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春【ショートショート】 みんはい桜まつり2026

書けないって思ってたのは、書こうとしてたからだった。
何も「さあ書こう」なんてしゃっちょこばる必要はないのだ。

時子は、それでも図書館で小さく唸る。書くってどんなことだったっけ。

中学時代、授業中の手慰みに書いていた時は、書こうと決めたらすぐにお題が浮かんできた。
まさか書けなくなるなんて思わなかったから、中学時代に書いたものなんて捨ててしまった。
またすぐに書けばいいと思ったから。

「枯渇かあ」
呟くと隣でくすっと笑うのが聞こえた。なんだか自分を笑われたような気がして不快で振り向くと、高坂くんがいた。
「なぁんだ高坂くんか」
笑われた仕返しに、少し嫌味を込めて言う。だって多分彼は私を笑ったんだから。いっつもそうだ。涼しい顔をしていて、なんとなくいけ好かない。

「書けない気持ちを書いてみりゃいいじゃん」
高坂くんが言った。
「書けない気持ち?」
頭に?を浮かべながら時子は聞く。
「書くって結局思った気持ちを書くもんだろ、だったら今の気持ちを書けばいい」
真面目な顔で高坂くんは言う。なーにを偉そうに。時子はそう思ってふくれっ面でいたら、高坂くんは時子の前にノートを何冊かばさっと置いた。パラパラっとめくると、小説のようだ。
「すごい、これ高坂くんが書いたの?」
うんと彼は頷く。
「いいのもイマイチなのもあるだろ」
うーんたしかに。時子はそう思った。
高坂くんはまたくすっと笑った。時子は思っていることが顔に出るらしい。

「とりあえず書いてみればいい」
「あ、高坂くんノート」
高坂くんの置いていったノートを時子は渡そうとする。
「持っててよ」
少し照れくさそうに彼は言った。
「ここにいるより外の方がアイデア湧くかもよ」
いつも見せない高坂くんの表情に、時子は少しドキッとした。
窓の外、高坂くんの後ろに、桜吹雪が舞っていた。


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