作品の外側をデザインする― ポール・スミスが拡張した、遊び心の世界 ―
「ピカソ展」と聞いて、私は少し身構えていた。
抽象的で、難解で、色数も少なく、どちらかというと“理解するもの”。
そんなイメージを持っていたからだ。
今回の展示も、最初は「ポール・スミスの世界観の中に、ピカソ作品が飾られている展示」だと思っていた。
実際に見てみると、印象は逆だった。
展示空間は確かに強い。
赤、青、ストライプ、花柄、ポスター、天井まで使った演出。

けれど、それは作品を飲み込むためではなかった。
むしろ、作品の見え方を拡張するための空間だった。
作品そのものは変わらない。
変わったのは、私の受け取り方だった。
空間から入ると、作品が変わって見える
今回、最初に心を掴まれたのは作品ではなく空間だった。
部屋ごとに切り替わる色彩。
次に何が現れるかわからない高揚感。
「美術館に作品を見に来た」というより、作品の世界に足を踏み入れていく感覚。

不思議だったのは、空間の主張が強いのに疲れないことだった。
ポール・スミスの色使いには遊び心がある。
でも、その遊び心は作品の邪魔をしない。
むしろ、作品を見るための警戒心をほどいてくれる。
ピカソは、思っていたより明るかった
今回の展示で一番意外だったのは、作品数だった。
もっと空間演出型だと思っていた。
でも実際には、思った以上に作品と向き合う展示だった。
そして、見返して気づいた。
私が惹かれたのは、暗く難解なピカソではなかった。

明るい。
楽しい。
自由。
遊び心がある。
形は崩れていても、感情は消えていない。
抽象というより、別の角度から世界を見せる方法だった。

作品の外側をデザインする
今回の展示で感じたのは、展示空間そのものにも解釈があるということだった。
作品そのものを変えることはできない。
けれど、
何色の壁で見るか。
どんな距離感で見るか。
どんな感情で部屋に入るか。
その設計によって、作品は驚くほど違って見える。
ポール・スミスは、ピカソを説明していたのではない。
ピカソの世界観を、空間によって拡張していた。

感性構造DD
作品価値:ピカソ
拡張装置:ポール・スミス
感情導線:色・空間・遊び心
作品は変わらない。
けれど、作品の外側をデザインすると、受け取る世界は変わる。
今回見たのは、そんな展示だった。
