「アマデウスの魔笛の秘密」 第三章
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深淵の旅路

第二章の最後にお伝えした深淵なる象徴画。すぐにDecodeしたいのは山々ですが、象徴画の解読の前に深淵なる小説について知っておかねばなりません。深淵なる小説と象徴画は、どちらも「魔笛」の解読に不可欠ですから。本件はそこからのスタートです。では始めましょう。
・智慧の流出

十七世紀、作者、出所、ともに不明の怪文書が突如としてドイツで現れました。その文書とは「全世界の普遍的かつ総体的改革」と「友愛団の名声」、いわゆる薔薇十字文書です。ローマンカトリックが生み出したMatrixの世界において、多くの啓明された人々を生み出すきっかけとなりました。
時は流れて十八世紀。この時代はとても多くの啓明活動が胎動しました。簡潔に申し上げれば、さまざまな形で密儀が表に出てきたということです。
サンジェルマン伯爵はヘッセン・カッサルのカール公の宮殿の秘密の地下室でメイソンや薔薇十字、そしてイルミナティの儀礼を行なっていた。
カリオストロ伯爵はエジプト儀礼を完成させ、メンフィスの儀礼を作り出した。
クール・ド・ジェブランは遊戯用のトランプカードがエジプト人から伝わる聖なる書物そのものであるという仮説を展開した。
出所も作者も不明な「セトスの生涯、古代エジプトの不屈の逸話から引き出された伝記あるいは物語」という謎の本が1777年にドイツ語翻訳された。
このことに関してマンリー氏は以下のように述べております。
高度に専門化された分野においてこのような研究が突然しかも多量に行われた背景には、十五世紀以上も前に用心深く姿を消した秘密哲学の組織を回復しようとする運動があったと思われる。
第二章「イルミナティ」の項の引用も思い出してください。
終始隠れたままの状態にある有力な人々がヴァイスハウプトの背後で動き、その活動の隠れ蓑として彼を前面に押し出したと考えることもできるのではないだろうか。
つまりこの時代、終始隠れたままの状態にある有力な人々により、十五世紀以上も前に用心深く姿を消した「秘密結社」を復活させる動きがあったということ。MatrixシリーズのRed三作に綴った歴史が頭に入っていれば簡単ですね。きっとあの一族のこと。わたくしの視点では十八世紀どころかルネッサンスを仕掛けたのもこの一族。

・密儀と小説

そんな一族の智慧の流出の結果の中で特に注目すべきは、その出所や真の作者が不明とされるファンタジー小説「セトスの生涯」。わたくしが深淵なる小説と呼ぶものです。表向きの作者はジャン・テラッソンとされていますが、私見を述べるならば、彼が完全な創造者として「無」から「有」を生み出したわけではないでしょう。むしろ既存の「元ネタ」をもとに脚色・再構成し、小説という形に仕上げたのではないかと考えています。シェイクスピアもそうだったでしょ?
そのような作品(セトスの生涯)の起源を辿ることは常に困難である。必要があれば、許可を得て、あるいは許可を得ないである学者の作とされることもあるが、その学者もその問題について確実な言質を与えることはない。
前述の薔薇十字運動、サンジェルマン伯爵が関わったとされるイルミナティの儀礼、カリオストロ伯爵が創設したメンフィスの儀礼、そしてその他の啓明結社で行われた密儀や儀礼は、一見異なるようですが共通して啓明思想や古代の象徴を用いており、あの一族が流出させた「智慧」から枝分かれしたものと見るべきでしょう。したがって「セトスの生涯」もまた、ファンタジー小説とはいってもただのそれではなく、密儀を多分に含むファンタジー小説であると言えます。

ダ・ヴィンチの時代において、密儀や真理は見る目を持つものだけが見えるように分厚いヴェールで覆われていました。そのため、容易には実体を掴むことができませんでした。しかし、時代が進むにつれ権力構造が変化し支配者の力が弱体化するにつれ、密儀や真理がファンタジー小説に組み込まれるほど表に現れるようになったのです。この変化は、社会の権力構造に応じて密儀や真理の扱われ方が変容したことを示しています。
つまり、かつては隠された知識として扱われた内容が、時代の移り変わりとともに娯楽や文学に組み込まれ、人々の目に触れる形へと変わっていったのです。そう考えると、18世紀のオペラに秘密結社の秘密が紛れ込んでいたとしても特に不思議なことではありません。それどころか時代背景を考慮すれば、ごく自然な流れとも言えるでしょう。また、古き智慧が娯楽に紛れ込んでいるのは現代においても同じです。いつの時代もそんなまさかが現実なのですよ。


