「公爵様に無礼を働いた結果、嫁ぐことになりました」第3話 #エンタメ原作部門
〇ラプティア王城【中庭(夜)】
クロフォード「なぜ月から降って来たのか気になるところだが、この際それはどうでもいい。ちょうどお前と話がしたいと思っていた」
モモエリア「え、わ、わたしと?」
クロフォード「あぁそうだ。貴様の今後を大きく左右する大切な話だ」
モモエリア(M)「絶対処刑通告だ。どうしよどうしよ……!」
クロフォード「モモエリア。俺と――」
モモエリア(M)「いやだ! 死にたくない!」
モモエリア「このたびは無礼を働いてしまいたいっっっっへん申し訳ございませんでした! わたくし、明日の朝デランジェ子爵のもとに発つ予定ですので……公爵様の前から消え失せますので! どうかこのたびの不敬は許していただけないでしょうか!?(超早口)」
ぽかんとするクロフォード。
クロフォード「子爵と婚約するのか?」
モモエリア「え? ……あ、はい、予定です」
クロフォード「明日の朝、子爵の元に発ち婚約する予定ということは、まだ正式に婚約は受理されていないのだな?」
モモエリアに詰め寄るクロフォード。
モモエリア「は、はい。まだ受理されていないと思いますけど……」
モモエリア(M)「あれ? もしかしてこれは助かる流れ……」
クロフォード「そうか。――おいカルデス」
カルデス「お呼びでしょうか公爵様」
どこからともなく颯爽と現れるカルデス。
モモエリアはぎょっと目を剥く。
クロフォード「来たる時までお前の部屋にこの女を匿え」
カルデス「承知いたしました」
モモエリア「え……?」
ぎろっと睨み付けてくるカルデス。
モモエリア(M)「あれ? もしかして助からない?」
〇ラプティア王城【結婚式場】
大勢の貴族でごった返す会場。
モブ「いやぁまさか皇女様があの獅子王様と婚約することになろうとはな」
モブ「これでラプティアは当面は安泰ですな」
ラプティア王国は長らく隣国と不仲である。
その熱が徐々に上がり今にも戦争が勃発しかねない空気だったが、クロフォードがバックにつけばその不安は解消されるという説明。
(作品の方向性によって、歴史背景をどれだけ精緻に書くかは異なる。現状の形は物語の重厚さよりも、わかりやすくキャラクターの魅力を押し出すことに特化した形)
会場を駆けまわっているチャスシスとイレーナ。
チャスシス「どう? モモ見つかった?」
イレーナ「い~や、どこにもいねぇ。あの目立つピンク髪を見落とすとは思えねぇし……」
煌びやかな料理。
イレーナ「どこ行っちまったんだよ。モモがいなきゃせっかくうまいもんが並んでるのに食えねえじゃねぇか」
目を閉じるチャスシス。
チャスシス(M)「お師匠様、どう?」
シクリー(M)「ダメね。索敵遮断の魔法でもかけられているのかしら」
チャスシス(M)「けど、モモの生命は感知してるんでしょ?」
シクリー(M)「えぇ。モモエリア様がどこかで生きていることは間違いないわ」
悠然と椅子に腰掛けているプラリネ。
プラリネ(M)「あの子、どこに行ったんだろう」
一方で、たんたん踵を踏み鳴らして落ち着かない様子の父親。
母親「あなた、今はプラリネの婚約式に集中なさい」
父親「わかってる。……くそ、あの女はどこまで親の顔に泥を塗れば気が済むんだ」
入り口がざわつく。
クロフォードが会場にやってくる。隣にはカルデスもいる。
モブ「あれが〝獅子王〟クロフォード」
モブ「うわさに違わぬ貫禄だな」
プラリネの前で足を止めるクロフォード。
クロフォード「待たせたなプラリネ皇女殿下」
プラリネ「よくぞいらしてくれましたクロフォード公爵。さ、どうぞ隣にお掛けになってください」
動かないクロフォードに、プラリネは首を傾げる。
クロフォード「悪いがプラリネ皇女殿下、俺はそこに座ることはできない」
ざわつく会場。
プラリネ「なぜですか?」
クロフォード「貴様と婚約するつもりはないからだ」
ぱちぱちと瞬きし、プラリネはふっと笑う。
プラリネ(M)「なるほど。どうやら私がなにかする必要はなさそうだ」
父親「はぁ? 話と違うではないか!」
クロフォード「皆まで聞かずいきり立つな。話を最後まで聞け」
クロフォードに凄まれて委縮する父親。
クロフォード「そちらからの要望はすべて吞むつもりだ。条約も、交易も、今さらになって契約を破棄するつもりはない」
クロフォード「ただ、俺と婚約する女性を取り換えてもらいたいだけだ。――カルデス」
カルデス「承知いたしました」
魔法を諳んじるカルデス。
護衛が止めにかかるが、シクリーが問題ないと制止をかける。
シクリー(M)「一級魔法……さすが公爵の側付きね」
魔法を唱え終えた直後、クロフォードの隣に花嫁衣装のモモエリアがぽんとコミカルに出現する。
チャスシス・イレーナ「モモ!?」
モモエリア「えっ、結婚式場!? それになによこの衣装!?」
カルデス「おい、静かにしろ。クロフォード様に恥をかかせたいのか」
モモエリア「せめて事前説明がほしかったですねぇ!」
イレーナ「間違いねぇモモだ。けどどうして……」
クロフォード、モモプリアの肩を抱き寄せる。
クロフォード「伯爵、この女を俺に寄越せ」
ぽかんとする一同に首を傾げ、クロフォードはぽんと手を打つ。
クロフォード「すまない、言い方がよくなかったな」
モモエリアの手を取り、薬指に婚約指輪をつける。
クロフォード「俺はモモエリアと婚約する」
しんと静まり返る会場。
モモエリアは目をぐるぐるしてあわあわする。
モモエリア(M)「えっ、わたし公爵様に嫁ぐの!?」
第3話 ーFINー
