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「公爵様に無礼を働いた結果、嫁ぐことになりました」第4話 #エンタメ原作部門

〇クロフォードの屋敷【モモエリアの部屋】
 目を覚ますモモエリア。
 見慣れない部屋の装飾に瞬きを繰り返す。
モモエリア「……」
 薬指に婚約指輪がついている。
モモエリア(M)「夢オチじゃなかったかぁ~」

〇ラプティア王城【結婚式場】(過去回想)
クロフォード「俺はモモエリアと婚約する」
父親「な、ならぬ! そやつは子爵との婚約が控えているのだ!」
クロフォード「案ずるな。子爵が業を煮やして攻め入ってきたのなら、俺が全霊を賭してこの国を護ると約束しよう。それでは不満か?」
父親「……理解が及ばぬ。なぜそこまでしてその女を欲しがるのだ? 魔法を一切使えない出来損ないの使用人だぞ?」
クロフォード「おい、次俺の妻を侮辱したらその首を撥ねるぞ」
 睨まれて身を震わせる父親。
クロフォード「これで要件は終いだ。カルデス、帰り支度の準備を」
カルデス「承知いたしました」
モモエリア「……ね、ねぇ、わたしほんとうにあなたの妻になるの?」
クロフォード「あぁそうだ。俺が夫では不満か?」
モモエリア「あ、いや、不満はないんだけどあまりに現実味がなくて……」
モモエリア(M)「夢よね、きっと。うん、夢だわ。きっとどこかで意識が鮮明になるはず」

〇クロフォードの屋敷
 クロフォードとふたりで食卓を囲み、無言で食事をするモモエリア。
モモエリア(M)「うん、料理は絶品だけど空気が重たくて窒息死しそう」
モモエリア(M)「クロフォード・サディエ公爵」
モモエリア(M)「獅子王の名を冠する天下無双の騎士」
モモエリア(M)「こうして改めて見ると……すごくカッコいいわ」
クロフォード「友人はいるのか?」
 しゅぱっと目を逸らすモモエリア。
モモエリア「えぇ、いるわ」
クロフォード「だろうな。その人となりなら多くの人に好かれるだろう」
モモエリア(M)「なになに急になんの話?」
 席を立つクロフォード。
クロフォード「特に仲のいい友人の名前を教えてくれ」
モモエリア「……チャスシスとイレーナよ」
クロフォード「承知した」
モモエリア(M)「なにを?」

 半日後、チャスシスがモモエリアの御傍付きとして雇用される。
チャスシス「モモ~!」
モモエリア「えっ、チャスシス!?」
 半泣きでモモエリアに抱きつくチャスシス。
チャスシス「無事でよかったよぉ~!」
クロフォード「その女が今日からお前の傍付きだ」
クロフォード「イレーナも連れてこようと思ったんだが、突っぱねられてしまってな。どうやら彼女の忠儀は皇女に捧げられているらしい」
モモエリア(M)「なんとなく想像がつくわ」
モモエリア「……わたしのために、わざわざおと……伯爵様に懇願してくださったの?」
クロフォード「あぁ。新境地でひとり孤独というのはなかなかに堪えるだろうと思ってな」
モモエリア(M)「あれ? もしかしてこの公爵様ってすごく良い人なんじゃ……」

