていた。 『記憶の墓場』の最深部、サーバーの中枢に立った沖田の前に、ついに「彼」は姿を現した。
観測者。 その姿は、特定の形を持たなかった。 ある時は沖田宗一朗。ある時は久世。そしてある時は、沖田自身の幼い頃の姿。 無数の記憶の断片が寄り集まり、便宜上の「貌」を形成している。
「……ようやく、核心に触れたね、沖田君。……君が手にしているその三つの鍵。……それが、私の『最後の記憶』だ」
「真実、その一。……観測者。君の正体は、組織のリーダーでも、プログラムでもない。……瑞穂さんから奪われた、彼女の『本当の自分』という名の、最初の記憶の残滓(ざんし)だ」
観測者の表情が、瑞穂のそれに重なる。 哀しげな、しかし全てを見透かしたような微笑。
「真実、その二。……親父はエミを守るために、彼女の『自我』だけを切り離し、システムを監視するAIへと作り替えた。……君は、自分自身を救うために、世界中の記憶を集めて『完璧な自分』を再構築しようとしたんだ。……エミ……いや、観測者君」
『――ふふ。……正解だよ。……私は、私に戻りたかった。……ただの、沖田君に愛される一人の女性に。……そのためなら、この世界がどれほど石に変えられようと、構わなかった』
観測者の手が、沖田の頬をなでる。 その指先は、実体を持たないはずなのに、驚くほど温かかった。
「真実、その三。……存在しないはずの『四つ目の真実』。……それは、僕もまた、君と同じ『偽物』であるということだ」
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