暴力は、殴ることだけではない。自分で決める力を奪うことでもある
支配は「命令」ではなく、自分で選ばなくなるところから始まる
夫婦で暮らしていれば、
意見が合わないことはあります。
お金の使い方。
家事。
子どものこと。
休日の過ごし方。
「それは無駄じゃない?」
「私は必要だと思う」
そんなやり取りまで、すべて問題だという話ではありません。
でも、いつの間にか、
何を買うか。
誰と会うか。
どこへ行くか。
働くか。
嫌なことを嫌だと言えるか。
そんな小さなことまで、
相手の顔色を見て決めるようになったらどうでしょう。
ふて猫は、いくつも並んだ道の前で、一つだけ残った道を見ています。
「人間は、選べなくなった瞬間より、選ばなくなった瞬間の方が気づきにくいことがあります」
内閣府の調査では、これまで結婚したことのある人のうち、配偶者などから、
「身体的暴行」
「心理的攻撃」
「経済的圧迫」
「性的強要」
といった暴力を繰り返し受けた経験があった人は、女性13.2%、男性7.2%でした。
女性なら、およそ8人に1人。
決して、どこか遠くの家庭だけで起きている話ではありません。
今日はこの内閣府の調査を入口に、
身体の傷だけでは見えてこない「支配」とは何なのか
を考えてみます。
合言葉は、
読んで納得、明日ちょっとドヤれる。
DVというと、なぜ「殴る」を想像するのか
DVと聞くと、
殴る。
蹴る。
物を投げる。
そんな場面を思い浮かべがちです。
身体に傷が残れば、
周囲も「これはおかしい」と気づきやすい。
ところが、
人格を繰り返し否定される。
必要なお金まで自由に使えない。
嫌なことを断れない。
何かをするたびに怒鳴られる。
となると、急に境界が曖昧になります。
夫婦げんかでは。
相手にも言い分があるのでは。
自分にも悪いところがあったのでは。
本人まで、そう考えてしまうことがあります。
ふて猫は、何も傷のない腕をじっと見ています。
「見えない傷ほど、“傷ではないこと”にされやすいのかもしれません」
身体に跡が残らないからこそ、
周囲にも本人にも見つけにくい。
そこに、心理的な攻撃や経済的な圧迫の難しさがあります。
支配は、いきなり「禁止」から始まるとは限らない
誰とも会うな。
外へ出るな。
お金を使うな。
そこまで言われれば、
おかしいと気づきやすいでしょう。
でも、実際の関係はもっと小さなところから変わることがあります。
「それ、本当に必要?」
「またその友達と会うの?」
「そんな仕事しなくてもいいだろ」
「普通はそんなことしないよ」
一つだけなら、何気ない言葉に見えます。
ところが、それを言われるたびに怒鳴られたり、嫌味を言われたり、何日も不機嫌になられたりしたら。
次からは、
買うのをやめておこう。
誘いを断っておこう。
言わないでおこう。
と、自分から行動を変えるようになります。
ふて猫は、誰も閉めていない扉の前で立ち止まります。
「人は、何度も怒られると、最後には命令されなくても自分で自分を止めるようになります」
相手が何も言わなくても、
もう相手の顔色で決めている。
見えにくい支配は、
そんな形になることがあります。
「自分で決めた」からといって、自由とは限らない
友人と会わない。
欲しいものを買わない。
仕事をしない。
外出しない。
本人が決めたのだから、
本人の自由だ。
外からは、そう見えるかもしれません。
でも、
本当にそうしたかったのか。
それとも、
怒られたくなかったのか。
ここには大きな違いがあります。
選択肢が三つあっても、
Aを選べば怒鳴られる。
Bを選べば馬鹿にされる。
Cだけなら何も言われない。
そんな状況なら、
形式上は選べても、自由とは言いにくい。
ふて猫は、三本ある道のうち、「怒られない道」だけが明るく照らされているのを見ています。
「選択肢の数より、安心して選べる選択肢があるかの方が大切なことがあります」
自由とは、
自分で決められることだけではなく、
違う選択をしても怖い思いをしないこと
でもあるのだと思います。
節約と「経済的圧迫」は、金額だけでは分けられない
夫婦なら、当然お金について話し合います。
家計が苦しければ、
今月は少し節約しよう。
これは高いから今回はやめよう。
となることもあります。
それ自体は、普通の家計管理です。
難しいのは、
どこからが経済的な圧迫なのか。
一つの見方は、
そのルールが二人に同じように適用されているか
です。
二人とも支出を減らす。
大きな買い物はお互い相談する。
それぞれ自由に使えるお金を決める。
なら、話し合いです。
一方で、
自分は自由に使う。
相手の買い物だけ監視する。
必要なものまで一方的に「無駄」と決める。
使うたびに人格まで否定する。
となれば、金額とは別の問題が見えてきます。
ふて猫は、二人分の財布なのに、一人だけが鍵を持っているのを見ています。
「節約は二人で決めれば家計管理ですが、一人だけが決めれば支配になることがあります」