 数日が経過。
 モモエリアとチャスシスは使用人時代とは打って変わった上級の生活に満足している。ふたりでおやつにぱくつき頬をゆるめている。
モモエリア「しゃ~わせ~」
チャスシス「ね~」
モモエリア(M)「はじめはどうなることかと思ったけど……この生活最高だわ! これぞまさに人生大逆転!」
モモエリア「ごきげんようカルデス!」
カルデス「……今日もお元気ですね公爵夫人」
モモエリア「むぅ。モモって呼んでって言ってるでしょ。年も近いんだから」
カルデス「できません。年こそ近いですが、身分には天と地ほどの差がありますから」
モモエリア「身分差なんて気にしなくていいのに」
 屋敷をうろつくモモエリア。
 クロフォードは会議に出席中。
 チャスシスはほかの使用人から礼儀作法を学んでいる。
モモエリア「ごきげんよう!」
使用人「っ! も、モモエリア様! いかがなさいましたでしょ……あっ」
 脚を滑らせ、脚立から落ちる使用人。
 抱き留めようとするモモエリアだが、耐えきれず足を捻る。
モモエリア「いつつ……大丈夫?」
使用人「も、ももも申し訳ございません!」
モモエリア「あなたが謝ることはないわ。わたしのほうこそ、いきなり大きな声であいさつして驚かせてしまってごめんなさい」
 痛みをこらえて片目つぶるモモエリア。
 青紫色になった足首。
モモエリア(M)「捻挫かしらね」
 使用人に回復魔法を施そうと試みるも、やはりうまくいかない。
カルデス『なにかあったら私の名前を呼んでください。いつ如何なるときでも二秒以内に足を運びますから』
モモエリア(M)「ほんとに二秒以内に来るのかしら。試すのははじめてだわ」
 好奇心に目を煌めかせているモモエリア。
モモエリア「カルデ――」
クロフォード「おい、なにしてる」
 帰宅したクロフォードがズカズカと歩み寄って来る。
モモエリア「おかえりなさい、クロフォード。ちょうどよかったわ。お疲れのところ悪いんだけどわたしの――」
 使用人の首に剣を突きたてるクロフォード。
クロフォード「状況を簡潔に説明しろ」
モモエリア「な、なにしてるのよ!?」
 間に割り入るモモエリア。
 クロフォードはモモエリアを一瞥もせず、使用人を睨みつける。
クロフォード「言葉が少なかったか。なぜ俺の妻の足首が青紫色に変色しているのか説明しろ」
使用人「……足を滑らせて脚立から落ちたわたしをモモエリア様が庇ったからです」
クロフォード「そうか。なら死んで詫びろ」
モモエリア「いやいやそうはならないでしょうよ!」
 クロフォードの意識がようやくモモエリアに向けられる。
モモエリア「一生懸命お仕事していたこの子にわたしが大きな声であいさつをして、それで驚いてこの子は足を滑らせてしまったの。むしろ罰せられるのはわたしのほうよ!」
クロフォード「この使用人はお前のなんだ?」
モモエリア「え?」
クロフォード「純粋な疑問だ。お前がこの屋敷に来てからまだ三日だ。この使用人とお前が仲睦まじくしているという話はカルデスから聞いていない」
クロフォード「だというのになぜこの使用人を庇う。この使用人のせいでお前は足を痛めたんだぞ?」
モモエリア「それは違うわ。わたしが足を痛めたのは、わたしがこの子の不注意を誘致したからよ。悪いのはわたしだから、この子を庇うの」
 目を剥くクロフォード。
モモエリア「皇族だからとか使用人だからとか、そういうのはもううんざりなのよ。だからクロフォード、この子を殺めるという考えは改めて頂戴。そうしないと、わたしはあなたの元から離れるわ」
モモエリア(M)「クロフォードはなぜかわたしに固執している」
モモエリア(M)「今のが必殺の一手になればいいけれど」
 ふっと笑うクロフォード。
クロフォード「わかったからそう怖い顔するな。せっかくの美貌が台無しだぞ」
使用人「公爵様が笑ってる……」
クロフォード「カルデス」
カルデス「は、お呼びでしょうか」
クロフォード「こいつの足首の怪我を治癒しろ」
 ほっと息をつくモモエリア。
モモエリア(M)「たまには強情も貫き通してみるものね!」

〇クロフォードの屋敷【クロフォードの部屋(夜)】
 顔を真っ赤にするクロフォードに詰め寄るモモエリア。
モモエリア「わたしを自室に招いておきながらなにもしない、なんてことはありえませんよね公爵様?」

 第4話 ーFINー

 

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