人.



あ、もしもし、
うん、ごめん、昼休みちょっと短くなっちゃって折り返せなかった。
え?いや、今の時期だけだよ。毎年そうじゃん。
あとはあの、新人さんの担当になったからさ、そう。
うん、それ以外は全然、平常通りですよ。

あー、ありがとね。まだ食べてないけど。
してるよ~、ちゃんと腐らせないで食べてるし。量もうちょっと減らしてもいいよ野菜は。おいとけないし。
いや、いないよこっちでそんな付き合いのあるひとなんて。
会社になんて持ってけないよ、田舎じゃないんだから。
友だちにふるまえるほど料理できないの知ってるくせに…
とにかく自分で消費してるから、消費できるくらいにしてもらえると助かります。はいはい、感謝してます。

それじゃあ、明日も朝からだから、うん、うん、また電話するよ。
大丈夫大丈夫。はーい。





えっと、じゃあ、深代さん。
今日はこっちのデータ入力やってみよう。
うん、まずこのファイルのここ、これがうちの部署のデータね。これは自動入力されるものなんだけど、隣に並んでる他部署の行は私たちが手入力で全部やってくの。ね、めんどくさいよね笑 これも自動化されればいいんだけどそうもいかないんだってさ。
で、その入力データの元がまた別ファイルにあって、各部署からメールで、そう、このフォルダで確認できるから、一旦全部ダウンロードしてから2画面にしてやったほうが楽だと思う。プリントアウトしてもいいけど、経費がなんだーって、湯沢さんに怒られちゃうかもしれないから笑

! はーい。
噂をすれば湯沢さんだ。ちょっと行ってくるね。
一旦今言ったところまで進めてもらって、戻ったら確認させてもらうね。お願いします。


はい、お待たせしました。なんでしょう?
深代さんですか。え、あー、ええ、そうですね、まあゆっくりなところもありますけど、でも丁寧ですし、
あー、そうですよね、いやほんと湯沢さんくらい速くね、できたらもちろん、ええ。
あ、今ですか?部署まとめのデータ入力を、え、いやあ、はは、そうですね、たしかにまだ不安ですけど、できるようになったら湯沢さんの仕事も、ええ、そ、そうですね。いやできない、とは、ええ。と、とりあえず今日はあれやってもらって、私があとで確認ちゃんとするので、ええ、この前のは確認不足でした。はい、すみません。
ああ、いやもちろんお手をわずらわせようとして、いや、ええ、お忙しいのはもう、見てわかります。はい。
あー…はい、そうですね、すみません。はい、はい、以後気をつけます。はい、すみません。ありがとうございます…


深代さん、入力どうですか?
…うん、おっけー、そしたら続きもそのままお願いします。
ん?…ああ、いや、私が怒られてただけだよ!深代さんに言ってなかっただけで個人的にちょっとやらかしちゃったからさ、そうそう、恥ずかしいなー隠してたのに笑
指導もね、不慣れなところばっかりだから、遠慮なく言ってね。
私に言いにくかったら横山さんとかに言って、聞いてもらってもいいし。うん。
…じゃあ、続きよろしくね。終わったら呼んでください。確認するので。




深代さん、ちょいちょい確認してごめんね。入力どう?
え、あ、終わった?ごめん、呼んでくれてたの聞こえてなかったかな?
え、あ、そう…
そ、そしたら、遠慮なく声かけ続けてもらえるとこちらも助かります、うん。
いやあ、そうだよね、先輩には声かけづらいよね、うん、でも、最終確認で目を通させてもらったほうが…いや、深代さんの仕事を疑ってるわけじゃなくてね?ちゃんとやってないとかそんなこと…なんかそんな、?え、雰囲気?
そうかな…?そんなことないよ。丁寧にやってるし、まだやり始めたことばかりで時間がかかるのは当たり前で…いや、遅いとかじゃなくてね、ちょ、ちょっと、落ち着こうか、そんなこと誰も言って、ちょ、きゅ、休憩室、休憩室行こうか!

あ、す、すみませんちょっと、
横、横ちゃん、ごめん、深代さんのPCに、うん、ごめんね、送信ファイルに、そう、
ちょっと行ってくるね。



……はい。デスクに置いてたお菓子とか、甘いの好きっぽかったからココアにしたけど、微糖のコーヒーもあるよ、どっちがいい?ん、はい、じゃあ、私がコーヒーもらうね。

落ち着いた?
うん、えっと、あのね、いいんだよ。慣れてないのは当たり前なんだから。
今は色々と出来るようにするための準備期間でしょ。人間関係も、仕事も、全部がまだ最初の一歩だから、誰がなんと言おうと、いいんだよ。
私もね、本当に色々やらかしてきたし、今だってそうだし。新人のころはとくに湯沢さんにめちゃくちゃ怒られてね笑 当時の私の教育係の先輩はね、今もうご結婚されて辞めちゃったんだけど、すごいいい人だったからなんとかやってこれただけで。うん。

深代さん、雰囲気って言ってたけど、それは主に私のせいだよね。うん、あの、もっと話しかけやすいようにとか、仕事の教え方もね、へただと思うし、自分の仕事もノーミスに完璧!とかは、出来ないからさ、あの、こう、気をつけます。それで、できればお互いにね、助けあっていけたらいいなと思ってるんだよね。
深代さん真面目で丁寧だから、私のミスとかも見つけてくれると思うんだ?うん、だからほら、ダブルチェックもお願いしてるでしょ?そう、だから深代さんの仕事のやり方を疑ってるとか、そんなのはありえないよ。