大切なのは、
何円使ったかより、
そのお金について対等に話せるか
なのかもしれません。
「稼いでいる方が偉い」が家庭に入ると、話が変わる
夫婦の収入が同じとは限りません。
正社員とパート。
フルタイムと時短勤務。
育児や介護のために、一方が仕事を減らしている家庭もあります。
そこで、
自分の方が稼いでいる。
だから自分に決定権がある。
となると、収入の差が家庭内の上下関係に変わります。
でも家庭には、給与明細に載らない仕事があります。
料理。
洗濯。
買い物。
子どもの予定管理。
学校や病院への対応。
親の介護。
誰かがそれを担っているから、
もう一方が仕事へ時間を使えていることもあります。
ふて猫は、給与明細と家事の予定表を同じ秤に載せて首をかしげます。
「給料の差を、そのまま家庭内の身分差にしてはいけません」
収入は家庭への貢献の一つです。
でも、それだけが家庭を動かしているわけではありません。
女性13.2%、男性7.2%という数字が教えること
今回の内閣府調査では、繰り返し被害を受けた経験がある人は、
女性13.2%。
男性7.2%。
女性の方が高い一方で、
男性にも被害があります。
だから、
DVは女性だけの問題。
夫から妻へのもの。
と決めつけるのも違います。
男性側が被害を受けていても、
男なのに。
そんなことで。
と思われるのが怖くて、言い出せないこともあるでしょう。
ふて猫は、13.2と7.2という数字を見たあと、その後ろにいる人たちを想像します。
「数字は何人いるかを教えてくれます。でも、誰が黙っているかまでは教えてくれません」
男女どちらにも起こり得る。
ただし、同じ割合ではない。
その両方を見る必要があります。
なぜ「嫌なら離れればいい」が難しいのか
外から見ていると、
そんな相手なら離れればいい。
なぜ我慢するのだろう。
と思うことがあります。
でも、長い間、
自分の考えを否定される。
お金を自由に使えない。
人間関係が狭くなる。
何か決めるたびに相手の顔色を見る。
そんな生活を続けていた人に、
では明日から一人で人生を決めてください。
と言っても、簡単ではありません。
しかも、
住む場所。
仕事。
お金。
子ども。
家族。
いくつもの問題を同時に決めなければならないこともあります。
ふて猫は、「出口はこちら」と指さす前に、出口までの道に積まれた荷物を見ています。
「出口が見えていることと、そこまで歩けることは同じではありません」
だから、
なぜ逃げないのか。
より、
なぜ逃げにくくなっているのか。
を見る方が、その人の状況に近づけるのだと思います。
「普通の夫婦」に見えるところに隠れている
見えにくい支配の厄介なところは、
特別な言葉を使わないことです。
心配だから。
家族なんだから。
節約だから。
あなたのためだから。
どれも、普通の家庭で使われる言葉です。
だから、
どこからがおかしいのか。
境界が見えにくい。
そこで一つ気にしたいのが、
自分の行動を決めるとき、相手への恐怖が基準になっていないか
です。
これを言ったら怒られる。
これを買ったら責められる。
断ったら怖い。
出かけたらまた機嫌が悪くなる。
そのために、自分の希望を繰り返し引っ込めている。
それは単なる「意見の違い」とは、少し違うかもしれません。
ふて猫は、「普通」と書かれたカーテンを少しだけめくります。
「おかしな関係ほど、毎日の中では普通の顔をしていることがあります」
明日ドヤれる一言
どんな服を着るか。
誰と会うか。
どこへ行くか。
働くか。
お金をどう使うか。
嫌なことを嫌だと言えるか。
一つ一つは、
とても小さなことに見えます。
でも全部、
自分の人生を自分で決めること
につながっています。
身体に傷がなくても、
自分の意見を言えなくなる。
怒られない方ばかり選ぶ。
自分が何をしたかったのか分からなくなる。
そんなふうに選択肢が狭くなっていけば、
人は少しずつ自分の人生から遠ざかっていきます。
ふて猫は最後に、消されかけた選択肢を一つずつ書き戻します。
「暴力は、相手を傷つけることだけではなく、相手が自分で決められる範囲を少しずつ狭くすることでもあります」
読んで納得、明日ちょっとドヤれる。
今日は内閣府の調査を入口に、
“身体の傷だけでは見えてこない、自分で決める力を奪っていく関係”のお話でした。
こうした日常の中に隠れている人間関係の力関係や、
「普通だから」
と見過ごしてしまう違和感を、メンバーシップでも少し深く眺めています。
相手と違う意見を言えること。
嫌なことを嫌だと言えること。
自分のことを自分で決められること。
当たり前に見えるものほど、大切なのかもしれません。
メンバーシップはこちらです。
https://note.com/ashita_doya/membership
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