物価についての記録:2011年 ベン・トー
名作ぞろいである2011年に放映されたTVアニメーション作品の中でも、特に印象深いものの一つにベン・トーが挙げられるだろう。原作は「スーパーマーケット閉店直前の時間帯に半額シールが貼られた弁当の争奪戦」というモチーフで、庶民や貧乏学生の生活感をコミカルかつ克明に描いたライトノベルであるが、映像化に際して優れた作画・背景美術という要素が加わったことも相まって当時の世相を切り取った貴重な文化史料となっているのである。
(どうでもよいが、2026年現在、近所のライフは寿司と天ぷらは半額まで下がるが、弁当は30%オフまでしか下がらない)
原作小説においては各巻のサブタイトルとして「サバの味噌煮290円」のように、弁当が半額になった後の値段が設定されているのであるが、これは元の値段が580円と考えるとコロナ終息後のインフレ期に入った世界(の中の日本)から見ても、まぁ今だともうちょっと高いかなとは思うものの意外にそこまで値段変わってないな、という印象である。一方でアニメの各話サブタイトルは「サバの味噌煮弁当 674kcal」と熱量表記に変更されており、もしかして将来の物価上昇を予測していたのだろうかと憶測を呼ぶ設定がなされている。(あと、ちゃんと「弁当」という語を入れている。)
登場人物も大きく奇をてらったわけでもないものの、しっかりと特徴的に描かれており魅力にあふれているが、百合要素がほとんど無いのが残念なところである。(一方で薔薇要素は一定の比重を置いて描かれているのであるが……。)
なお、敵役として登場する沢桔姉妹の配役がやまとなでしこの二人であったことも記憶に新しいだろう。(2011年はベン・トーで、2012年は境界線上のホライゾンでも同じく姉妹役を担当している。2024年の一回限りとはいえ再結成に涙を流したファンも多いことだろう。)
高校生が間違えて「氷結」を買おうとする、とか、半額シールを貼りに来た店員が「半額神」になる、とか細かなところまで貧乏学生の機微をとらえた描写が魅力であるとともに、時代の世相を的確にとらえた1級の史料となっているところも見逃せないところであり、半額商品を求めて彷徨った昔(今でも)を思い出しながら視聴いただきたい作品である。