人間のやることだから、どんなにベテランになろうがミスはありえると思ってて、でもそれをミスのままにしないためにとか、同じミスを繰り返さないように会社にはたくさん同僚がいて、こう、持ちつ持たれつだと思うからさ、私は深代さんが色んなことが出来るようにまず教えるし、バックアップするし、それで私の事も助けてもらえると、うん、嬉しいな。よろしくお願いします。

……えっと、それじゃあ、私先に戻るから、深代さんもうちょっと休んでていいよ。
その間さっきのデータ見させてもらうね。落ち着いたら戻ってきて、ね、うん。



横ちゃん、ごめんね。ありがとう。
どうだった?
…そっか。うーんゆっくりやればそんなこともないんだけど…急かしちゃったかなあ…
え、あ、はは、いやあ私もほら、至らぬところばっかりだと思ったらあんまり、言えなくて…
湯沢さんなんか言ってた?…あちゃー、そうだよねえ、いやいや、いつもフォローありがとう。横ちゃんがいてくれるから私は…!
はは、いやほんとに、いつもありがとう。今度またこの前のバル、行こうね。おごらせてくれ。
…深代さんも誘ってい?はは、うん、ありがとう。





失礼します
部長、お呼びでしょうか。
はい、深代は私が教育担当を。
え?パワハラ?
え、ちょ、ちょっとまってください。私、私がですか?私が深代さんにパワハラ???
は、はい、すみません…あの…身に覚えがないので、と、いうか、パワハラだとしたら加害側はみんなそんなふうに言うとは、百も承知なのですが、あの、具体的にどういった部分で私は深代さんに、その、不快な思いをさせてしまっていたのでしょうか……?
え、ええもちろん、あの、私が深代に対して逆恨みのような、それで危害を加えるようなことは断じて!あの、みんなそう言う、とは、思いますけど……

…はい、……はい、はい、…………

……

……

は、私の意見…意見ですか…。
それはもう、なくはないですが…深代さんがそう思われたならそうだったんだなと、言うしかありません。
はい、はい……承知しました。
あの、席が私、深代さんの隣なのですが、
あ、そうですか……
はい、はい、
はい、失礼します




深代さん。
……気づけなくてごめんね。






かんぱーい!
はー!うまい!ここのクラフトビールほんとにうまい!
横ちゃんありがとう!!ほんとうにありがとう!!

ん?もういーよ!
…深代さんにそう思われちゃったなら、私のやり方が違ったんだろうし、これで教育係もはずされたしね!まだ部署に残れただけ万々歳じゃないかな!

えー……んー、はは、そうだねえ……

んんっ、
「会社のやり方を新人である私に愚痴る」「仕事が遅いと言われた」「自分もミスをするのに私ばかり責められる」「自分が上司にミスをとがめられたうっぷんを私で晴らしてる」「集中していても逐一口を挟まれる」「私に言い返されるのを人目に見られたくなくて業務中に私を外に連れ出した」「説教じみた話を延々とする」「戻ってこなくていいと言われた」「仕事ができない人に教わりたくない」
ま、ざっとこんなもんでしょうか!あはは、結局全部言っちゃった。

……ありがとお、信じてくれて。横ちゃんは本当にいい人だねえ。
いやいや!いいよ!横ちゃんがわざわざ挟まる話ではないよ!
…いや、今だから正直に言うと、横ちゃんにも甘えてたというか、いや、うん、現在進行形で甘えてるんだけどさ。はは。
私に言いにくいことは横山さんにでもいいから言ってねって言っちゃってた。ごめん。
……うん、初めてなりにさ、やっぱ新人側のこと考えてたんだよ。教育係の人だけだとこう、どうしても偏っちゃうじゃん。そう。私は優秀な先輩に教えられたから他の頼れる人がものすごく必要だったかと言ったら全然、そんなことなかったけど。横ちゃんもいたし。なんとなく深代さんて同期の子らともそんなに、関わらないのかなーって思ったら、もちろんこれは仮定だしおせっかいなんだけどさ!
深代さんが、職場の中で聞ける、話せる、頼れる人が、私以外でもいいから、いればと…思ったんだよ…もちろん!そこのポジションに!私がなれるように、が、がんばったけどね…はは、うん。うん。

ん!そうだよね!アイショーだアイショー!
本当にありがとう横ちゃん!え、てかこのフルーツベースのやつ!おいしい!もう一杯頼もう!!






あ、もしもし、
うん、ごめん、もう0時すぎてるね、
いや、えーと、あ、来週帰る時の、ほら、お土産。
空港のあのチーズケーキと、この前話したうちの近所のアップルパイ、どっちがいい?

え、そりゃあ聞くよ、
…はは、でも、お母さんもこっちがいいって言ってくれるから、ありがたいよ。

……本当は微糖がよかったなんて、私にはわかんなかったし。

うん?いや、ごめん、こっちの話。
うん、やっぱこの時期だからさ、忙しくてさ。
うん、全然、大丈夫大丈夫。…大丈夫…
っ、うん、っちょっとだけ、い、いやなこと、あった…うん。
……うまく、伝えられなかっただけ。っ、うん、うん、ちょっと、こ、声き、きたかった……うん、っ、ごめん、。

……

……え?また送ってくれんの?だって来週帰るんだよ?
あはは、そりゃ両手にもって帰れないけどさ!そっち帰ってる間に腐っちゃうじゃん!
あはは、そうねじゃないよ、はは、ほんとお母さんたまに、そういうことするよね。

だからー、おすそ分けできるひとなんて…
あ。
あ、いや、あのー、同期にね、横ちゃんて子がいて、今日もすごくお世話になったの。うん。
そうだね、あげてみようかな。

うん、遅くにごめん。うん、もう、大丈夫。
あはは、全然、平常通りですよ。
お母さん、いつもありがとう。

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