ここまでで大切なことは、ファンタジー小説「セトスの生涯」は、サンジェルマン伯爵やカリオストロ伯爵が行っていた密儀の儀礼と根っこは同じであるということと、18世紀には小説やオペラという娯楽作品に密儀が組み込まれるほど智慧の解放が進んでいたということ。
思い出してください。第二章までで綴ったことはほとんどがまがい物でした。したがって今のあなたの心は、「魔笛」に秘密結社の秘密が隠れているという本シリーズのテーマまで怪しくなっているのではないでしょうか?

しかしご安心を。
なぜなら、冒頭から長々と述べてまいりました密儀が組み込まれた小説「セトスの生涯」は、くだんのオペラ「魔笛」の元ネタなのです。つまりギーゼケが「セトスの生涯」を読み「魔笛」の歌詞を書いたということ。ギーゼケもアマデウスと同じロッジに所属していたフリーメイソンであり密儀に精通しておりましたから「セトスの生涯」に組み込まれていた密儀が読み取れたことでしょう。
「セトスの生涯」が元ネタであると理解すれば、このオペラの舞台の背景に古代エジプトの神「セト」が描かれている理由にも納得がいくでしょう。「セトスの生涯」は、その内容から古代エジプトの密儀の影響を強く受けており、「魔笛」の物語や象徴がこれを継承していることは明白です。

では「魔笛」の元ネタである密儀が込められた「セトスの生涯」を見てみましょう。
・セトスの生涯

「セトスの生涯」は、古代エジプトの王子セトスを主人公とした物語。この作品はギリシャの原稿から翻訳されたという架空の設定で、教育小説や冒険小説の要素を持つ物語です。端的に申し上げれば冒険活劇ファンタジー。海外では「魔笛」の元ネタとして結構有名です。設定で「ギリシャの原稿から翻訳された」とされておりますが、ネタ元が明かせぬ著者のせめてもの良心ではないでしょうか。
物語は、セトスが王になる準備のために行った厳しい教育、秘密の司祭団への入会、そしてアフリカを旅しながら学んだ経験などが主軸となって描かれております。特に、ピラミッドの地下世界における試練を通じて、道徳的・哲学的な教訓が強調されております。そんな王子セトスの冒険物語の流れを以下に抜粋いたします。(英wiki)
王子の教育: 若いセトスは、賢明な師アメデスの指導を受け、身体的、精神的、道徳的な訓練を重ねます。
秘密の司祭団への入会: ピラミッドの中で厳しい試練を受け、火、空気、水、そして死への恐怖を乗り越える儀式を体験します。この過程で、古代の知識と秘儀の深遠な教えを得ます。
アフリカへの旅: エジプトを離れ、広大なアフリカ大陸を旅し、異文化との接触や多様な経験を通じて学びを深めます。
啓蒙された統治者への成長: 試練と旅で得た知識を活かし、最終的に賢明な素晴らしき王となります。
徐々に”らしく”なってまいりましたでしょ?では更にまいりましょう。上記の中で特に重要な部分は「2.秘密の司祭団への入会」です。ここで行われる儀式の名前は「Mysteries of Isis / イシスの密儀」です。
ではなぜこの「イシスの密儀」の部分が重要なのか?

その理由は、 「セトスの生涯」に組み込まれた古代の密儀は「イシスの密儀」の部分であり、「魔笛」に組み込まれた密儀はその「イシスの密儀」の部分だからです。その証拠に、「魔笛」の舞台設定はエジプトであり、讃えられる神はオシリスとイシスでした。大切な象徴的な部分は変えられないのですよ。象徴を変えてしまったら何が何だかわからなくなってしまうから。
神性を扱う偉大な教師たちは、古代の書物がほぼ象徴的に、しかも秘儀参入者にしかわからない言葉で書かれていた、という点で意見が一致している
H・P・ブラヴァッキー
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